二十話 ファリス宝鍵協会
目の前の建物は職人街の一角を占めている巨大なものだった。
(ファリス宝鍵協会?、俺達の目的地じゃないか)
建物にはそんな看板が掲げられていたしかも俺とメリアの目的地だったのだ。
俺とメリアは顔を合わせた。
「これがレナの家のなのか?」
俺はレナに話しかけた。
「うん、そうだよアレスお兄ちゃん」
レナは振り向き屈託のない笑顔を浮かべて言った。
(協会の関係者なのかな?)
とりあえず俺達は建物の中に入った。
「広いわね」
メリアの言った通り建物の中は広く奥に受付があり冒険者が多く居た。
「あ、お父さん!」
俺とメリアが親らしき人を探しているとレナが声を上げ走っていた。
レナが走った方向には冒険者と話している仕立ての良さそうな服をきっちり着こなしている壮年の男が居た。
「!?、その声はレナか!」
男はレナに気付き話していた冒険者達を無視してレナに向かって走った。
二人は人目も憚らず抱き合った。
「どれほど心配したか!、あれほど一人で街に行くなと言ったのに」
「ごめんなさい」
レナは申し訳なさそうに言った。
「いや、戻ってきて良かった、しかしその薄汚れたの服といい何があったのだ?」
レナのお父さんは顔を顰めて聞いた。
「それは俺とメリアから話しますけど場所を変えませんか?」
俺はとりあえず人目があるので場所を変えることを提案した。
「ふむ、そうだな、分かった」
レナのお父さんは周りを見渡し俺の提案に頷いた。
俺とメリアはレナと別れレナのお父さんに協会の応接室に通された。
「まず自己紹介からだな、私はファリス宝鍵協会会長のクリスだ」
「冒険者のアレス・バハムートです」
「同じく冒険者のメリア・ファフニールです」
俺はまさかの大物に思わず背筋を正した。
「冒険者で苗字持ちとは珍しいな、、いや済まない純粋に驚いただけだぞ」
クリス会長は顔を強ばらせた俺達というよりメリアを見てすぐに訂正した。
苗字とは自分もしくは先祖が何かしらの偉業や功績を残すとその事にちなんだ事柄を名乗ることがあるので先祖が何かしたということの証明なのだ。ちなみに貴族は特別で苗字だけではなくに名前と苗字の間にいろんな言葉が入ったりするらしい。
(俺の場合は先祖が神龍様に気に入れられたからバハムートの苗字を名乗ってる訳だけどメリアは元貴族だし過去のことはまだ辛いのかな?)
俺は顔を強ばらせていたメリアの手を優しく握った。
「!……ありがとうアレス」
メリアは俺が手を握ったことに一瞬驚いたが表情を和らげすぐに小声で言葉を返した。
「まぁ、苗字があると言って何か自分が特別なことをした訳ではないのであまり気にしていませんよ」
俺は少し苦笑を浮かべて言った。
「苗字持ちに会うのは初めてではないがアレス君のような人は初めてだな」
クリス会長は顔に驚きを浮かべて言った。
「そうなんですか?」
「ああ、苗字持ちは先祖を自慢することが多いからなそれが自分が行なった事だとかん違いしている者も少なからず居る、特に貴族はそれが顕著だ」
(なかなかに苦労してるんだな)
俺はクリス会長の心底面倒臭いという表情を見てそんなことを思った。
「いや済まない話が逸れたな、それで街で何があった?」
俺とメリアはレナに起きたことを全て話した。
「娘の為に回復瓶まで使ってくれるとは本当にありがとう」
俺たちの話を聞き終わったクリス会長は頭を下げて感謝の言葉を言った。
(回復瓶をそれなりの値はするからな)
ノイスで買った回復瓶も銀貨一枚と決して安くない値段だ。
「いえ、流石に怪我した子供を放っておくことは出来ませんし幸運な事にお金には困っていませんから頭を上げてください」
「謙虚な青年だなアレス君は」
クリス会長は頭を上げ柔和な笑みを浮かべて言った。
「だが娘を救ってくれたのだ私に出来る範囲でなら何でもしよう」
「元々この協会に頼もうと思っていたのですが宝箱の解錠をしては頂けませんか?」
「宝箱の解錠ということは、その歳で迷宮の攻略者、やはりあなた方は【蒼雷】と【白銀聖】でしたか」
クリス会長は納得するように言った。
(なんだそれは?)
「なんだが迷宮の一件のことが理由で冒険者ギルドで私とアレスの事をそんな二つ名で呼ぶ人達が増えたみたいよ多分バランさん達がアレスと私の活躍を広めた結果だと思うけどね」
メリアが俺の疑問を先読みして笑顔で言った。
(【蒼雷】か、おそらくあの怪炎鳥を倒した時に使った蒼雷の刃が理由だな、メリアの二つ名は銀髪とあの光魔法が理由だろうな)
俺はメリアの美しい銀髪を見ながらそんなことを思った。
「どうしたのアレス?」
メリアはそんな俺を不思議に思ったのか首を傾げて見つめ返してきた。
「いや、やっぱりメリアの銀髪は綺麗だなって思っただけだよ」
俺は咄嗟にいつも思っていることを言った。
「うぇ!?あ、ありがとう、アレスに褒められのは嬉しいわ」
メリアは頬を朱に染めて言った。
「コホン、それで宝箱の解錠でしたな」
クリス会長が俺とメリアの間の桃色の空気に耐えられなかったのか強引に話題を戻した。
「はい、その通りです」
俺としてはもう少し恥ずかしがるメリアを見てたかったが話が進まないので我慢した。
「受けたまりました、今からおこないましょう」
「え、クリス会長自らおこなうんですか?」
俺はクリス会長の言葉に面食らい思わず聞き返した。
「ええ、これでも宝鍵協会の会長ですからな鍵開けの技能は凡百の解錠師よりはあると自負していますぞ」
「あ、いえ腕を疑った訳ではなくまさかクリス会長自身がやるとは思わず…」
「気にしないで下さい娘の恩人ですからな」
クリス会長はまたもや柔和な笑みを浮かべて言った。
クリス会長の鍵開け技能は高くものの数分で金の宝箱は開いた。
金色の宝箱は大きく俺の膝ぐらいの高さがある。
「いろいろ入ってるな」
俺は宝箱の中を覗き込んで言った。
「魔力を内包しているものあるわよ」
メリアが宝箱から短剣二本を取り出し言った。
「それに霊薬も大量にありますね」
クリス会長が両手で数本の瓶を取り出しながら言った。
金色の宝箱にはあらゆる怪我を治すと言われている霊薬四十本と魔力を内包した短剣四本、長剣一本、長槍二本と魔道具がいくつか入っていたのだった。




