二十一話 槍使いとの激突
俺とメリアは宝箱から出たものを二つのアイテムボックスに仕舞いファリス宝鍵協会の建物を出た。
「念願のアイテムボックスを手に入れたわ」
メリアは腕輪を先程からずっと気に入っている。
「お陰でメリアの荷物を持たなくて良くなったから精神的に助かるな」
女の子しかも恋人の荷物を扱うのは俺の精神的にあまりよろしくない。
「ん?、どうしたのアレス?」
「いや、なんでもないそれよりも昼飯にしないか?」
太陽はほぼ真上にありお昼時だ。
(数日間寝てたから正直腹ぺこだし)
「良いわよ、そうね大通りの酒場で食べましょうか」
メリアは俺の事情を察知したのかそう提案した。
俺とメリアは冒険者ギルドのある大通りの酒場に入った。
酒場内は昼時の為混雑していたが二人席を運良く見つけることが出来た。
「はいよ、肉盛定食だよ」
店員がテーブルに定食料理を置いた。
「ありがとう」
俺は店員に礼を言い早速食べ始めた。
メリアは定食を爆食いしているアレスを見ながら店内を観察していた。
(ふふ、アレスって二日間眠ってたとはいえ結構たくさん食べるのね、それはそうとアレスを見ている視線をたくさん感じわね)
その視線には好奇、憧憬、妬みといったものがあった。
ちなみにメリアを見る男達の視線ももちろんあったがメリアはアレス以外の男に興味が無いので気付いていない。
(ここは冒険者ギルドに近いから私とアレスのことを知ってる人達結構居るのかもね、けど私達を観察している人達は何者なんでしょうね)
たくさんの視線があったがその中には協会の建物を出てから感じる複数の視線があるのだ。
メリアはその視線を感じるテーブルに視線を向けた。
(男五人組、私達をつけているみたいだけど何が目的なのかしら、宝箱の中身とかかな?)
メリアは相手の目的を予想した。
(私とアレスが迷宮を攻略したってことは結構広まってるみたいだしね、ちょっとカマをかけてみようかな)
メリアは小悪魔のような笑みを浮かべてそうな事を思った。
「それでメリア奴らどうする?」
定食を食べ終わったアレスが話しかけてきた。
「ちょっとカマをかけてみようと思うわ」
「誘い出すのか?」
アレスが月夜の柄に手を置きながら言った。
「うん、そのつもりよ」
俺とメリアは店を出て大通りから離れ建物が密集している裏路地の少し広い場所に出た。
「それでいつまで貴方たちは私達をつけているつもりなの?」
メリアが周囲に響くように声を出した。
「私達に気付くとは流石は迷宮攻略者ですね」
右の路地から身なりの良い男が出てきた。
(囲まれているか)
俺は周囲の気配を感じて内心呟いた。
周りの建物の上に人影が集まった。
「あら、ノコノコ出てくるなんて殊勝な心がけね」
メリアは囲まれているにも関わらず表情一つ変えずに呟いた。
「おや、この状況で随分と余裕ですね流石は白金聖ということですか」
男は褒めるように言った。
「貴方たちは何者なの?」
メリアは目を細めて言った。
「無視ですか、まぁいいでしょう私はファリスの裏を支配する者の一人と言っておきましょうか」
男はやや残念そうにし両手を左右に広げて大仰に言った。
「そんな奴が俺たちに何の用だ」
俺は語気を強めて言った。
「おお、怖い、貴方が持っているその刀を頂きますよ、それこそ殺してでも」
男が俺の龍星を指さした瞬間周囲を囲んでいた人影が一気に襲いかかってきた。
メリアは光球を出して迎撃しようとした瞬間メリアに向かって一条の流星のような一撃が飛んできた。
「!?」「はぁ!」
メリアは一瞬驚いたが俺がメリアの前に滑り込むように片膝を地面に付け月夜を抜刀して槍ごと打ち上げた。
「ほぉ、彼女の一撃を防ぐとはやりますね」
男の声が聞こえたが俺にはそんなものは耳に入らなかった。
「メリア!コイツは俺がやる、他を頼む」
俺はメリアにすかさず指示してから空中で一回転して着地した全身をローブで隠した槍使いを見た。
「任せて!」
メリアは銀光剣を召喚し影の敵達の攻撃を防いだ。
俺は正面の槍使いに全意識を集中させた。
(相当な使い手だ、だがさっきの一撃に威力がなかったのが気になるが……)
「様子見とはいえ今の一撃を防ぐなんて貴方強い」
(女!?)
目の前のローブ姿の槍使いが喋ったが俺はその声の主が女の声であることに驚いた。
「様子見する必要はありません早く殺しなさい」「ぐうぅ」
男の声が響くと槍使いが呻き背中から二本目の槍を取り出した。
(二槍使い!、だが殺意を感じないなどういうことだ?)
「ごめんなさい」
俺が不思議がっていると槍使いは二本の槍の内の左手の槍を俺に構えて地面を蹴り突っ込んできた。
俺は月夜で受け止めたがもう一方の槍が俺に迫って来た。
「一ノ槍 螺穿」
槍の切先に魔力が螺旋状に収斂され俺の脇腹目掛けて突いてきた。
俺は重心を右に傾け刺突を紙一重で避け右腰に差してある龍星を左手で抜刀し二槍使いを左腰から右肩にかけて斬ろうとした。
「!?、っ!」
だが二槍使いは驚きながら後ろに跳び紙一重で避けた。
その瞬間二槍使いのフードが龍星の剣圧で翻り素顔があらわになった。
「!!?」
俺は二槍使いの顔を見て二重の意味で驚いた。
少女は青髪に紫紺の瞳を持っていたが少女の頭には捻れた二本の角があったことだ。つまり少女は最強種族の一角である魔族ということだ。そして二つ目は首に奴隷が付ける隷属の首輪があったことだ。
「驚きましたか?、彼女は希少な魔族であり私の戦闘奴隷なのですよ」
男は笑みを浮かべて言った。
「道理で強い訳だな(それだけじゃないが…)」
俺は後半の言葉を内心で呟いた。
男には分からないかもしれないが少女の槍術は一朝一夕で身に付けたものじゃない。
(相手が俺を殺す気なら斬るだけだが、少女の一撃はどうもおかしい、一番最初の一撃には威力はなかった、先程の刺突は威力はあったけど殺意がこもっていなかった、もしかしたら……)
二槍使いは表情を見せず再び地面を蹴り突っ込んできた。
「一ノ槍 螺穿」
俺は闘気を纏った月夜と龍星で二本の槍を受け止めた。
「お前隷属の首輪に抗えるのか?」
「!?」
俺が話しかけると少女はビクッと肩を震わせた後連続で刺突を放ってきた。
「何故分かった?」
少女は連続で刺突を放ちながら平坦な口調で話しかけて来た。
「上手く隠してたようだけど俺には丸わかりだよ」
俺は連突を二本の刀で捌きながら答えた。
「驚き、でも最終的には逆らえない」
少女の声が沈んだ。
「お前名前は?」
俺は一歩下がり魔力と闘気を込めた渾身の二刀の一撃で二本の槍を地面に沈め問うた。
「くっ!、そんな事聞いてどうする」
少女は一瞬苦悶の表情を浮かべた後地面にめり込んだ二槍を素早く引き抜いてから左手の槍の先を俺に向け右手の槍を右脇に挟んで構えてから聞いてきた。
「知りたいんだ、少しでも君のことが何故こんな悲しい槍を振るっているのか」
ある程度実力がある者と戦えば刃から相手の気持ちが伝わる武の世界ではそんなに珍しいことじゃない。
俺は龍星を鞘に収め月夜を正眼に構え少女の紫紺の目を見て聞いた。
「お前…」
「ちなみに俺はアレス、アレス・バハムートだ」
俺は少女の言葉に被せた。
少女は目の前の男がこの忌々しい首輪を取ってくれるような気がした。
(そんな事はない、この首輪は絶対に取れない)
少女は自分の楽観的思考に首を振った。
「私はスカハ、スカハ・レヴィアタン」
「いつまでモタモタしている早くその男を殺せ!」
名前を言った瞬間男の声が響きまたあの気持ちの悪く抗えない力を感じた。
「黙れよ」
その中でも男、アレスの声は頭によく響いた。
よく見るとアレスの眼に蒼雷が迸り周囲に広がった。
「何だと!、おい!、奴を早く殺…ひぃ!」
男が激昴したが最後まで言葉は続かなかった。
「スカハ、君はどうしたいんだ?」
アレスが男を睨むだけで黙らせてからスカハを見て言った。
「私がどうしたいか?」
スカハはアレスの問いかけに槍を降ろし呆然とした。
「そうだ、少なとも俺はそんなスカハの悲しい槍を見たくないよ」
アレスの蒼い瞳にスカハは吸い込まれたように感じた。
(私は、この首輪を外したい)
アレスの声が響きスカハは初めて希望というものを感じた。
「私はこの首輪を外したい!」
スカハは声を張り上げるのだった。




