また、あの羽虫が現れた!!
どうも、えっと、上古の勇者かな、第十二話をお届けに上がりました。
このお宅で間違いありませんですかね?
間違いなければ、ココにハンコかサインをお願いしゃーす。
では、今後とも上古の勇者、大いに駆ける!!をよろしくお願いします♪
やれやれ、矢張りお尋ね者になってしまったか。
俺は涙をダボダボ流しながら〖ぱそくぉん〗を食い入るように見ている熊襲の肩を、ポンポンと叩く。
「でさアンタら、自首するなら今の内なんだけどわかってる?」
「なんそ?」(なんだ?)
「あう、あ、え…⁉」
軍前の面持で振り返った俺を見て、女の子は思わず後ずさる。
「だあ、だかりぁ…。あう、えっとね、うん…とね」
「わ、まうしいつらむ」(俺は、自首しない)
女の子が冷や汗をかきながら一所懸命に、身振り手振りで伝えて来る内容は、流石の俺でもわかる。
解る故に、俺は自首、いや、此の国に降伏する訳にはいかんのだ。
「めのこよ、わのななり、くになそしれ?」(女の子よ、俺の名とか、国は知れているか?)
「えっ⁉た、たぶん、だいじなき」(知れてない)
「つぁか、つぁらば、なにとなし」(そうか、それならば、特にどうということはないな)
俺は覚悟を決めた。此の国から名も国も知られるまま、一刻も早く逃げ散り祖国に帰り、屍人と、これを操りし祟し神々を叩き潰さねばならないのだと。
「チョト、マテ待って⁈わチはどうスたらいいんの?」
「ましも、くるや?」(お前も、来るか?)
女の子と俺とのやり取りを察したのか、熊襲は泣きべそをかきながら言い募る。鬱陶しいがこれも何かの縁やもしれぬ。
「ナ、お侍さんナンて言てる?」
「お前もついて来るかってさ」
「いくYO!イクいく!」
「やらしい言い方すんな!」
「ゴめYO!悪気はナいお!」
また殴られると思ったのか、熊襲は巨体を縮み込ませる。
「アホか、もう殴らねェ~よ。それと、あたしは行かないからな!あたりまえだけど!」
女の子が言うには、自分は俺らに誘拐された身だから、役人に捕まっても問題なく解放されるだろうとの事だった。
確かにそうだろうな。俺らは立派な『じゅうはんじゃいしゃ』だが、この娘は俺のとっばちりを喰らっただけだからな。
「な、なによ?」
「めのこよ、あのいたつきにしゃす、かたじけなし」(女の子よ、あなたの苦労に感謝する。すまなかった。)
ゆっくり女の子に近付き謝辞を表す為に首を垂れた。
「あ、はい」
ポトン。
つられて女の子も首を垂れたとき、長い髪に絡んでいたらしき、白い何かが床に落ちた。
「なんか墜ちた?なんだろ……。うあ⁉」
「こ、むしは‼」(この虫は‼)
あの大蠅が産みたる一匹の親指ほどもある大きな蛆が床に落ち、のたうつように這いずっていたのだ。
ガシュッ!!
「え、えっ?」
「いかでか、むしが?」(なんで、虫が?)
俺は咄嗟に踏み潰し、蛆は白い臓物を皮を破って撒き散らせて死んだ。
だが、何故に女の子に大蛆が取り付いていたのか、黄泉の国の大蠅は、死者にしか取り付かぬ筈。
それも、屍人に禍われし者のみに大いに取り付く習性があるのを、俺は経験上から見知っていた。
「コレ、わチが留置所で見たのとイショ…」
熊襲が指差しナニカを呟いた。だから、わからんから現地語はやめてくれ。
「アントニー、見たって、あの刑事さんがコスプレオヤジに頭砕かれ……。えっと、し、死んだときかな?」
「イエス、まちがいナカヨ」
「オヤジ…」
女の子は説明する。熊襲が云うには件の地下牢で俺が不意に死んだ若い役人の鼻に取り付いた大蠅を、その頭ごと叩き潰した際に、砕け飛び散る脳髄に混じり、確かに産み出されたばかりの大蛆を幾匹か見たらしい。
「ゼンブ、PAMシタとおもてたけど、のこてタみたいネ…」
熊襲は〖ぱそくぉん〗と、例の穴の中でしきりにパチパチやっていた〖かめら〗為る品を、妙な形の紐が二本付いたダンダラな色合いの袋に詰めながらしゃべる。
流石は熊襲、その目は確かなようで一瞬の出来事であったにもかかわらず、爆ぜた頭に混じり、同様に千切れ飛んだ大蛆もおおよそ見逃してはいなかったらしい。
「アレ見たトキ、怖いとおもたヨ。だて、あんなトコに大きなムシいるの、オカシイから…」
熊襲はその事もあり、あそこからの脱出に手を貸してくれてたようだった。
ブ……。ブ…ブ………。
「蠅の、羽音…?」
「ようじんなり」(用心せよ)
わばばばばぁあうあ!!!!
突如、さっきまで俺と熊襲が地上を覗いていた穴から、三頭の屍人が折り重なって飛び出し、背後から我らを襲ってきたのだ。。




