今度はだんぼーるはうすから、逃げるが勝ちと心得たり!!
どうも、上古の勇者、大いに駆ける!!を一丁、お届けに上がりました。
熱いうちにお上がりくださいね。
では、またー♪
グ、チュン!!
穴倉から飛び出してきた先頭の屍人が俺の拳の一撃で、首と右腕を捩じらせながら、【だんぼーる】で作られた壁に叩きつけられ、裂け、上半身の中身をぶちまけた。
「ヒャッ!Oh!!」
「うあ!!」
瞬間、熊襲はその場でたじろぎ女の子は反対側の壁に飛びのいた。
あぶははぁわ!!
紫の、緩みまくった腐った口から白く濁ったつばと蛆を吐き散らしながら、尚も迫る屍人の一頭の足を屈み回転しながら薙ぎ払い、転倒したところを右足のかかとで頭を踏みつぶす。
途端、白く濁った両の眼が神経を引き左右に飛んだ。
「なほ、いくつぁはえし」(矢張り、軍はいいな)
俺は最後に残った一頭の腐った胴体を左手で突き通し、右手を首にかけ力任せに斜めに引き裂いた。
ドウッと、ほぼ半分になった屍人は床に崩れ落ちても尚、立ち上がろうとしているのかビタンビタンと勢いよく跳ねる。
「つぁわがし…」(騒がしい…)
パカン!!
乾いた土師器が一気に弾け飛ぶような音を発して、屍人の頭蓋骨が綺麗な肉色の花びらの様に八つに砕け、中の蕩けた脳と、それと混じったトロリとした黒っぽい血と蛆を撒き散ったところで、コイツはようやく動くのを止めた。
「ことをはる。めのこ、くまそ、だいじなきや」(事は終わった。女の子、熊襲、大丈夫か)
俺は身体に付いた蛆どもを払いのけ、一々踏みつぶしながら安否を確認する。
「あ、うん。だ、だあ、だいじ…なき」
「ok ok ゎチを、ナグラナイデ…ネ?」
どうしたのだこやつら、熊襲に至っては声音が小さすぎて聞き取れぬぞ。
「こより、いそぎにぐるなり!」(ここから、急いで逃げるぞ!)
熊襲の部屋に掛かっていた異様に汗やらを拭きとってくれる布で、潰した屍人の体液やら蛆の死骸やらを拭いつつ、彼女らに言い放つ。
「に、にぐる?」
「えっ?ナンなに、なにはじまる?」
先程の出来事に度肝を抜かれたのか、女の子は壁に張り付き、熊襲は大切な持ち物を入れた袋を抱えたまま、その場に立ちすくんでいた。
「あ、あう、あ、あたしは逃げない!」
「わチは逃げたい!」
「だ、だってあたしは悪くない!」
「それドでもいいYO!にげYOYO!」
この期に及んで、お互いに逃げる逃げないで争っているらしい二人を眺め、俺は深く嘆息してしまう。
「めのこ、せなにうじ」(女の子、背中に蛆)
「きゃっ!!」
俺の言葉に驚き慌てた女の子は、バッと壁から離れ見れる筈のない自分の背中を見ようと、身体をひねり首を後ろに向ける。
グワッ!
「えっ⁉いや!」
彼女が目線を逸らした隙を突き、俺は直ちに女の子を肩に抱え熊襲にそっと渡す。
「たのむ」
「わ…かタYO」
どさっと受け渡された女の子は熊襲に背負われ、今更ながらジタバタ暴れ出す。
「こ、この野郎!降ろしやがれ!コレで二回目だぞ!」
「チョ、チョとチョと、動かないで」
相変わらず騒がしい女の子を抱え込まされた熊襲は逃げられては大変と、一所懸命に位置を変えながら彼女が落っこちないように腐心していた。
「だから、おろせって!」
「だからムリだYO!」
やれやれ、騒がしすぎる。
「めのこよ、あまりつぁわぐと」(女の子よ、余り騒ぐと)
バゴン!!
「かやうになりし」(この様になるぞ)
「ヒッ!」
今度は入り口の扉から押入って来た一頭の屍人の頭を、拳ごと壁に当て粉砕して見せる。
「うああん!!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
熊襲の背で逆さになっていた女の子は、童女の如く泣き始め、これを奇貨と見た俺と熊襲は最初に屍人共が現れた穴倉に飛び込んだ。
黄泉の国へと続く穴の様に、暗く湿り得体のしれぬ【げすい】と呼ばれる管を伝って逃げるよりも、まだ地上に最短で繋がっている穴倉の方がよい。
おわぁは、ばばぁうおう!!!!!
ほれ、三・四頭の屍人を倒したところでこの世から死人が無くなる訳ではないからな。幾らでも祟り神に取り付かれた者共が湧いて出て参るのだ。
今倒した屍人の後に続き、五頭もの死人が我らを追いかけて迫る。
「きゃあ!なにアレ、何アレ!!いやぁ!ヤバい!怖い!!うああん!」
「もう、落ちつくネ」
いくらでも襲い掛かって来る化け物たちに女の子は正気を失なったらしく、ただただ泣き喚くしか手立てがないらしいな。
「めのこよ、よけ、にぐるそ!」(女の子よ、良いか、逃げるぞ!)
「もう何でもいいから、早く、に、に、にぐるべし!!」
気が動転した女の子が、やっとまともに発した言葉はこれであった。




