第25章 願い
決勝が終わった、その夜だった。
勝者街への配分が読み上げられた。
水。電力。食料。資材。魔力。
それぞれの数字が、記録係によって写された。
シオンは聞いていた。
村が豊かになる。
学校の屋根が直る。
診療所に薬が入る。
喜んでいいことだった。
喜んでいいことしか、読み上げられていなかった。
それから、個人の願いについて説明された。
優勝チームには、所属街への権利とは別に、一つの願いを申し出ることが認められている。
英雄の一族が、その願いを受ける。
シオンは顔を上げた。
剣白とメイが、隣にいた。
エレーヌもいた。試合で何が起きたのか、まだすべては知らない。それでもシオンの震える手を見て、そっと頷いた。
「少し、話す時間をください」
シオンは言った。
別室へ移った。
窓の外には、中央都市の夜があった。
遠くで、祝う声がした。
シオンはみんなを見た。
願いを口にした。
誰もすぐには答えなかった。
最初に剣白がうなずいた。
メイが目を拭いた。
監督は長く目を閉じたあと、静かに開いた。
部屋を出ると、書記が新しい紙を用意していた。
英雄の一族の者が、申し出に目を通した。
読み終えても、すぐには紙を置かなかった。
「当家の都合では、動かせないことです」
シオンは待った。
「ですが、優勝者の権利として申し出られた以上、正式に受け付けます」
紙が机へ置かれた。
「いま、お願いします」
シオンが言った。
「明日、考え直してからでは間に合わないから」
相手はうなずき、書記へ向いた。
「通常の手続きに優先させてください。今夜中に、担当へ」
シオンは自分の名前を書いた。
剣白とメイも署名した。
今度は、意味を知らないまま署名するのではなかった。
印を押された指示書が、封に入った。係員がそれを受け取り、部屋を出ていった。
足音が聞こえなくなるまで、シオンは扉を見ていた。
*
その夜も、水は流れた。
始まりの少女の供給は止まらなかった。
リリの部屋の記録も、更新された。
勝利の旗は翌朝、下ろされた。
街は、朝食の支度を始めた。
決勝から二日後、履行を知らせる書面が届いた。
日付と印を確かめてから、シオンは両手で紙をたたんだ。




