↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世紀末魔法球少女まつお  作者: むらもと ぎん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/26

第22章 最後まで待った札

 敵陣の右側には、癖があった。


 中央の魔法少女が空へ上がると、物理選手は半歩、中央へ寄る。


 セラフィマはその後ろから全体を見る。


 わずかな空間だった。


 シオンはメイへ目で知らせた。


 メイは剣白へ球を送るふりをした。


 メイの輪に仕込まれていたのは、横向きの加速だった。


 剣白へ渡るはずの球が、違う方向へ出た。


 シオンが球を追い、その先でさらに曲げる。


 セラフィマが動いた。


 球を受けた腕が弾かれた。


 彼女の脇を球が抜け、シンボルへ当たった。


 今度は大きく削れた。敵の耐久が500を切り、残っていた翼が消えた。


 支援選択の笛が、試合を止めた。


 セラフィマは片膝をついた。


 中央側の控えが声を上げたが、彼女は立ち上がった。


 左腕が下がっていた。


 前腕が、不自然な角度に曲がっていた。


 シオンは、目を逸らさなかった。


 傷つけた。


 勝とうとして、傷つけた。


 それを、別のことにはできなかった。


 こちらが引いた支援札は、次の攻撃の球威を高めるものだった。


 今使うか、残すか。


 監督は答えを言わなかった。


 シオンたちは視線を合わせ、残した。


 それを使う一本を、まだ作れていなかった。


 再開の笛が鳴った。


     *


 中央の連携は、セラフィマの左腕が使いにくくなっても崩れなかった。


 彼女は球を奪いに来なくなった。


 守るべき場所を小さくした。


 そして相手に投げさせ、そこから返した。


 シオンの勢いが、そのまま敵の攻撃へ混ざった。


 似ていた。


 自分がしてきたことに。


 球が剣白の手を弾き、自陣のシンボルへぶつかった。


 耐久値は、250を下回った。


 像の片脚が消えた。残る一本は、地面から動かなかった。


 笛が鳴った。


「タイム。支援選択」


 セラフィマに三度目の選択権が与えられた。


 二度、見送っている。


 出てくる三枚は、レア以上だった。


 シオンは動く腕を探すように、指を開閉した。


 メイが膝へ手をついた。


 剣白の呼吸も深くなっていた。


 いま強い札を使われたら、次を受けられるだろうか。


 セラフィマの前に、三枚が並んだ。


 一枚の縁が、金色に光った。


「レジェンダリーカードだぁ!!」


 実況が叫んだ。


 シオンは、その色を知っていた。剣白が完全に戻ったときと同じだった。


 客席がどよめいた。


 セラフィマは説明を読んだ。


 少し、沈黙した。


 三人を見た。


 あの試合では、打つ直前に剣白が完全な状態へ戻っていた。いまは違う。肩が上がらず、メイも息を切らしている。シオンの指にも、震えがある。


 あのときほどは出せないはずだった。


 はずだ、というだけだった。


 あの一撃を、彼女は見ている。


 セラフィマは金色の札を選んだ。


 何も言わず、伏せて懐へしまった。


 シオンには、内容が見えなかった。


 その顔から何かを読み取ろうとして、やめた。


 再開の笛が鳴った。


     *


 相手の物理選手が膝を痛めた。


 こちらの剣白は、右肩が上がりにくくなった。


 中央の魔法少女が一度、控えと交代した。


 こちらも短く交代を挟んだ。メイがベンチで水を飲み、監督は彼女の目の焦点を確かめた。


「まだ出せるか」


「大きいのは、一つ」


「大きいのを出すな」


 メイは監督を見た。


 老婆は杖の先で、球の行く空間を指した。


「要るところへ出せ」


 メイは目を閉じ、開いた。


「……はい」


 コートへ戻った。


 さらに幾度か球が往復し、敵の耐久も250を切った。


 片脚が消えた。


 笛が鳴り、シオンたちも最後の三択を選んだ。


 ゲームライフを一つ戻す札だった。メイの表示に一つ印が戻ったが、傷も疲れもそのままだった。


 再開の笛。


 敵の像は、両翼と片脚を失っていた。以前なら当たった軌道が、いまは何もない場所を通る。残った部分へ通さなければならなかった。


 互いに次の一球を、終わりにできる。


 互いに、次で死ぬかもしれなかった。


 剣白が球を握った。


 口のついた面が、彼の指へ噛みついた。


 いつもどおりだった。


 シオンは、そのいつもどおりに、少しだけ救われた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。