↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世紀末魔法球少女まつお  作者: むらもと ぎん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/26

第15章 数十年

挿絵(By みてみん)


「一度に全部が資源になるわけではないの」


 セラフィマは机へ帳簿を置いた。


 シオンは座らなかった。


「普通でも、何十年も続く。少量ずつ。水を生む人もいる。熱、鉱物、魔力。過酷な土地でも育つ種を生む人もいた」


「人」


 メイが呟いた。


 セラフィマの手が止まった。


「……そうよ」


 帳簿には、生成量の変化が記されていた。


 その横に、魔力量、属性、能力系統の欄があった。


 受付で、同じ順に確かめられた。


 シオンは、自分の名が書かれた紙を思い出した。


「魔力量は、量に関わる。魔力の質や属性、能力は、生まれるものの種類に。同じ人から、複数の資源が出ることもある」


 セラフィマは二つ並んだ生成物の欄へ指を置いた。


 最初は多く、少しずつ減るもの。長く変わらないもの。途中で止まるもの。同じ年齢でも、同じ出力でも、同じ結果にはならなかった。


「若いほど、長く続く傾向がある」


 セラフィマが言った。


 メイは、自分の腕をつかんだ。


「傾向、というだけ。絶対ではない。なぜなのかも、十分には分かっていない」


「調べれば」


 シオンが言うと、セラフィマは顔を上げた。


「誰に」


「医者とか。魔法に詳しい人とか。ここに閉じ込めてないで」


「その人へ何を伝えるの」


 シオンは口を開き、閉じた。


 魔法少女の身体が、水になる。


 若いほど、長く。


 それを口にした瞬間、意味が変わった。


 メイが腕をつかんでいる理由が、分かった。


「いまの秩序を嫌っている街もある。どこにも所属しない人間もいる。自分たちで供給源を持てると分かったら、何が起きる?」


 セラフィマは続けた。


「危険な競技に自分で参加した人では、済まなくなる」


「だから、分からないままで使うの?」


「それがよいことだと言いたいわけではないわ」


「でも、使ってる」


「ええ」


 セラフィマは否定しなかった。


 シオンには、その一言が壁のように思えた。


 記録の最初の頁には、英雄の筆跡だという文字が残されていた。


 教本で見た、堂々とした署名とは違った。


 短い行が何度も消され、書き直されていた。


 彼女が寒がる。


 光が強くなった。


 指を戻せない。


 水を飲んだ。


 眠れない。


 村を作った人の、最初の記録だった。


「英雄が始めたの」


 シオンが聞いた。


 セラフィマはうなずいた。


「資源のある場所を、見つけたんじゃなかったの」


「そう伝えられているわね」


 シオンは、自分が広場で肖像へ頭を下げた日を思い出した。


「全部、嘘だったんだ」


 セラフィマは、すぐには答えなかった。


 古い記録を、もう一頁めくった。


「私は、この人の子孫なの。肖像の前で挨拶をするためだけの家ではなかった。引き継がされるものが、ここにあった」


 そこには女の子の名前が書かれていた。


 シオンは、その文字を指でなぞらなかった。


 紙が破れそうだった。


「最初は」


 セラフィマが言った。


「一人を助けたかっただけなの」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。