第13章 埋葬の申請
上層宿舎の選手証を見せると、以前は会えなかった係員に会えた。
リリの名前を出すと、記録が調べられた。
それだけで進んだ気がした。
書類は、確かに存在していた。
死亡日。対戦記録。競技中の事故としての処理。所持品の返還済み欄。
シオンは、一番下の行を指した。
「搬送先」
係員が書類を少し引いた。
「そちらは内部管理用です」
「場所だけでも」
「慰霊所は、東の広場にございます」
「慰霊所じゃなくて、本人は」
係員は黙った。
シオンはもう怒鳴らなかった。
怒鳴っても、その人が知らないことは出てこない。
「調べるには、誰の許可が要るんですか」
係員は長く迷ってから、別の紙へ部署名を書いた。
それは地下設備を管理する部署だった。
*
行くな、と監督は言わなかった。
「試合の前には戻れ」
そう言ったあとで、剣白を見た。
剣白は立ち上がった。
メイも立ち上がった。
「あなたは休んでていいよ」
シオンが言うと、メイは眉を寄せた。
「道、分かるんですか」
「聞きながら行く」
「絶対に帰りが遅くなるやつじゃないですか」
シオンは断る言葉を探し、見つからなかった。
地下設備の窓口では、競技場の搬送記録がなければ照会できないと言われた。
競技場へ戻ると、記録は設備側へ送ったと言われた。
三人は半日歩いた。
食事を忘れ、メイが怒った。
剣白がパンを買ってきた。
シオンは歩きながら食べ、喉に詰まらせた。
「埋葬したいだけなのに」
水を飲んでから、言った。
「ただ故郷の家族のもとで眠らせてあげたいだけなのに」
メイは紙片を見比べていた。
「ここ。搬送門の番号が同じです」
競技場で最後に見た担架の行き先と、設備部署の印。
紙の上では別々だったものが、一つの通路でつながっていた。
夕刻、選手用の診療棟から地下へ向かう搬送路に、三人はいた。
門には施錠されていた。
シオンは呼び鈴を押した。
返事はなかった。
中から荷車が来る音がした。
扉が開いた。担当者が外側の確認台へ出て、書類を机へ置いた。その背後に、下りの通路が見えた。
荷車に積まれていたのは、白い布を掛けた細長いものだった。
シオンは動いた。
剣白が止めるより早かった。
「待って。名前だけ、確認させて」
担当者が振り向いた。
その先で警告の鐘が鳴った。
シオンは、その音が自分たちのために鳴っていることを、少し遅れて理解した。




