絶体絶命
太陽が沈み、暗い雲で覆われる空はより一層不気味さが増していた。
森でドラゴンと闘うノシュパープル騎士団。
剣や弓矢を持つ騎士達は、風属性の魔力を使うプチミタン副団長と共に灰色のドラゴンたちに攻撃中だ。
闇属性の魔力を剣に纏わせるパランドラタ騎士団長は、白のドラゴンを1人で相手にしている。
「…凄い」
紫に光る剣で次々とドラゴンに斬り込んでいくパランドラタ騎士団長の圧倒的な強さに、騎士や従士は心底驚いていた。
「闇属性だから強いのではありません。ここ数ヶ月、誰よりも訓練を積んだのはパランドラタ騎士団長なのですよ。…その努力を無駄にしない為にも、我々も頑張るのです!」
プチミタン副団長の言葉に団員は改めて気合いを入れ、ドラゴンへ再び挑み始めた。
✳︎
海辺でドラゴンと交戦するホワイトダラ騎士団は、得意の体術を使えるタイミングが少なく、剣で攻め続けていた。
しかし、サータシ騎士団長、マミアー副団長含む一部の騎士以外は、剣術のスピードがドラゴンのパワーに対応出来ておらず、何度も身体ごと跳ね返されていた。
しばらく経った時、脚を負傷し立ち上がることが難しい女性騎士に向けて、白のドラゴンが炎を噴き出そうとしていた。
「…危ないっ…!」
ドラゴンの動きに気付き、騎士を助けようとしたマミアー副団長の背中に青い炎が直撃する。
「ぐわぁぁーー」
「キュワちゃん…っ!」
サータシ騎士団長は急いでマミアー副団長へ駆け寄った。マミアー副団長は背中一面に大火傷を負い、呼吸が浅くなっている。
「しっかりして、キュワちゃん」
「…はぁ……はぁ……だん、ちょう…」
「喋らなくていいわ。すぐに手当てを」
「…私は…はぁ……兄の…兄のために……」
「えぇ、分かってる。お兄様の為にもあなたは生きなきゃだめなのよ!」
ビュッ…!
「…っ!?なに…」
白のドラゴンを見ると、首に矢が刺さっている。すぐさま周囲を見渡したサータシ騎士団長。
「…あなた達…」
空にはヌブルー州から移動してきたバードイーヴィル達がいた。
「俺たちは敵じゃない。援護に来た」
「わぁ重傷だね、その子。大丈夫?」
バードイーヴィル達が敵ではないと判断したサータシ騎士団長は、赤髪の男らへ要望を伝える。
「あなた達を乗せている子たちは、とても速いのよね?」
「あぁ、ドラゴンイーグルよりも速い」
「お願いがあるの。この子を…キュワちゃんをユーイエローの医療施設へ連れて行ってほしい」
「…分かった。あの女を連れて行ってやれ」
「はいはーい」
赤髪の男の指示で、緑髪の男がマミアー副団長をドラゴンファルコンに乗せ、猛スピードで去って行った。
「…キュワちゃんのためにも必ず勝つわよ。…もう一つだけお願いしてもいいかしら?」
団員達が闘う中、サータシ騎士団長はバードイーヴィルへ真剣な眼差しを向けた。
「あぁ」
「ドラゴンを陸に留めたいの。飛びさえしなければ確実に倒せる」
「そんな簡単なことでいいんだね。下に落としたらボクらは次の所へ行くから」
ドラゴンよりも高い位置へ飛んだバードイーヴィル達は、一斉にクロスボウを構えた。
…ビュッ!ビュン!
放たれた矢は翼の付け根部分に刺さり、翼の動きを止めた。飛行機能を失ったドラゴンたちはそのまま砂浜に急降下する。
「じゃあ、後は任せた」
役目を終えたバードイーヴィル達は、ホワイトダラ騎士団の活躍を見届けようともせず、飛び去って行く。
「……皆んな!拳を捧げる時が来たわ!」
サータシ騎士団長の声を合図に騎士達は目にも止まらぬ速さでドラゴンの体に蹴りや殴打を開始した。
✳︎
「…ふぅー…」
「…はぁ…やっと…終わりましたね」
傷を負い、疲れ切った様子のルアンカ騎士団長、チキメリ副団長の前には、体に何十本もの槍が突き刺さったドラゴンたちが絶命していた。
壮絶な闘いが終わり、満身創痍の騎士や従士が大勢いる。
「動ける者は怪我人を今すぐ医療施設へ!運び終えた後はそのまま医療班の補佐を!わたくしとテーディーはレッドキンへ向かいます」
✳︎
「もう朝が来そうッスね」
「日が昇る前に残る敵が白のドラゴンだけというのは、この人数にしては上出来だ」
メラブラック騎士団は深手を負った騎士もいるが、灰色のドラゴンを全て倒した状況だった。
「…さて、もう一踏ん張りしようか」
「了解ッス」
キーヤス副団長は弓を構え、白のドラゴンの目に向かって矢を2本放った。
「ギィーーーー」
矢は見事に命中し、ドラゴンは暴れ始めた。
「今だ!いくぞ!」
剣を持つ騎士達が一気にドラゴンの身体に斬りかかり、先頭のヨグリ騎士団長は素早い剣捌きでドラゴンの頭部や首を攻撃する。
ドラゴンが炎を噴き出し反撃をするが、騎士達は絶えず剣や弓で攻め続けた。
……ドスンッ…!
ドラゴンの巨大な体が倒れ、辺りは血の海になっていく。
顔に付いた返り血を拭ったヨグリ騎士団長は団員に指示を出す。
「…皆んな、よくやった。だが、まだ闘いは終わっていない。重傷者は本部に戻り手当てをし、その他の者はレッドキンへ移動しよう」
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私と父がレッドキン州に到着した時、レッドキン騎士団はドラゴンたちとの交戦真っ只中だった。
…グリーンメアよりも灰色のドラゴンの数が相当多い。
国内最大人数を誇るレッドキン騎士団でさえ、1頭に対応する人数が足りていない状況だった。
オムラ騎士団長は白のドラゴンを、フォーシグア副団長は灰色のドラゴンを相手にしている。
「父さんはドラゴンへの攻撃に加勢するから、リアノは国王達の避難状況を確かめて来ておくれ」
「うん、分かった」
城から30キロほど離れた所で、避難している王族と近衛兵達を見つけた。
…!!
空には灰色のドラゴン3頭が飛んでおり、国王達を狙っている。
近衛兵達は、王族を後方で囲う者と前方でドラゴンに向かって剣と弓を構える者に分かれていた。
「動じるな、たった3頭だ。己の命に代えてでも王をお守りする…さぁ、いこう」
近衛兵達は地上に降りてきたドラゴンへの攻撃を開始した。
「……。」
開始から数分が経ち、空から様子を見ていた私は心の中で思う。
…その戦い方では負けてしまう。
近衛兵の視察をした際に感じたことが現実になってしまっている。確かに一人一人の剣術や弓使いは上手い。しかし、モンスターを相手にしたことすら無い人が多く、攻撃に不慣れだということが目に見て分かる。少将のような騎士出身者は、慣れた様子で剣を振りかざしていくが、他がその実戦レベルに追いつけていない。通常のモンスター相手であればなんとかなったかもしれないが、目の前にいるのはドラゴンだ。実戦経験豊富な騎士でさえ苦戦する敵に今の近衛兵は太刀打ちできないだろう。
私1人が加勢したところで勝敗は変わらない。どうするべきか……
「ゔわっ…」
上手く攻撃を避けられなかった近衛兵の1人が、ドラゴンに片脚を噛みちぎられた。
他の近衛兵数人も光の攻撃を連続で受けてしまい、地面に伏せたまま動いていない。
次々と仲間が負傷していく状況にイヅチャ元帥は焦りを感じているようだった。
「訓練を思い出せ!…救護は後だ!早く攻撃をするんだ…!……おりゃあーーっ」
剣を1頭のドラゴンに振りかざそうとしたイヅチャ元帥だが、その瞬間もう1頭のドラゴンの飛ばした光が顔面に直撃してしまう。
「…あ゛ぁぁーっ…!」
「…イヅチャ元帥!」
両手で顔を押さえ苦しむイヅチャ元帥の所へシーアと駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
「…ゔぅ…っ…」
近衛兵のトップであるイヅチャ元帥が戦闘不能になりかけ、周りにいる近衛兵達の表情は自信から絶望へと変わっていく。
離れた場所にいる国王達も予想外の事態に不安を滲ませていた。
…この状況をなんとかしなきゃ…!
シーアに乗り空へ飛び立とうとした時、空から聞き慣れた声がした。
「あれれ、もしかして困ってる?」
ドラゴンイーグルに乗ったセノさんが目に映る。
…セノさんっ!!




