助っ人
グレースア騎士団は得意の大剣を振り回し、次々と地上にいるドラゴンに斬りかかっていた。ドラゴンの攻撃により、傷を負っている騎士や従士もいたが、傷口から血が流れていようが気にせずに戦い続けている。
「俺様達を舐めんじゃねーよ!!」
アハック騎士団長の一撃で灰色のドラゴンは川の中へゆっくりと倒れた。
「お前ら、首切って仕留めとけ!」
アハック騎士団長、ズロスナー副団長の活躍もあり、10頭以上いた灰色のドラゴンはほぼ生き絶えていた。
「残るはアイツだな…」
仁王立ちで、空にいる白のドラゴンを見たアハック騎士団長。横に来たズロスナー副団長はアハック騎士団長に問いかける。
「降りてくる気配がないですね。空から攻めますか?ドラゴンイーグルを連れて来るのは少々時間がかかりますが」
「いや、その必要はねぇ。…一気に仕掛けるぞ。……お前らぁー!肩は鈍っちゃいねーだろうなぁ!」
アハック騎士団長の周りに続々と騎士達が集まってくる。
「地面に落ちさえすりゃあ俺様達の勝ちだ。……よっしゃー、狙えぇーーーーっ!!」
騎士達が一斉に白のドラゴンに向かって大剣を投げ飛ばした。
噴き出される炎の中を大剣が一直線に進んでいき、ドラゴンの体に何本も突き刺さる。
「グギィーーーーっ」
呻き声を響かせた白いドラゴンは川の中へ墜落し、川の水が壁のように舞い上がった。
「これで終わりだーーーー!」
水の壁を切り裂くように現れたアハック騎士団長は、振りかざした大剣をドラゴンの頭部に深く突き刺した。
「……っ……はぁ…」
ドラゴンの死を確認したアハック騎士団長は、団員へ指示を飛ばす。
「重傷者は本部に戻って手当てしろ!まだ動ける奴はレッドキンへ行くぞ!」
✳︎
セノは1人でモンスター討伐を続けていた。
「しつこすぎでしょ」
「困っとるようじゃな」
ドラゴンイーグルに乗って現れたのは、いくつかの武器を持ったハラー。
「別に困ってませんけどー」
「強がるな。こんな所で立ち止まっとる場合じゃなかろう。お前はもう近衛兵じゃ…行くべき所は決まっとるわい」
「……ぜってぇー死ぬなよ!」
そう伝えたセノは、ハラーが乗ってきたドラゴンイーグルに飛び乗り、その場から去っていく。
「ガハハ!年寄り扱いするな。…まだまだ現役じゃ」
ハラーは余裕の表情でモンスターに身体を向けた。
✳︎
ヌブルー騎士団は、ドラゴンたちと空中戦を繰り広げている。
「…くっ…」
どの騎士も的確にドラゴンの体に矢を突き刺せるものの、なかなか致命傷に繋がらず苦戦していた。
「ベナス!先に小さなドラゴンたちを倒すぞ。その間、白いドラゴンからの攻撃に気を付けろ」
「かしこまりました!」
その時だ。ドラゴンファルコンに乗った見覚えのある男達が向こうの空からやって来た。
「……何故ここに」
現れたのは、以前ヌブルー州へ襲来したバードイーヴィル達だった。手にはクロスボウを持っているが、口元は布で隠されていない。
「大きなドラゴンは俺たちが殺す」
赤髪の男の言葉にツマーサ騎士団長達は驚く。
「どうして……」
「ボクら今、メラブラック騎士団の騎士候補生なんだよね。団長から他の州へ加勢に行くよう命じられたから」
青髪の三つ編み男の説明にベナス副団長は軽く口角を上げた。
「ヨグリ騎士団長らしい判断だねぇ」
「協力感謝する!想像以上の強さだ、気を抜かず戦ってくれ」
「分かった」
「早く終わらせて別の州にも行かないと」
ヌブルー騎士団は灰色のドラゴン、バードイーヴィルは白のドラゴンへの攻撃を開始した。
ビュン…!ビュッ…!
バードイーヴィルを乗せたドラゴンファルコンは猛スピードでドラゴンの周りを旋回し、その間にクロスボウからいくつもの矢が放たれる。
矢はドラゴンの首や心臓付近に次々と刺さり、ドラゴンは炎を噴き出せなくなった。
ツマーサ騎士団長達はバードイーヴィルのおかげで、灰色のドラゴンへの攻撃に集中できていた。
「一気に仕留めるぞ!」
従士は地上から、騎士達は空中から同時にドラゴンへ矢を放った。そして、ツマーサ騎士団長とベナス副団長は、次々とドラゴンの目に矢を突き刺していく。
全身に矢が刺さったドラゴンたちは重なり合うように地面に落下した。
弓矢から剣に持ち替えたツマーサ騎士団長はキーサーから飛び降り、全てのドラゴンの首を切り落とし、完全に息の根を止めた。
ドスンッ…!
そこへ白のドラゴンが空から落下してきて、地面が大きく揺れた。
「強力な矢にしておいて正解だった」
ドラゴンファルコンから降りた赤髪の男は淡々と言った。
ヌブルー州へ襲来した全てのドラゴンを討伐し終わったツマーサ騎士団長は、武器を持ち再びキーサーに乗った。そしてバードイーヴィルへ指示を伝える。
「これから我々はレッドキンに行く。君達には東方向にあるホワイトダラ州への加勢をお願いしたい。いいか?」
「あぁ、構わない」
「ありがとう。…お互いに生きてまた会おう」
「当然だ」
ヌブルー騎士団とバードイーヴィルは、それぞれ別方向の空へ移動を始めた。
✳︎
前回のドラゴン襲来で亡くなった人々が眠る広大な墓地に、馬に乗り到着したソノワン兄弟率いるオレンジブラウン騎士団。目の前には墓地を破壊していくドラゴンたちの姿があった。
「……酷い」
「…許せないっ。……俺は、ここにいる誰1人失いたくない」
「そうだね」
「…この半年間厳しい訓練に耐えてくれた皆んななら絶対に勝てるっ!行くぞ!!」
「うおぉーーー!!」
ソノワン兄弟とベテラン騎士達は白いドラゴンの炎を避け、俊敏な動きで体を斬りつけていく。
「やっぱり簡単には倒せそうにないね」
「だなっ!」
数人ずつに分かれ連携を取り、灰色のドラゴンに剣で攻撃をしていくその他の騎士達は、初めて体験する光の攻撃に悪戦苦闘しながらも、自分の背後にも意識を向けていた。
「…ごほっ…!」「ぐはっ…」
しかし、ドラゴンの容赦無い攻撃で地面に叩きつけられたり、吹き飛ばされたりする者が多い。
白のドラゴンを相手にするソノワン兄弟は、負傷していく仲間達を気にしていた。
「ニーハー!少しの間、向こうに加勢してくるっ!」
「分かった」
灰色のドラゴンと闘う騎士達の元へ駆け寄ったニッハ騎士団長。1頭のドラゴンに素早く剣で攻撃をしたニッハ騎士団長は、地面に倒れる騎士の上半身を抱き上げた。
「大丈夫かっ!?」
「……ゔ…はい……」
騎士は今にも意識が遠のきそうだ。
「…っ。…自分だけが強くても守れない。血の滲むような訓練で団員達を強くさせることは厳しさなんかじゃない、命を守る為の優しさだったんだ…」
ニッハ騎士団長は悔しさで唇を噛み締める。
「そこに気付けたのなら、もう立派な騎士団長だね」
「…っ!」
声が聞こえた空を見たニッハ騎士団長。そこには、ドラゴンイーグルに乗った前騎士団長と前副団長である2人の男性がいた。ニーハーも2人の存在に気付いたようだ。
「エワモ騎士団長っ!エチア副団長っ!」
「やぁ、久しぶりだね。ニッハ、私達はもう団長ではないよ。今、オレンジブラウン騎士団を引っ張っているのはソノワン兄弟だ」
「…しかし、お二人のように仲間を守ることすら…」
「何甘えたことを言っているんだ。まだこの闘いは終わっていない。弱音を吐くのは後にすることだ」
「また一番犠牲者の多い州にするために君達を団長に選んだわけじゃないんだよ」
前騎士団長と前副団長は、ニコニコ顔で厳しい言葉を投げかける。
「…はいっ!絶対に…絶対に守り抜いてみせますっ!」
「うん、そうだね。ニッハは白のドラゴンに戻っていいよ。こちらのフォローは私達がするから」
「ありがとうございますっ!」
白のドラゴンと闘うニーハー達のところへ戻ったニッハは、ニーハーと目を合わせ力強く頷いた。




