悪夢の再来
「本当に……現れた……」
霧が晴れたグリーンメア騎士団本部の屋外訓練場で、真っ黒に染まった空をシーアの横で見上げた私。騎士団本部付近で、1頭の巨大な白いドラゴンと10頭以上の灰色の小さなドラゴンが上空を飛んでいる。
「グガァーーーーーーッ」
聞いたこともない不気味な声を響かせた白のドラゴン。初めて見るその恐ろしさに言葉を失う私に、早くなっていく鼓動がこれは夢じゃない、現実だと訴えてくる。
「…。」
父さんの早い判断のおかげで、州民の避難は完了している。残された騎士団がすべき事はただ一つ…
「…ドラゴン討伐」
鞘に触れた手はまだ少し震えている。しかし、戦わない選択肢など無い。
本部の外へ出たグリーンメアの騎士達は剣と盾を持ち、ドラゴンイーグルに乗る人と馬に乗る人の二手に分かれていた。弓矢を持つ従士達は地上に配置されている。
「皆さん!訓練の成果を発揮する時です!ペンラ達は灰色のドラゴンを、私達は白のドラゴンを対応します!」
指揮を執るのは、もちろんキオジャ騎士団長。弓矢を持つ父は、シーアではないドラゴンイーグルに乗り、騎士団の後方にいる。
ドラゴンイーグルに乗るキオジャ騎士団長達は、白のドラゴンがいる空へ飛び立ち、攻撃を開始した。馬に跨るペンラ副団長達は、本部周辺の地上に降りてきた灰色のドラゴンたちへ一斉に斬りかかりにいく。
「シーア、私達もいくよ!」
「キィーーーーーッ!」
剣と弓矢の両方を備えた私は、シーアと空高く飛び立った。
白いドラゴンは青い炎を口から勢いよく噴き出し、灰色のドラゴンは雷のような光を口から飛ばしている。
接近戦が難しいのは厄介だ。背後から攻めるにしても、タイミングが合わなければ命取りだし…。
「…ぐわぁっ…!」「ゔおっ…」
…っ!!
灰色のドラゴンたちからの攻撃により、騎士が次々と馬から振り落とされた。身体には深い切り傷や火傷を負っている。
1回の攻撃であそこまでの深手を…。
空中で白のドラゴンと闘うキオジャ騎士団長達は攻撃を避けることが優先され、まだ一度も剣を振りかざすことが出来ていない状況だ。
炎さえなければ、キオジャ騎士団長のレベルなら斬り込めるはずなのに…。
開始早々、大型モンスターの比ではないドラゴンの強さにグリーンメア騎士団は苦戦していた。
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レッドキン州の城では、アジヒ国王やシュアタス王子達をイヅチャ元帥率いる近衛兵が安全な場所へ避難させているところだ。
「まさかまた現れるとは……」
「陛下、ご安心ください。必ず我々が皆様をお守り致します」
「…。」
暗黒の空を見るシュアタス王子は、何か考えているような表情を浮かべた。
レッドキン騎士団本部から数キロ離れた地点に舞い降りた白のドラゴンと灰色のドラゴンたち。
オムラ騎士団長を筆頭に馬に乗った騎士団がドラゴンの前に整列した。
「ほぉ、前回より数が多いな。……皆!絶対王者の力を見せる時だ!必ず勝利するぞ!」
「おぉーーー!!」
✳︎
ユーイエロー州の村に降り立った白のドラゴン。空では灰色のドラゴンたちが右往左往に飛んでいる。そこに槍を持ち馬に乗ったユーイエロー騎士団が到着した。後方には幌馬車が準備されている。
槍を2本手にするルアンカ騎士団長とチキメリ副団長。
「命を救うユーイエローで、尊い命が失われてはいけない」
「そっの通りです!早く倒して、他の州の救護に行きましょーう!!」
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「ニッハ、大変だ…!ドラゴンが…ドラゴンが空に…!」
オレンジブラウン騎士団本部の上空をドラゴン達が通り過ぎて行く。
「ほんとだっ…!…あのドラゴン、墓地の方向へ向かっている…。ニーハー、今すぐ団員に州民の避難誘導をさせるぞっ!俺達はドラゴンを追いかけようっ」
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ノシュパープル州の森の奥。白のドラゴンが炎で木々を焼き払い、森の動物たちは逃げ回っている。
「またここで対戦するなんて…びっくりなのです」
「…今のノシュパープル騎士団なら絶対に勝てる」
「そうですね!」
パランドラタ騎士団長をはじめ、それぞれ魔力を纏わせた剣や弓を構えた騎士達。
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ホワイトダラ州の海辺に立つサータシ騎士団長の元へ駆け寄るマミアー副団長。
「団長、住民の避難完了いたしました」
「ありがとう、キュワちゃん。……もう誰にも悲しい別れがこないように全力で闘いましょ」
「…はい!」
2人の視線の先には、大きな翼で海面を激しく揺らすドラゴンたちがいる。
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「空中戦で我々が勝てない相手などいない!」
ヌブルー州にある教会の上空。ドラゴンイーグルに乗った騎士団員が弓矢を持ち、ドラゴンと対峙している。
キーサーに乗るツマーサ騎士団長は鋭い表情で指示を出す。
「必ず…必ず全員で生きて帰る。…いくぞ!」
「はい!」
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グレースアに流れる川の河口付近に舞い降りた灰色のドラゴンたち。空には炎を噴き出す白のドラゴン。
大剣を手にした騎士団がゾロゾロとドラゴンへ近づいていく。そして、先頭に立つアハック騎士団長は声を張り上げた。
「普段からデケェモンスター相手にしてる俺様達のとこへ来るなんて、馬鹿なドラゴン共だ。…いいか、お前らぁ!怯むんじゃねぇぞ!こんなドラゴンさっさとぶっ倒すぞぉー!!」
「おぉーーーっ!!」
一斉に走り出し、モンスターに向かって大剣を振りかざす騎士達。
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「うわぁ、まじでドラゴンじゃないッスか」
メラブラック州の街で、馬に乗っているヨグリ騎士団長とキーヤス副団長は空を見上げた。
「あんな灰色の小さなドラゴン…前はいなかったはず…。…皆んな!これまで戦ってきたモンスターとは別物だ。覚悟して戦うように!」
「了解ッス」
セノが住む森の奥では、様々なモンスターが大量発生していた。
大剣と弓矢を持つセノは、やる気の無い表情で1人呟く。
「やっぱなあー。前ん時もすげぇ出てきて、ドラゴン退治すんの出遅れたのにー。…中心部はガッセル達いるから大丈夫だとして、問題は他の州だな。ま、とりあえずこいつら倒すか」
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ドラゴンが襲来し、すでに5時間が経過していた。周辺の建物は崩れ落ち、圧倒的な強さをみせるドラゴンに対し、グリーンメア騎士団は従士を中心に負傷者が続出している状況だ。
「首と心臓を狙えーっ」
灰色のドラゴンへの攻撃を続けるペンラ副団長も身体にはいくつか傷を負っている。
私も空から灰色のドラゴンに矢を放つが、硬い皮膚で覆われているため、矢が刺さっても与えられるダメージが少ない。
他の矢に替えるか、狙い所を変更するしか……っ!?
「ぐわぁっー…!」
空で白のドラゴンと戦っていた騎士が、乗っていたドラゴンイーグルと一緒に地面に落下した。地面に叩きつけられた身体はドラゴンの炎で一部が燃えている。
早く火を消さないと…!
負傷した騎士の元へ降りた私は、側にあるもので火を消し、ユーイエロー騎士団の方々に教わった応急処置を施した。
出来ればすぐにちゃんとした処置を受けてほしいけど…
「ありがとう…」
起き上がった騎士はドラゴンイーグルに乗り、再び空へと飛び立った。
身体が動くうちは闘う…騎士として当たり前の選択だ。
「…。」
空を見た私は、白のドラゴンを相手にするキオジャ騎士団長達の動きを確認する。
少しずつ、少しずつキオジャ騎士団長がドラゴンの動作に慣れてきている。何度か斬りつけることも出来ているから、他の団員と絶えず攻撃をし続ければ与えられるダメージは大きくなるはず。
17年前と違い、ドラゴンイーグルでの攻撃が可能な今、騎士団のレベルはドラゴンに適応しつつある。
「リアノ…!」
空にいる父が私に指示を出した。
「ここはミリレ達に任せて移動しよう」
「えっ」
「おそらく最後の戦場になるのはレッドキンだ」
「でも、レッドキン騎士団の人数と近衛兵がいれば…」
「まだ現れていない敵がいるんだ。ヤツは必ずレッドキンに来る」
「それって……」
「とにかく急ごう」
「…。」
消しきれない不安を胸に私は父とレッドキンへ向かった。




