2-1:パラシュート
川に向かって歩く途中、なにかが視界の端でふわっと揺れた。
「あっ! 守さん! あれパラシュートですよ!」
「サバイバルキット、あってくれ……」
木の枝に引っかかっている、パラシュートの元へ寄る。
「ハーネスがねぇな」
「キャノピーとラインだけですね。えっと……ホエール!」
真壁がラインの一部を掴むと、パラシュートがすうっと消えた。
「便利だな、それ」
「ですね。馴れたら、帰った時に不便になりそう」
「確かに」
若桐は、パラシュートが引っかかっていた木の周りを、ぐるぐると見て回す。
「やっぱりハーネスから下の部分がねぇな」
「イノシシが持ってっちゃったんですかね? 携帯食料とか入ってたし」
「匂いが漏れることはないと思うが……。でも、知ってる生き物と生態が同じと考えるは危険か……」
振り返り、若桐は続けて言った。
「今のパラシュート、出して見せてくれ」
「はい」
真壁が手を前に出すと、畳まれたパラシュートが現れる。
「くっちゃくちゃで収納したのに、畳まれてんの? 便利過ぎん?」
「ですよね。乾燥機から出てきた洗濯物、入れて出すだけで畳まれてそうです」
「いや、そも、出す必要なくね?」
若桐は、パラシュートを広げて検品する。
「やっぱり、キャノピーとラインだけ……か。とはいえ、キャノピーでテントを張れば、雨露は凌げそうだし……。あっただけマシと思うべきか……」
「そんなこと出来るんですか?」
パラシュートをホエールに収納しながら、真壁が問う。
「えっ、それ、サバイバル講座で習わなかった?」
そんな会話を交わしながら、二人は川に向かって歩き出す。
パラシュートは、一つしか見つからなかった。
※
緊急脱出装置:座席ごと空中に打ち出される。脱出後、パラシュートが自動で開く。傘の部分がキャノピー、傘と座席を繋いでいる部分がライン、体を固定するベルトがハーネス。




