1-5:スキル
「自分たちがいる場所に、ピンが付いてるのもありがたいな……」
「500メートルぐらい先に、川がありますね」
「問題は、このデカブツをどうやって川まで運ぶか……だな」
「ラノベだと、インベントリとかっていって、大きいものも簡単に運べたりするんですけど……」
真壁が触れると、イノシシの姿が消える。
「あれ?」
「なんだっ?!」
真壁が手のひらをグーパーしてから、若桐を見上げた。
「なんか、頭の中で〝ホエール〟って聞こえました」
「……ホエール……?」
「どうでしょう?」
若桐は、真壁の顔をジッと見る。
目の前に、先程イノシシに出たのと同じようなウィンドウが現れた。
〝真壁百合緒・男性・23歳。スキル:イーグル・ホエール・ブルーインパルス〟
「えー、僕まで鑑定できちゃうんですか! すごいです!」
真壁は、自分のステータスが表示されたウィンドウを、一緒に覗き込む。
「スキルとは……?」
若桐は、自身の概念の中の単語の意味と合わない言葉に、首を傾げる。
「ラノベだと、特殊な能力を指しますよ。イノシシが消える時に〝ホエール〟って聞こえましたから、僕のインベントリのスキル名が〝ホエール〟なんじゃないですか?」
「それ、どうやって確かめるの?」
「鑑定結果を鑑定すると、更に説明が出るのも、ラノベのお約束ですよ」
若桐は、自分の手のひらを見る。
〝若桐守・男性・35歳。スキル:カタパルト・チャージ・コントロールタワー〟
「あ〜、俺にも付いてるな……」
「なんか、守さんのほうが、ラノベ読んだ僕より馴染んでますね」
「臨機応変と言え」
ウィンドウに現れた文字を、指で突く。
〝カタパルト:若桐守のスキル。真壁百合緒を射出する〟
「俺が百合緒を射出? 意味がワカラン……」
若桐は視線を移して、真壁のステータスにある〝イーグル〟に触れた。
〝イーグル:真壁百合緒のスキル。若桐守に射出されることにより飛行する。装備:バルカン・サイドワインダー・アムラーム〟
「カタパルトってそーいう意味かいっ! てか、装備が物騒!」
おっかなびっくり、再び自分のステータスに視線を戻し〝コントロールタワー〟に触れる。
〝コントロールタワー:若桐守のスキル。真壁百合緒との通信回線を繋ぐ。イーグルで飛行中に得た情報を精査、管理する。得た情報を精査、管理する〟
「なんで〝得た情報を精査、管理する〟が繰り返されてるんだ?」
「飛んでる時に僕が見た情報を地図に落とし込むのと、地上で守さんが自分で見たもの……この画面とか、イノシシが食べられるとかって情報を精査、管理するんじゃないですか?」
「なるほど?」
「じゃあ、ホエールは?」
「ホエール……っと」
〝ホエール:真壁百合緒のスキル。C-2輸送機と同等の物資を空間内に収納・運搬可能〟
「おまえ、30トンも物資運んじゃうのっ?」
「軽自動車みたいなイノシシ、入っちゃいましたもんね」
若桐は、ふうっと息を吐いた。
「わかった。……いや、意味はぜんっぜんわからんけど、使い方はわかった。とりあえず、その川に行こう」
「でも僕、丸ごとのイノシシの食べ方なんて知りません」
「そこまでデカいのは知らんが、普通のイノシシなら、捌いて食ったことあるから」
「そうなんですか?」
「同期で陸自に行った山南ちゅーミリオタが居てな。山中サバイバルとか、つきあわされたんだ」
「ほんっと、守さんって、人脈広いですよね」
「おまえだって、響野や堂島みたいな、おかしい友達いるだろうが……」
二人は、川に向かって歩き出した。
※
F-15戦闘機:愛称はイーグル。
C-2輸送機:愛称はブルーホエール。
バルカン砲:20mm口径の連射銃。
サイドワインダー:短距離空対空ミサイル。
アムラーム:中距離空対空ミサイル。




