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空に墜ちる -帰投は迷い家のあとで-  作者: 琉斗六


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3/17

1-3:イーグル

「や……。……待て、待て、待て……。投げたら飛んだの時点から、変だろう?」

「変ですね」


 少し考えてから、若桐は手を広げた。


「ちょっと、いいか……」

「はい」


 若桐は、真壁の体を抱き上げる。


(あれ? 先刻より重い……?)


 とはいえ、イノシシの圧に混乱していたことを考えると、重さは勘違いかもしれない。


(それ以前に、なんであの距離のイノシシの気配に気付いたんだ?)


 ふと、疑問が頭を掠める。

 逃げている時に思考する時間が出来た程度に、イノシシと距離があったはずだ。


「守さん、そのままちょっと前に出してください」


 親戚の子供が、ヒーローごっこで抱き上げられたようなポーズのまま、真壁が言った。


「前に?」

「こう……前後に揺するような感じで、僕を前に出したところで手を離してください」

「危ないぞ?」

「じゃあ、あの、柔らかそうな草が生えてるところに向かって、軽くぽいっと。ちゃんと受け身取れますから」

「わかった」


 ゆるゆると真壁の体を前後に揺すって、若桐はほいっとその小さな体を投げた。


「うわっ!」


 すうっと、真壁が水平に──地に足をつけずに移動している。


「どうなってんだ?」

「わかりません。でも、こうして……」


〝キィィィィィィン……〟


 と、戦闘機が……まるでタキシングして滑走路に移動するような、聞き慣れたエンジン音が響く。

 ザザザ……と、受信の悪い無線のような音が、耳に聞こえたような気がした。


〝……R……〟


 囁くような、小さな声。


「えっ? なに……?」

〝V2……、離陸します……〟


 ハッとした時には、真壁の体が上空へと舞い上がっている。


「百合緒っ?!」

「はいっ! 無線クリアです!」

「む……無線?」

「えっと……、僕、今、イーグルに乗ってるみたいな感じなんです」

「え……?」


 先程まで、両手をちょっと広げて、自身が戦闘機になった──一種、子供が夢想するポーズでふわふわしていた真壁が──

 今は間違いなく、F-15の機影になっている。


「装備あるのか? サバイバルキットは?」

「乗ってる時、それ確かめるの無理ですよぅ」

「そういや、そうか……。てか、俺には装備がないのに、なんでおまえと会話出来るの?」

「さぁ? でも、堂島の読んでたラノベみたいですね。異世界チートっていうやつです」

「そんなの読んでるの?」


 機体が着陸モードに入り、ランディング・ギアが出た……ように見えたのは一瞬で──

 すとんっと、若桐の前に真壁が降りてきた。


タキシング:航空機が離陸もしくは着陸した時に、地上を車輪で移動すること。

サバイバルキット:操縦席の下にある。無線機・医療キット・浄水器・非常食・一人用ボートなどが入ってる。

ランディング・ギア:F-15戦闘機が着陸する時に出る車輪。

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