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空に墜ちる -帰投は迷い家のあとで-  作者: 琉斗六


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2/17

1-2:ロックオン

 二人が空を見上げていると、カサリと草木を踏む音がした……ような気がした。

 そちらを見た若桐は、咄嗟に真壁を抱き上げると場を離れようと踏み出す。


「守さんっ!」


 叫んだ真壁の声に思わず振り返ると、かなりの速度で軽自動車ほどもあるイノシシ……のようなものが、こちらに向かって走り出したところだった。


「デカすぎんだろ!」


 走りながら、若桐が叫ぶ。

 そもそも大きさ以前に、伸びた牙の長さがマンモスのようだ。


「駄目です、守さん! 追いつかれますっ!」


 イノシシに背を向けて走る若桐と違い、抱えられている真壁は相手を見ている。


(真壁だけでも……)


 そう考えた若桐は、走りながら真壁を抱える腕を持ち替えた。


「百合緒、逃げろっ!」


 視界に入った柔らかそうな草地に向かって真壁を投げ、若桐はイノシシを引きつけたまま全力で走る。


(イノシシの時速って、どんくらいだったっけ……?)


 相手のサイズが異常過ぎて、遠近感もおかしい。

 思ったよりは考える時間があった。


「守さんっ!」


 背後から、イノシシの鳴き声と重い足音が距離を縮めてくるのが分かる。


(あの木まで、行けるか?)


 イノシシが突進をしているなら、大木の手前で方向転換をすることで、相手の力を利用して倒せるかもしれない。

 しかし、その手前で木の根に躓き、倒れる。


「しまった……!」

「守さんっ! 伏せて!」


 真壁の声に、咄嗟に頭を下げると、傍で──まるでF-15戦闘機のエンジン音に似た轟音が響く。


「なんだ?」


 驚いて顔を上げると、真壁がイノシシの眉間に蹴りを入れているのが見えた。


〝どごおおおおっ!〟


 イノシシがふっ飛ばされて倒れる音が響く。


「百合緒?」

「守さん! やりました!」

「やりました……って、なにしたの?」


 ぽてぽてぽてと近付いてきた真壁に、少し違和感がある。


「よくわからないんですけど。守さんに投げられたら、なんかこう……ふわっと浮きまして……」

「はっ?」

「そしたら、ぎゅんっと……こう……、なんか頭の中でシミュレーターに乗ってるみたいな感じになりまして」

「はあ……」

「イノシシをこう……翼で牽制しようって思ったら、ロックオンされたんで……」

「ロックオン?」

「なんか……よくわかんないんですけど……。……シミュレーターで、敵機にロックオンして、バルカン砲を撃つと〝撃墜〟判定出るじゃないですか」

「うん? うん……」

「あんな感じで……、イノシシの顔を見たら眉間にロックオンされて……」

「そんで、足が出たの?」

「シミュレーターのボタンを押したら、蹴ってた……みたいな? それで、足がヒットした瞬間にキル判定が出た感じです」


 シミュレーターで最高得点を出した時のように、満面の笑みで真壁が言った。



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