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空に墜ちる -帰投は迷い家のあとで-  作者: 琉斗六


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13/17

4-1:探索

 真壁のブカブカしたフライトスーツの背中を掴む。


「じゃ、行くぞ」

「はいっ!」


 若桐が腕を揺すると、脳内に〝V1……、VR……〟と声が響く。


「V2……、離陸します!」

「行ってこい!」


 手を放すと、真壁がぱっと(くう)へと舞い上がった。

 真壁の姿は、若桐の手が離れてすぐは〝人型〟のままだ。

 だが上空まで上がると、そこにはF-15の機影がある。


「よっく見てても、変身も変形もしてねぇんだよな……」


 そもそも、高さ二メートルぐらいに上がった時点で、機体のシルエットになってはいるが。

 大きさが〝真壁の身長〟ぐらいしかない。

 しかし巡航高度に上がった時点で、見慣れたシルエットに見えているのだ。


(上空だと、19メートルになってるってこと?)


 首を傾げる若桐の耳に、真壁の声が届く。


「無線クリア!」

「おう、聞こえてる」

「視界クリア」

「これって、リアルタイムで視界の同期とか出来るんかな?」


 地図を出すと、画面が二分割されていて、固定マップとリアルマップが表示される。


「あ、出た」

「守さん、あれ、海じゃないですか?」


 真壁の視線が上がったのか、真下からのカメラアングルが正面へと映った。


「どうかな? デカい湖の可能性は?」

「浜名湖が海に見えたこと、ありませんよ?」

「カスピ海クラスだとわからんし……。てか、おまえ今、高度どれくらい?」

「千ぐらいですけど。……でもカスピ海なら塩湖だから、塩は取れますよ?」

「カスピ海ならな……。そのイーグルちゅースキルが、ホントにF-15の機体性能なら、高度は一万以上に上がれるが……」

「上がりますか?」

「見た目がF-15でも、実態は生身の人間だしなぁ。とりあえず五千を目標に上がってみて、途中で息が苦しくなったりとかしないか、確かめながら進もうか」

「はい。上昇します」


 リアルマップの視界が、どんどん広がっていく。


「うわ……、こんだけ上がっても、建物一つ見えないとか……」

「守さん、やっぱり海です。対岸が見えません」

「距離は?」

「それほどないですね。ホエールに海水汲んでみますか?」

「着水出来ないのに、どうやって汲むんだ? 着陸しちゃうと、俺がいないと飛べないだろ!」

「そうか……。目で見たものが収納出来るわけじゃないですもんね」

「偵察は許可するが、収集は却下。オーバー?」

「了解です」


 移り変わる景色を見つめながら、若桐は考え込んだ。

 真壁が〝F-15の巡航速度〟で飛び、高度を五千まで上げても、人里が一切見えない。

 これは、かなり問題だ。


(この拠点にしばらく腰を据えて、旅の準備を整えるべきか。……いっそ、なにもないなら、移動をするべきか……?)


 ナイフすらないのが、かなり痛い。

 真壁はイーグルで遠距離移動が可能だが、海水の件で〝着陸したら戻れない〟ことを、改めて認識した。


(つまり、離れて活動することを考えちゃ駄目ってことだな)


 森の中の脅威も、どの程度かわからない。


(食うものは、俺が選別できる。だが、飲料水はある程度の量を確保しておくべきだな。ホエールを使えば、かなりの量の物資を運べるが……。傷みが出るものは長く維持出来ない。……やっぱり、ここを拠点に、しばらく準備をするべきか……)


 ジジッと、脳内に無線音がする。


「こちら、真壁」

「おう、どうした?」

「えっと……、守さんにも見えるかな? 二時の方向に岩肌が見えて、そこに洞窟っぽいのが見えるんです」

「ああ、あるな」

「なんか、そこから嫌な感じがします」

「嫌なじゃわからん」

「イノシシと同じ感じです。……なんとなく、脅威みたいな?」

「距離は?」

「拠点から四キロぐらいです」

「了解」

「なんでしょう? 異世界ですから、ダンジョンとかですかね?」

「それ、無線でする話?」

「あ〜、そうですね。戻ったら説明します。真壁アウト」

「はい、はい」


 若桐は、一つ息を吐いた。



V1:離陸決心速度。まだ滑走路内で安全に止まれる速度。

VR:機首上げ速度。前輪を地面から放せる揚力が充分に発生した速度。

V2:安全離陸速度。失速せず安全に上昇が続けられる速度。

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