3-2:水
ウロの外には、石と大きな葉を組み合わせた、水桶が出来ていた。
洗面器1杯分程度の水だ。
「これ……、守さん、一人で?」
「だっておまえ、寝てたじゃん」
真壁は思わず、若桐に駆け寄った。
今までは、190センチ85キロの真壁が、全力で〝真壁ミサイル〟になって飛びつくと、毎回、若桐はフッ飛ばさそうになって受け止めてくれたが。
130センチに満たない真壁の飛びつきは、軽々と受け止められる。
「なんだよ?」
「だって……、僕が水を運ぶほうが簡単だし! 守さん一人で、夜の森の中を行くのなんて危ないし! それに、それに……」
「いや、そんな遠くまで行ってないし。俺だって、命は惜しいし」
月に一度の逢瀬は、いつだってホテルで待ち合わせるだけのもので。
デートですらない。
だがそれが、いつだって若桐が真壁のことを慮った結果だということも、知っている。
街なかでデートが出来ないのは、真壁の出世に差し障りがあるから。
寝落ちするまで抱擁した真壁を起こさず、綺麗に整えてくれるのは、しっかり眠らせるためだから。
「一人で行っちゃいやです! あの時だって、守さん、僕だけ脱出しろって言って……」
「当たり前だろ。機体を市街に落とすわけにいかんし。だからって、訓練生を巻き込むわけにもいかんし……」
「それでも……」
言い張る真壁に、若桐は困ったような笑みを向ける。
そして真壁の頭にぽんっと手を置いた。
「とりあえず、帰る方法探そうな」
「……はい……」
返事の元気がない様子から、真壁は今ひとつ納得していないようだった。




