65 対座
先日の補填としての、特例的な火曜投稿です。
明日も変わらず投稿予定です。
スティベンに連れられて、リョウとガオは建物の中に入る。
位置からすると、託児所がある建物と同一のものだろうと思いながらリョウが進んでいると、一つの扉の前でスティベンは立ち止まった。
「入れ」
そう言って、スティベンは扉を開ける。
促されるままに扉の先に進んだ二人を待ち受けていたのは、チンハオとシャオユー、そしてカイの三人の姿だった。
カイは、その決して広くない部屋の真ん中に置かれた低いテーブルに対し、扉側に座っていた。
扉側から見えるのは背中だけだったが、その後ろ姿と、共に部屋の中にいる人物を見れば、リョウにはそれがカイだとすぐに分かった。
普段と違うのは、猫背な彼が背筋を伸ばしていることだろうか。
そのカイと向き合う位置に座っているのが、カイから見るといとこおじにあたるチンハオで、彼は渋い表情でカイを見つめている。
カイの母であるシャオユーは、チンハオの後ろで所在なく佇んでいた。
(まるで取り調べの構図だな)
リョウの数歩先を歩いていたため、扉から中を覗くのが一瞬早かったガオは、室内のどんよりと落ち込んだ空気に怯んで、廊下との境目の所で立ち尽くしていた。
ガオの脇を通り抜けるような形で部屋の中に入ったリョウは、部屋の中を確認した後、一度後ろを振り返るが、スティベンは特に部屋の中に入ろうとはしなかった。
リョウが再び部屋の中に視線を移すと、体を捻って見上げるようにしているカイと目が合う。
「リョウ、ガオ......?」
カイは、訪問者を吟味するように、繰り返し顔を上下させた。
その視線は、やがて低い高さに固定される。
「足、大丈夫か?」
その言葉に釣られてリョウが自分の足に視線を落とすと、確かに生傷が目につく。
森の中を歩いてきた時に自然とついた擦り傷や切り傷だろう、ガオの足にも同様の傷が見られた。
「特に何ともないけど、言われてみれば少しヒリヒリするかもな」
カイの言葉を受けたのはガオだった。
久しぶりに言葉を発したことで緊張の糸が解けたのか、流れで履き物を脱ぎ、部屋の中央へと入っていく。
(入れって言われたから、間違いではないよな......?)
リョウもそれに続いてガオの反対側に進み、一人の兵士と三人の子供がスクエアテーブルの各辺に座る構図になった。
スティベンは一度も部屋に入ることなく、
「しばらく任せるぞ」
とだけ言うと、開きっぱなしだった扉を閉めてしまった。
すぐに足音が遠ざかっていく。
一連の流れを呆気に取られたように眺めていた室内の大人二人は、顔を見合わせる。
「とりあえず、お菓子でも持ってくる......?」
シャオユーの問いかけに、チンハオは鼻頭を摘むようにして顔を顰めてみせて、渋々と言った具合に、
「ああ、お願いするよ。
ついでにスティベンがまだ捕まるようなら、事情を軽く聞いておいてくれ」
と答えた。
シャオユーが部屋から出ていくと、チンハオはリョウの方を向いて、
「君は、ガオ君とユイちゃんを連れて壁の外に出た。これに間違いはないかい?」
と問いかけた。
リョウが首肯すると、確認するように指を立てて、
「その作戦を立てたのは、君で間違いないね?」
と念押しの質問をする。
リョウは再び首を縦に振った。
「それじゃあ、その作戦において、カイとランはどういう役割だったのかを説明してくれるかい?」
チンハオは淡々と質問を積み重ねる。
(ランの盗みが発覚してるかどうかにもよるけど......)
リョウが心の中でそんな脚注をつけながら、
「ガオとユイがオレンジの部屋を出るとき、シャオユーさんの気を引いてもらうように頼みました」
と答えると、カイが食い気味に、
「だから言っただろ、」
と入ってくる。
チンハオは開いた右手をカイに向けて、その言葉の続きを制した。
訴えかけるようだったカイの態度とは対照的に、チンハオは落ち着いた口調のまま、リョウに向き直って発言する。
「それじゃあ、託児所に火を放ったのはカイ自身の判断ということで間違いないのかい?」
今話で初めて本編とリンクした『29.5 炎海(カイ視点)』から、物語上の時間では三日しか経っていないことになります。
ちょっと想定よりスローペースになって焦ってます。
もうすぐ半年ということにもなるので、七月中に七歳編を終えることを目標に、鋭意取り組んでいきます。
投稿頻度や一話の長さに関しての意見があれば、感想欄にお願いします。




