49 倉庫
階段の先には、木製の扉があった。
リョウの先を進む女性教師は、その扉を押して中へ入っていく。
扉の奥は薄暗く、どこか重々しい雰囲気が漂っている。
リョウは階段の中段ほどで立ち止まった。
(この先に入るのか……)
目が覚めた地下の独房と似た空気を感じ、二の足を踏むリョウに対し、半身を扉の奥に入れている教師が問いかける。
「ついてこないの?」
リョウは、その問いに何かしらの意図があるように感じ、警戒の色を見せる。
「その先には何があるんですか?」
「ただの倉庫だけど、面白いものが見られると思いますよ」
リョウは思考を巡らせる。
(面白いものってなんだ?
わざわざ自分をここに連れてきたのはそれを見せるため?
でも、僕が何かを見たって、この人のメリットにはならないよな……?)
さまざまな可能性を考えるが、合理的に判断すれば、この先には進まない方がいいように思える。
その考えと拮抗しているのは、面白いものがあるなら見てみたいという好奇心だった。
結局リョウは、ディアンと共にこの施設を訪れている以上、自分の身に危害が及ぶことはないだろうと考え、ゆっくりと階段を下りていった。
木製の扉の先には、玄関のような小部屋が設けられていた。
入って両脇の壁はコンクリートのような素材で作られており、リョウの身長と同じくらいの高さの窪みには、燭台が一対設置されている。
正面にある扉も同様の素材でできているが、その奥から光が漏れ出しており、観音開きのような構造の扉であることが一見して分かる点が異なっていた。
リョウが部屋に入ると、背後の扉を閉めるように促される。
木製の扉は見た目以上に重く、完全に閉めるには体重をかけて両手で押し込む必要があった。
扉を閉めきると、部屋の空気が改めて異質なものとして感じられる。
厳重な二重扉と、その先から漏れ出す光の組み合わせに、リョウの胸は高鳴る。
先ほどまで抱いていた不安は、すでに頭の中から消え去っていた。
教師がかんぬきを外し、奥の扉を両手で押す。
引きずるような音から、その扉が木製のものよりもはるかに重いことが伝わってくる。
細く漏れていた光は徐々に幅を広げ、やがて奥の空間全体を露わにした。
眩しさに思わず目を細めるリョウ。
ゆっくりと目を慣らしながら、中の様子を見ていく。
倉庫はそれほど広くないらしく、教師はすでに奥まで進み、リョウを手招きしていた。
進むにつれて、先ほどから感じていた異質な空気がさらに濃くなっていく。
光源は明らかだった。
部屋の両脇に並べられた棚には、色とりどりに発光する鉱石が整然と並べられている。
赤、緑、紫といった多様な光が重なり合い、全体としては白い光となって室内を照らしていた。
教師が指し示していた場所には、サッサランのボールが入ったカゴが置かれている。
「あまり開けっぱなしにするのも良くないから、ボールを取ったらすぐに出ますよ」
急かされるようにして、リョウはボールを手に取る。
扉の中の光景を目に焼き付けながら、倉庫を後にした。
外に出ると、重い扉が閉められ、再びかんぬきが掛けられる。
「何か、感じたことはある?」
女性教師が向き直り、リョウに問いかけた。
リョウには、光る鉱石や倉庫の構造の正体は分からない。
それでも、「面白いもの」を見たのだろうという実感だけは、はっきりと胸に残っていた。




