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48 探意

サッサランの試合が終わると、各々が自由に話し合ったり、教師からボールを受け取ってキャッチボールをしたりしていた。


リョウは、ヌルールに普段の戦術や定石について聞いていた。


「じゃあ、そんなに近づかずに、パスを見てからボールを奪おうとすることが多いんですね」


「うん。でも、リョウもガオくんも守りに積極的で、それが上手くいってたから、今後はそうなるかもしれない。

シトナもアグースも、全然普段通りできてなかったし……ん?」


ヌルールの肩が後ろから叩かれる。


ヌルールが体を捻って振り返ると、その影に隠れていた女子の姿がリョウの目に入った。


(たしか、アユさん……だよな?)


焦茶色の髪を短く切り揃えた、リョウと同じくらいの背丈の少女は、試合中、鋭く曲がるパスを何度も見せていた。


リョウは最初の数回、その軌道についていけず、キャッチミスから相手にボールを渡してしまう場面があったのだった。


アユは、ヌルールに何かを語りかけている。


言語の特徴なのか、彼女個人の話し方なのかは分からないが、必死に訴えかけているように見えた。


リョウが所在なさげに周囲を見渡すと、ガオがチームメイトの男子たちとゴールを登ろうとしている様子が目に入る。


ゴールのポールを登ることについては教師の許可が出たようで、長髪の男性教師が近くで腕を組んで見守っていた。


「リョウ!」


ヌルールに呼ばれ、視線を戻すと、アユが睨むようにこちらを見ている。


「し、試合中、あまりパスを取れなくてごめんなさい!」


反射的にリョウは頭を下げた。


顔を上げると、ヌルールとアユの二人は、不思議そうな顔でリョウを見つめていた。


思い出したように、ヌルールはアユにフータンの言葉で何かを伝える。


短い言葉のやり取りの後、ヌルールがケメルデ語で話し始めた。


「それに関しては、試合中のことだから気にしていないって。それより、最後にシトナからボールを奪った技について教えてほしい、だって」


リョウは納得したと同時に、アユについて誤解していたことを悟った。


「ああ、なるほど、安心しました。

そうですね……説明するので、ボールを貰ってきてもいいですか?」


「えっ、いいの?」


ヌルールは少し驚いた様子を見せる。

肯定的な反応が返ってくると思っていなかったようだ。


「ボールは自分が取ってくるから、ここで話して待っていてください」


ヌルールの提案に、リョウは異議を唱える。


「いや、二人で残っても何も話せないので……」


「確かに」


少し歩き始めていたヌルールは振り返り、進行方向にいる女性教師を指し示して言った。


「あの先生からボールを貰えると思うので、お願いします」




「何かあった?」


女性教師がリョウに尋ねる。


リョウは、目の前の人物が当然のようにケメルデ語を話していることに、少し驚きと感慨の入り混じった感情を覚えながら、ボールを貸してほしい旨を伝えた。


「ボールは新しく取りに行かないとありません。

取りに行くので、ついてきてください」


女性教師はそう言うと、少し声を張り、十数メートル離れたゴールのそばにいる男性教師に何かを伝えた。


男性教師が頷くと、女性教師は歩き出す。


リョウは同行する必要性に少し疑問を覚えつつも、その後を追った。




「ケメルデでは魔法を習っているの?」


建物の中に入ったところで、女性がリョウに尋ねる。


「本当に最近ですけど、親に魔法についての本を買ってもらいました」


(ガイさんのことは伏せた方がいいのかな?

一応、兵士団の仮想敵にフータンの人たちも含まれているかもしれないし。

でも、ディアンさんの本が出版されているということは、交流がある人たちもいるんだろうな)


リョウは、国の運営や外交、経済について学んでこなかった自分を少し悔やんだ。


これまでのリョウは、託児所での遊びの考察や、この世界そのものの観察が中心で、ケメルデという国家単位での理解にはあまり意識が向いていなかった。


振り返れば、父が兵士、母が吏僚という環境は、国家観を学ぶにはこれ以上ないものだった。


それでもリョウは、教師としてではなく両親として彼らと接してきたのだった。


リョウが考え込む一方で、女性も少し思案する様子を見せる。


「そうですか……。

リョウくんがさっき使ったような魔法を使える人は、結構いるの?」


リョウは質問の意図を測りかねる。


こういうときの答えは決まっている。


「分かりません。どうして知りたいんですか?」


リョウは、子供であることを活かし、無邪気に問い返した。


「うーん、秘密にします。

ボールがある場所はこの下です。

危ないので、滑らないようにしてください」


地下室へと続く階段は勾配が急で、両脇に設置された手すりも頼りなく見えた。

この話の投稿日は四月一日になるということで、この物語を投稿し始めてから三ヶ月が経過したことになります。

上場企業であれば四半期決算を行う必要がありますので、私個人のこの活動に関する簡単なご報告を読者の皆様にさせていただきます。

結論から申し上げると、この執筆活動はとても楽しいです。当然ながら、自分は読者として小説に触れ合ってきた期間の方が長いわけですが、自分の書きたいことや面白いと思うものを表現するために試行錯誤することがこんなに楽しいことだとは思いませんでした。「この物語、この部分の設定に粗があるなあ......」「この登場人物の行動は不自然だなあ......」と思うことがある皆様、ぜひ自身で物語を書いてみてください。おすすめします。

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