8.大商人の息子、イエンセ=ザンペリーニ様は攻略を妨害しませんわ
あれから1週間以上が経ちました。
カフェも開店しました。
丁度この時間が休みになったので、こうしてゆっくりお茶をしながら予習していますの。
カフェを作って良かったわ。
婚約の解消は上手く行ってないようです。
『王子が浮気をしたのでそちらの引責で解消』と言っているのに、『そっちが解消したいなら、慰謝料に全財産よこせ』は難癖にしても頭が悪すぎますわ。
もともとうちの財産を国庫の予算に組み込みたいだけですから、王子が女生徒全部集めてハーレム作っても、若い時の過ちで済ませようと言うスタンスの様ですわ。
攻略者の妨害も、一通り動いたので、今は経過を待っている所。それぞれ効果がでてくると良いわね。
6番目の攻略者、大商人の息子ことイエンセ=ザンペリーニ様は妨害する必要が無いのですよね。
イエンセが断罪ステージに登場すると、結婚が王国中で祝福され、結婚の祝いが3日3番続くの。
私への影響はありませんわ。
だから妨害しないのだけれど、ルートだけ把握しておこうかしら。
イエンセ様は、国一番と言われるザンペリーニ商会の息子ですわ。商機がある所には神出鬼没。どこにでも現れ、楽しい会話が魅力の攻略対象ですわ。
イエンセ様との出会いはここ、中央広場でしたわ。
中央広場で悩んでいたイエンセ様に、ミリアナ嬢が声をかけたのが始まりでした。
ここに店を持ちたいものの何の店を建てるか悩んでいたイエンセ様に、カフェを建てたらどうかとミリアナ嬢が提案しまして、イエンセ様がそれを受け入れたのです。
その後も会うたびに会話を楽しんだり相談に乗ったりしているうちに、友人から立場が変わり、最後にイエンセ様がプロポーズするのが流れです。
ゲーム攻略の流れは、ここ中央広場に一人で来ると、イエンセ様が(ごく低確率で)出現し、攻略開始です。
学園内いろいろな場所で会って(全てランダムイベント扱い)会話をして愛情度を上げていきます。
二人の仲が進展していくと、カフェが立派になっていき最後にはプロポーズイベントが起きて攻略完了です。
こうやって見ると、ウルリケ皇子イベントと似てますわね。
やっていると、別物のイメージがあるのですけれど。
妨害しなくてすんで助かりましたわ。
実はここにカフェを建てたのは、イエンセ様のカフェへの意趣返しでしたのよね。
ある程度カフェが出来て時間が経って、カフェが一定以上に進歩すると、私イザベルとその取り巻きは使用禁止になり、ミリアナ専用のテーブルが出来ますの。
それが癪なので、前もってここにカフェを建てて専用テーブルを作らせましたの。
もちろんミリアナ嬢のアドバイスは全て取り入れ済み。
横で同じカフェを出されても平気ですわよ。
「(ダンッ!)やっとみつけたぜ!」
目の前のテーブルに拳を叩きつけた方がいますわ。
しかもたった今考えていたイエンセ様。偶然ね。
「私は、逃げも隠れもしていませんわよ。」
ええ、堂々と過ごしておりますわ。
「いつも取り巻きの群れの中だろ。話しかけもできねえ。」
なるほど、見知らぬ男性が私に話をしようとすれば、周りの子たちが黙っていないわね。
「それで、何か用かしら?」
「よくもここに店を建てたな。」
あら、恨みでも?
「建ててはいけませんでしたこと?」
「ここには、俺が店を建てる予定だったんだ。」
ゲームでは建てたがっていましたわね。
「どんな店を建てる予定でしたの?」
「まだ決まってなかった。」
あら、悔しそうなお顔。
「手付か何か、払っておりましたの?」
「いや、何も。」
ぐぬぬってこんな表情かしら。
「学園の方に予約でも入れておりましたの?」
「何にもしてねえよっ(ダンッ)」
机を叩くのはお行儀が悪くてよ。
「それで私に文句をつけられても、困りますわ。」
「それはそうかもしれないが。」
あら、机にへばりついてしまいましたわ。
お顔も机にくっついていますし。最終形態かしら。
「これ以上こちらで休むのでしたら、対価を払われたらいかがかしら。」
机からはがれて飲み物を買いに行きましたわね。
やはり商人ですから、対価を払わずに机を使ったりはしませんのね。
飲み物を手に持って、そのままこちらにきて座りましたわ。
また机にへばりついてますので、気にせず予習をしましょう。
「おい。」
あら、いつの間にか復活してましたのね。お顔がこちらを向いてますわ。
「何か?」
「それ、植物紙だよな。」
私の手元のノートを指してます。
「ええ、植物紙ですわ。」
「お嬢様だろ、なんで羊皮紙じゃないんだ。」
この世界、正規の文書は羊皮紙にインクが常識ですものね。
植物紙は、羊皮紙の買えない庶民のものと言われていますし。
「こちらの方が薄くて軽くてまとめ易いからですわ。」
「保ちが悪いだろ。」
耐久性は植物紙より羊皮紙が良いのは分かっていますが。
「学園の授業の予習に保存性は必要ありませんわ。」
「羊皮紙以外認めない先生もいるだろ。」
「そういう先生の授業では羊皮紙を使っていますわ。」
先生に喧嘩を売る気は有りませんわよ。
「なるほど、紙にすじが入っているのはなんでだ。」
「文字が書きやすいんですのよ。ほら、上下に歪まないでしょう?」
ノートに書いてある文を見せます。罫線便利ですわよ。
「真ん中でまとめてあるのはなんでだ。」
「真ん中で折ると倍の枚数になるからですわ。それに端の一部だけだと破れたりずれたりして困るでしょう。」
本に製本しやすいって、どうやって説明するか分かりませんし。
「そうか、それ、売っていいか?」
流石商人、商品は逃さないのね。
「売り上げの5割をくれればいいですわよ。」
「アルフィオーネ侯爵家のお嬢様がそんな庶民臭い事言っていいのかい?」
良いのよ、海外に持っていく資産は多いほどね。
「ザンペリーニ大商会の息子が商品アイデアをタダで使う気なの? 5割。」
「お嬢様だね桁が違うぜ。1%。」
お嬢様扱いですわね。
「そっちこそ、これはただの紙の束ではなく、書きやすさにもまとめ易さにも配慮しているのよ、4割。」
「発想が良いのは認めるが、その割合は、売り上げではなく純利益じゃないか2%。」
しかめっ面ですが、大人にあやされてる気分ですわ。
「必要経費を決めるのにまたもめるじゃない、売り上げの3割。」
「だからってその割合は贅沢品相場だろお嬢様。3%。」
お嬢様呼びが変わりませんわね。
「別に文具でも良いじゃない? 2割5分。」
「だからその値段じゃ庶民に売れないだろ! 4%」
ああそういうこと。
「じゃあ、庶民が買える値段で売って下さいな。5%」
「おうよ。5%。ちゃんと売ってやるぜ。」
そのままイエンセ様は手を差し出してきましたので、握手しました。
商談成立ですわ。
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