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記憶が戻ったら、断罪が確定していました。婚約破棄は受け入れますから重労働や死罪は勘弁して下さい  作者: 九幻琴


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23.とうとう卒業パーティですわ(苛め追及編)

 「アレクサンドル殿下、婚約も無事解消されましたので、これにて失礼いたします。」


 お兄様が見事なボウアンドスクレープを披露して、退去の挨拶を致しました。私も倣ってカーテシーを致しますわ。


 「そうか、退室を許……ではない! イザベルがミリアナにした苛めの件が残っている!」


 これで退室出来ていたら終わりでしたのに。そう簡単には行きませんわね。


 「苛めですか。ちゃんと事前の精査は済んでいるんでしょうね。この前の様に、苛めの実行者たちがイザベルの名前を出したと言うだけで、イザベルが首班と言うようなお粗末な決めつけは冤罪の温床です。まず「今回は大丈夫だ」……聞かせていただきましょう。」


 お兄様の話の途中でアレクサンドル殿下が話を遮りました。なんとなく慌てていましたが何が有ったのでしょう。側近の皆様も心なしかほっとしています。


 「今回は自白の信ぴょう性を疑わなくて良い様、イザベル自身がミリアナに手を下した苛めを扱う。」


 「ほう、イザベル自身が苛めた……と?」


 お兄様が私の方を見ます。私は静かに首を横に振ります。私はやっていませんから。


 「では詳しく伺いましょう。」


 お兄様が眼鏡をクイッと直しながら言いました。

 どのような苛めなのでしょう、不安です。周りの方々も聞いているのかとても静かです。


 「よかろう。苛めは二つだ。まず一つはミリアナを噴水に突き飛ばした件だ。」


 え?噴水は突き飛ばさないよう無くしましたが。


 「噴水にですか?」


 お兄様も聞き返しています。


 「そうだ。冬も寒い時期にイザベルは、ミリアナを噴水に突き飛ばしてずぶ濡れにした。」


 冬にですか?


 「おかしいですね、噴水は秋に撤去されています。冬に突き飛ばすことは出来ません。」


 周りの方々もお兄様の言葉に頷いています。冬に噴水は有りませんでしたから。


 「な、なら秋だ。秋に突き飛ばしたんだろう。」


 「唐突に辻褄を合わせないで下さい。日時がそんなに不確かでは、他の面でも信ぴょう性が有りません。」


 お兄様の言葉に周りの方々だけでなく、ウルリケ皇子まで頷いています。



 「それならもう一つのほうだ。ミリアナを大階段から突き飛ばした。」


 え? こちらは階段を無くしましたが。


 この二つだと、ミリアナ嬢がゲームの苛めをそのままアレクサンドル殿下に話し、アレクサンドル殿下が何も考えずに素直に信じた事になりそうです。


 「いつですか?」


 「1週間前の放課後だ。」


 ゲームだとそうですよね。ゲームなら正解です。


 「大階段の場所は秋から立ち入り禁止ですが。」


 実際にはそうなっています。周りの方々も頷いています。


 「呼び出されたから行ったのだ。」


 「立ち入り禁止の障害物を乗り越えてですか?」


 「そうだ。」


 あの2m以上ある壁を乗り越えるのは大変ですよ?


 「態々着替えてですか。」


 「なんでだ? 制服でも乗り越えられるだろう?」


 「制服で乗り越えたんですか。」


 「まぁ。」

 「おお!」

 「え?」

 「見たかった!」


 外野がざわざわしています。

 ……と言うのも私達女生徒の制服は割とふわっとしたフレアスカートなのです。そんな恰好で2mの壁を乗り越えれば……まあ……ちょっと恥ずかしい事になると……

 あ、ミリアナ嬢が真っ赤になっています。

 


 「そこまでしなくても良いと思いますが。」


 「だが呼び出したのはイザベルの方だろう。」


 お兄様がちらっとこちらを見たので、首を横に振っておきます。


 「呼び出していないようですが。それはそれとして、今の大階段の状態を誰か知っていますか?」


 お兄様が周りの生徒に聞きます。ですが皆、首を横に振ったり、手でバツを作ったり知っている人はいない様です。


 「困りましたね、これでは大階段の存在すら証明できない。」


 「何を訳の分からんことを、大階段は有るだろう?」


 「大改修を目的として、すでに4か月以上立ち入り禁止になっているのです。既に階段を壊して新しく作り始めていてもおかしくありません。」


 「何を言う! ミリアナが突き落とされたと言うのだ。今も大階段は有る!」


 周りは少しざわざわしています。立ち入り禁止にして4か月。何もしていないと思う方がおかしいです。 


 「では、有ったと仮定して、大階段から突き落とされて無事だったと。」


 「無事ではない。足を挫いていた。」


 「挫いて。それでどうやって帰ったのですか?」


 「どうやって帰ったとは? 挫いた足をかばいながら薔薇の迷宮へ来たのだ。」


 「立ち入り禁止の障害物を乗り越えてですか?」


 「な、なんとか乗り越えられたのだ!」


 2mの壁を挫いた足で乗り越えるのは限りなく無理だと思いますけれど。

 ほら、後ろの方々もざわざわが大きくなっていますわ。 


 「つまり、今までの言葉を纏めますと、何者かに呼び出され、疑問に思うことも無く「疑問に思っていても向かったのだ。ミリアナは素直な女性だからな。」……疑問に思っていても呼び出されたのだからと立ち入り禁止の障害物を制服で乗り越え、大階段の上に行った「上とは言ってないぞ。」下では突き落とされませんが、「では上で。」……大階段の上に行った所、イザベルに突き落とされ、足を挫いたまま、立ち入り禁止の障害物を乗り越えて、薔薇の迷宮に行ったと言うのがアレクサンドル殿下及びラング嬢の言い分と「言い分ではない事実あったことだ。」


 お兄様はため息をつきました。これだけ話を遮られれば嫌にもなるでしょう。


 「事実と言うなら目撃した証人を連れてきてください。もちろんアレクサンドル殿下やラング嬢と関係のない第3者で、アレクサンドル殿下が命じたり、金品などで懐柔したり、因果を含めたりして無い者です。」


 「私が見た。薔薇の迷宮で休んでいたところ、足を挫いたミリアナがやって来て、大階段でイザベルに突き落とされたと言ったのだ。」


 たった今お兄様が言った事聞いてましたか?


 「殿下は関係者です。証人にはなりえません。それに殿下の証言では、1週間前に足を挫いて薔薇の迷宮に来た事の証明だけです。その前に大階段にいたことの証明にすらなっていません。」


 「では、どんな証言がいるのだ。大階段上にミリアナがいたという証言か?」


 「それでは足りません。1週間前の放課後に、大階段上で、ラング嬢がイザベルに突き落とされる所を目撃した証人を連れてくることが虐めの最低限の証明になります。

 アレクサンドル殿下の言い分全てを証明しようとするなら、それに加えて、イザベルがラング嬢を呼び出したという手紙もしくはその写しを1枚。

 1週間前の放課後に、ラング嬢が立ち入り禁止区域の障害を乗り越えて大階段に向かう所を目撃した証人。

 挫いた足で、大階段から立ち入り禁止区域の障害を乗り越えて出てくる所を目撃した証人。

 挫いた足で、大階段付近から、薔薇の迷宮に行ったところを目撃した証人の3名を連れてきてください。」


 「なるほど、側近のうち4人にそれぞれの証言をするように命じれば良いのだな。」


 すがすがしい証拠捏造の発言を頂きました。

 

 「ですから、側近はあなたの関係者なので第3者になりませんし、命じて証言する者では証人になりません。本当に見た人を連れてきてください。」


 お兄様の頭が痛そうです。そしてアレクサンドル殿下の側近たちは大きなため息をついています。まさかこのやり取りがいつもじゃありませんわよね。

 周りの人やウルリケ皇子は信じられない者を見たと言う顔をしています。


 「わかった。この中で、1週間前の放課後に、大階段でイザベルがミリアナを突き落とす所を見ていたものはおらぬか!」


 誰も申し出ません。実際突き落としていないので当然なのですが。というか、断罪会場で目撃者を探しますか?


 「なぜ誰も申し出ない!誰か出ろ!」


 「ですから、見てない者に命令して証言を得ても証人にはなりません。」


 偽証者が出来るだけです。


 「ではどうすれば良いのだ?」


 「誰も見ていないと言う事を納得するのです。」


 「誰も見ていない?」


 「そうです。誰も見ていない。つまりイザベルがラング嬢を突き落とした証明は出来ないと。」

 

 お兄様が子供を諭している様です。


 「証明が出来ない?」


 「ええ、イザベルがラング嬢を虐めたことは証明できない。つまり事実があったと言えないと言う事です。」


 「何故だ!イザベルがミリアナを虐めたのに、虐めていないと言うのか。」


 「ですから虐めたと言いたいのでしたら、まず見たという人間を探して、見つけてから公言してください!」


 「見つからなければ?」


 「言ってはいけないのです。」


 「だがイザベルはミリアナを虐めたのだ!だから国外追放とする。」


 「だから証拠もないのに罰を与えてはいけないと……では国外に出る為御前を失礼します。」


 「分かった。退去を許す。」



 お兄様が諭すのをやめてこの場から逃げる方向に切り替えた様です。

 気が変わってアレクサンドル殿下が私達を捕縛しようとする前に、速やかにこの場から脱出します。



 パーティ中に失礼に当たらない最速で出口まで早歩きです。



 何故か皆様が邪魔にならないように位置取って下さいます。皆さまなんとなく好意的ですわね……と思っていましたら、イエンセ様が後方で親指を立てていらっしゃいました。

 そういう事ですのね、私もこそっと親指を立て返します。イエンセ様、攻略妨害しなくても良いなんて思ってごめんなさい。貴方が一番攻略されなくて助かった方ですわ。




 少し行った所に、ヒルダとマイケルが寄り添っていました。今日のヒルダはドレスです。ほっそりしたドレスが似合いますわね、寄り添った二人もお似合いですわ。

 二人でこちらに手を振っていましたので振り返しました。そのまま幸せになって下さいね。




 お昼のお友達の皆さんは、それぞれのパートナーと一緒に、あちこちに小さな塊を作っています。

 こちらを見ている方が多いのですけれど、時々おしゃべりに夢中になってる方もいますわ。あの方々らしいですわね。




 入口の少し手前にラブース嬢が紫の長髪の方と一緒に立っていました。

 その方が妖精の森の方なのですね、一度ゆっくりとお話してみたかったのですわ。

 軽くこちらにあいさつをしてくださいましたので、挨拶をし返します。二人も仲睦まじそうです。攻略妨害をお願いして良かったですわ。






 門をでて、乗ってきた馬車に揺られてパーティ会場を脱出しました。やっとあの断罪劇が終わったのだと実感します。

 思えば、お兄様の独り舞台でしたわね、一番近くで見物させていただきました。


 「お兄様、かっこ良かったですわ。有難うございます。」


 「そうか、これからもかっこ良かったと思ってもらえるように精進しましょう。」


 うっすらと笑みを浮かべるお兄様はやっぱり素敵です。


 「この先はカルメリア王国ですね。楽しみですわ。」


 「イザベルらしいですね。あの国で、私の実力がどれほど通じるか、力が入ります。」


 「お兄様ですから大丈夫ですわ。あれだけ準備したのです。お父様やお母様と一緒なんです何とかなりますわ。」




 ええ、ゲームは終わりました。国外追放の先で何とか生きて行きます。




お兄様、諭している最中に目的は叶えていることに気付いて撤退しました。

気付かなければ、小一時間公開説教が始まっていました。

当事者で原因である王子はともかく観客の皆様が大変だったと思います。


読んでいただき有難うございます。

もしも少しでも面白いと思っていただけましたら、

★を少しでもいただけますと、喜びます。

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