24.国外逃亡しましたわ
無事カルメリア王国へとやって来ました。
生活の基盤作りも順調にいっております。
お父様とお兄様は無事王宮の文官になりました。実力主義とは言え、亡命してきた人がすぐに王宮に登用されるとは思いませんでした。
お父様もお兄様も優秀だったのですね。
そして今日は侍女を側に控えさせて、屋外のパーラーでパイナップルティを飲んでおります。
こちらでは、フルーツジュースと紅茶を混ぜて飲む文化も、果物を器にして飲む文化も無かった様で、パイナップルの器の中に、パインジュースとアイスティを混ぜていれた物が飛ぶように売れています。
店の内装や外装を決めたり、開店の準備をしたり大変でしたけどこのお店を立ち上げた甲斐がありましたわ。
「よっ、久しぶり、相変わらずだな。」
目の前にイエンセ様が、片手にパイナップルティを持っていつもの調子で挨拶しながら立っていました。学園以来とは思えない気やすさですわね。
「久しぶりですわねイエンセ様、こちらの国へ来たついでですか。」
「いんや、イザベル嬢に会いに来たのさ。」
そのまま私の前の席に座ります。本当に、学園以来だとは思えませんわ。
「取り敢えずこれ、先月までの分な。」
イエンセ様が、宝石をこちらに渡します。
「随分と数が多いですわね。」
袋を覗き込むといつもの倍くらいの数が入っていました。質は変わらないから値段も倍かしら。
「外国でも売り始めたからな。まだまだだが、着実に数は出てるぜ。」
「まあ、さすがですわね、どれが売れ筋なんですの?」
色々ありますものね、木ペン? メタルホーク? 植物帳かしら?
「メタルバードだ。」
「えっ? 鳥の顔書いた分割高でしょう?」
「その鳥の顔が受けたんだ。おまけに文字が書けるだろ?貿易の街にはたいていある珍しい土産物を扱う店に、大体一揃い売れて、その後の補充要請もある人気商品になってるよ。」
「何が売れるか分からないものですわね。」
「そうだな。そういえば情報ありがとよ。儲かったぜ。」
あの情報信じて下さったのね。
「冗談みたいな情報を、信じて動いたあなたの実力ですわ。」
「冗談みたいな前提が、本当に起こったからな。だったら後半も信じてみるさ。」
『もしもアレクサンドル殿下とウルリケ皇子が共にバルコニーに立って、私に婚約破棄を要求したなら、フロストランド皇国がこの国に攻めてきます。』
これが送った情報です。ウルリケ皇子はイエンセ様以外の人と同時に攻略すると、ミリアナ嬢を手に入れるためにオルトアーノ王国に攻め込んでくるのですわ。
「婚約破棄じゃなくて婚約解消だったけどな。お前の兄貴が言い負かさなきゃ婚約破棄を言い出してそうな雰囲気だったからな。」
「言っていたでしょうね。お兄様が上手くまとめてくれて、助かりましたわ。」
「あれはさすがだったな。さすが『50年に一人の神童』だよ。」
そんな二つ名が有りましたのね、知りませんでしたわ。
「思ったよりあっさり終わったがな。騎士団と魔術師たちがフロストランドの兵をあっさり追い払ったぜ。」
塔の魔法使いも、騎士団長の息子も攻略されていませんでしたからね。攻略されていた人によって戦況は変わりますが、この二人が攻略されてなければ跳ね返せます。
「ただ、戦費の使い過ぎか何かで、戦後税金が跳ね上がったんでね、しばらくあの国には近づかない。」
わが家の金を搾り取れなかったからですわね、どうせ後から名目をつけて没収しようとしたのでしょうが、お父様とお母様とお兄様の3人がかりで資産を外国や使用人、その他へと動かしていましたからね、合言葉は『王家にくれてやる位なら』換金できる資産はほぼなかったのでしょう。
「それで何の用でここへ?まさかアイデア料を渡しに来たわけではないのでしょう?」
「いや、それも大事な用だぜ。アイデア料を払わずに儲けるなんてありえねえだろ。他にもいろいろあるが、うん、あれだ、お前が亡命貴族になっただろ?」
「なりましたわね。」
亡命したからもう元侯爵令嬢ですわ。平民かどうかは微妙みたいですけれど。
「だからさ、身分違いじゃなくて、俺と結婚出来るだろ。」
「え?」
………………結婚?
「俺たち結婚しないか?」
「えええええぇぇぇぇ。」
「ご挨拶だな。」
イエンセ様が半目で睨んでますが、いきなりですもの、仕方ないでしょう?
「結婚相手はお父様が選んだ方とするつもりでしたから。」
侯爵家の娘ですもの。例えアレクサンドル殿下との婚約が無くなってもどなたかと政略結婚をするものだと思っていましたわ。
「この国でもそうなのか?」
「この国では……どうでしょう?」
貴族で無くなった以上政略結婚も無いのでしょうか。
「ま、親を無視できるとは思っていないからさ、親父がお前の両親の所に申し込みに行くから、前向きに考えてくれないか?」
「そうですわね、お顔も知らない方々よりも、あなたとの結婚の方が良いと思いますわ。」
結婚生活がとっても楽しそうですもの。
「それは良かった。」
にっこり笑顔です。とても嬉しそうですわね。
「なあ、こっちに来る時、職人も連れて来ただろ。何か作ってないか?」
相変わらず、良く知っていますわね。
「携帯ペンならお父様とお兄様が仕事に使っていますわ。」
「携帯ペン?」
「ええ、携帯ペンですわ。インク壺を持ち歩かずに、インクで書ける、持ち歩けるペンですの。50%でいかが?」
「50%とは大きく出たな、それだけ自信があるってことか。だが、俺が現物も見ずに金を積むほど馬鹿だとは思ってないだろ。1%」
「もちろん。私の携帯ペンと、書くための植物紙を持って来てちょうだい。」
さあ、久しぶりの値段交渉! 楽しみですわ!
~ 完 ~
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