19.お兄様に婚約解消しようとしていることを知らせましたわ
夕飯の時間ですわ。
なんとお兄様も一緒なのです。
あれから、たまには、一緒に馬車で帰ったり、食事をとったりしてくれるようになったのです。
食事も一息ついたころ、お父様が話し始めました。
「あいつら、相変わらずで話にならん。」
「父上、何かありましたか。」
お兄様がお父様に尋ねます。
「ああ、王宮の奴らだ。アレクサンドル殿下が浮気をして可愛いイザベルをないがしろにしていると言うのに、イザベルせいだとぬかして、一向に婚約解消に応じようとせん。」
「婚約解消ですか?」
お兄様、なに猫が宇宙遊泳しているような顔をしていますの? ただの婚約解消ですわよ?
「ああ、浮気も茶会をしないのもイザベルに魅力が無いせいだとか抜かして、しまいには婚約を解消したければ金を払えだ。」
「金を払えですか。」
「ああ、王家の有責がまずいと何かねじ込むかと思えば、アレクサンドル殿下の浮気はイザベルの有責だと? 婚約解消したけりゃ、家財も爵位も売り払って有り金全部よこせだと? いい加減にしろ!」
「有り金全部……」
お兄様ー大気圏外での宇宙遊泳から火星軌道辺りまでいってますわ。
「今日にいたっては、『アレクサンドル殿下に相手にしてもらえない出来損ないの令嬢など売り払って迷惑料として婚約解消の費用に上乗せしてはいかが。』だったからな。良く私が殴り掛からなかったものだ。」
「まあ、下手な冗談ですわね。」
「相変わらずですわね。」
「イザベルを売り払え……。」
あらお兄様外宇宙まで行ってますわよ。
下劣と言うか、劣悪と言うか、王子の婚約令嬢が身売りして婚約解消費用作ったらゴシップ待ったなしですわ。さすがに煽り文句ですわよね。
「シュテファン、何を驚いているの? お父さんが婚約解消で激昂するのはいつもの事でしょう? シュテファンが一緒に食べる時には無かったかしら?」
「母上、いつもと言うほど良くあることなのですか?」
お兄様、地上に戻って来られたようですね。
「そうね、ここ3、4か月はしょっちゅうですわね。」
「3、4か月も……何故新年の時にでも教えていただけなかったのですか。」
「何故って、当たり前すぎて今更話題にしてなかったからかしら?」
「イザベル。」
「なんでしょうお兄様。」
え、急に私に来ましたわ。
「お前は良いのですか?」
「何がでしょう。」
急に話を振られても分かりません。
「婚約破棄です。アレクサンドル殿下の事が好きなのでしょう?」
あ、お兄様には知らせてませんでしたわね、アレクサンドル殿下に興味が無くなったこと。
「いえ、実は綺麗さっぱり恋心が無くなりまして、今では見習い騎士達の方が素敵に見えますわ。」
見習い騎士様が訓練している所はかっこよかったのですわ。
「あらまあ、見習い騎士のどなたが素敵なの?」
「騎士なんて、剣を振ることばかりで何も考えていませんよ。」
「別に誰と言う事はなくて、訓練をしている所は皆カッコ良いですわ。」
見習い騎士達が訓練していると、誰でもとってもかっこよく見えるのですわ。
「そうなの。じゃあ勉強してる姿が格好良い方はいないかしら?」
「お兄様ですわ。」
図書館で一番かっこよい方はお兄様ですもの。
「実の兄とは結婚出来ないわねぇ。じゃあどちらでもなく良いと思う方は?」
「えっと……」
何故、イエンセ様の顔が浮かびますのかしら。
「あら、その顔はいるのね、どなた?」
「誰だ、誰なんだ。」
「誰でもありませんわ。それよりもお父様、王宮で、婚約破棄の事大声で言いあったそうですね。扉の外まで響いたそうですわよ。」
ちょっと話をそらします。
「一般用の陳情室なんかに通すからだ。侮りおって。大体婚約破棄の件がばれてまずいのはあっちだからな。こちらは構わん。
それにしても、それをお前に教えたやつは耳が早いな。大人でも未だにお前がアレクサンドル殿下を追っかけていると思って嫌味を言って来る奴もいるぞ。婚約者に成り代わりたい令嬢の親とかな。」
「あら、もう3か月はアレクサンドル殿下の所にお邪魔してませんのに、子供から聞いていませんのかしら。」
「子供の認識が変わっていないのではないかと。」
お兄様が眼鏡をクイッと直しながら、指摘します。
「そうなのですか?お兄様。」
お兄様は頷きました。
「アレクサンドル殿下の周りでは、今でもあなたは王子にまとわりつき、王子の側にいるミリアナ嬢にいじめを繰り返す悪女です。」
「まあアレクサンドル殿下ったら、幻でも見ているのかしら。」
めんどくさい幻覚ですわね。
「虐めも……ラング嬢の言ったことは出鱈目でしたが、他の事もしていないのですね。」
「はい、意味が有りませんもの。」
好きでもないアレクサンドル殿下に誰かがまとわりついているからと言って腹は立ちませんわ。
「ではあのいじめの報告は何なんでしょう。」
「あら、まだイザベルちゃんに虐めを擦り付けてる子がいるのかしら?アルフィオーネ家に泥を塗ろうなんて良い根性ね、イザベルちゃんの影では王子周りは甘くなったのかしら。今度は私の影で精査しましょう。」
「母上。」
以前、婚約解消を申し入れ始めて、私の周りの取り巻きたちを宥めた頃、私の影を使って、私の名で虐めをしている者と、私がいじめていると悪意を以て噂を流した者を調べましたの。
私の名前で虐めをしていた者たちは学園に居られなくしましたし、悪意のある噂を流した者達には、次は無いと忠告いたしました。
それで、私の周りでは虐めの噂も聞かなくなったので、そういう方々はいなくなったと思っていたのですけど、甘かった様ですわ。
「頼んだぞ。王子の周りをちょろちょろする小娘をイザベルが虐めたと噂を流すにしろ、自分のやったことをイザベルに擦り付けるにしろ、アルフィオーネ家を侮っておることに変わりはない。しっかり思い知らせろ。」
「父上。そこまでやる必要が有るのでしょうか。」
「もちろんだ、家を侮られることは有ってはならん。叩き潰せ。」
「そうですか、勉強になりました。」
これも勉強だったのですね。
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