17.お兄様にミリアナ嬢とのことを聞きましたわ
家に帰って来ると、人払いをして、そのまま部屋へこもりました。
頭の中がぐるぐるしてまとまってくれません。
なぜ、お兄様はミリアナと仲良くしていたのか。
私はお兄様に断罪されるのか。
いつから、お兄様はミリアナと仲良くしていたのか。
私は収監されるのか。
なぜ、ミリアナとお兄様はあんなところで会っていたのか。
私は死ぬのか。
ミリアナは図書室に来ていないのになぜ。
頭の中で考えがぐるぐると渦になっています。
「……影……」
ぐるぐると渦巻く疑問の一つを解くべく、影を呼び出します。
< お呼びですか >
「何故、ミリアナがお兄様に会った事を報告しなかったの?」
< イザベル様よりもシュテファン様の方が上位だからです >
< 位が上の方の情報を下の方に伝えることは許可されておりません >
「その事をなぜ私に知らせなかったの?」
< 事前にに知らせる事は許可されておりません >
「じゃあ、お兄様とミリアナはいつから会っていたの?」
< 伝えることは許可されておりません >
「そう、消えて。」
< 御意 >
ベットに横になってぐるぐると考えていました。
お兄様が上位者で有ることを忘れていました。
だから、影の報告は間違いないと慢心していました。
お兄様の情報は得られていませんでした。
なのに、情報が無い事は成功していると思い込んでいました。
二人は会ってないと誤解していました。
だから、攻略の妨害は成功していると安心していました。
よりによって一番妨害しなければならないお兄様の情報が破綻していたなんて。
お兄様が攻略されていたらどうすればよいのかしら。
あきらめて死にますの? それは嫌ですわ。
(コンコン ガチャ)「イザベル。」
「あ、お母様。」
扉を開けてお母様が入って来たようです。どうしたのでしょう。
「イザベル大丈夫? 人払いをして閉じこもったと聞いて。まあ顔がぐちゃぐちゃよ。」
お母様が、私のそばへ座りました。
「お母様……」
お母様が私の髪を撫でながら言いました。
「イザベル、私達は何が有っても味方よ。」
「お母様ぁ」
「イザベル、何が有ったの。」
「……」
「……」
お母様は、そのまま私の側にいてくださいます。
「お兄様が……」
「シュテファンが?」
「……断罪するって……」
「断罪?」
「私を断罪するって。」
涙が出てきます。
「シュテファンに言われたの?」
「いわれては無いけれど……」
「じゃあしないかもしれないわね。」
「でもミリアナ嬢を虐めたって。」
「虐めたの?」
「虐めてないわ。でも…」
「でも?」
またぐるぐるしそう。
「お兄様は信じたかも……」
「かもしれないの?」
「ミリアナ嬢に聞いていたから。」
「話を聞いていたの?」
「もっと詳しい話を聞きたいって。」
「詳しい話を聞いたの?」
「多分……」
「多分?」
「私その後の話……聞いてなくて……」
「聞いていないの?」
「……」
無言でうなずきました。
「じゃあ聞かないとね。」
「え?」
思わず起き上がっていました。
「シュテファンがどんな話を聞いたのか。聞いてどう思ったのか。イザベルを断罪したいのか。断罪してどうしたいのか。落ち込むのはそれからでも良いわ。」
「お母様……」
お母様は優しく手を握って下さいました。
「大丈夫よ、もしシュテファンが断罪したいのならば、お母様も断罪されてあげる。だから、安心してシュテファンのお話を聞いてらっしゃい。落ち込むのはそれからにしましょう。」
「お母様ぁ」
私はそのまま泣いていました。
◇◇◇◇◇
そして私は、お兄様の部屋の前に立っています。
涙の跡はお化粧で隠しました。
服も着替えました。
気合も十分です。
さて
(コンコン)「お兄様。」
(ガチャ)「イザベル、どうしました。」
お兄様が扉を開けてくださいました。
お兄様は扉の向こうにいらっしゃいます。年始のあの時と一緒ですわ。
「お兄様に伺いたいことがございますの。」
「なんですか?」
少しいぶかしげな表情をしています。心当たりがないからでしょう。
「今日のお昼過ぎに、お兄様とラング嬢が話している所に行き当たりましたの。」
「ああ、知り合いですか?」
「いえ、直接には。お兄様との会話が聞こえまして。」
「ああ、あれですか。」
納得の表情が見えます。
「お兄様は、信じられたのですか?」
あの、虐めの報告を。
「いいえ、偽りでしたね。」
やはり信じ……え?
「信じませんでしたの?」
「ええ、念のために詳細を聞いてみましたがひどい物でしたよ。虐めたと言っていた時間は、あなたが図書室で勉強していた時間でしたし、噴水に植物帳と木ペンを投げ込むなど……植物帳が売り出された時には、既に噴水は撤去された後でした。それに万一早めに入手出来たとしても、植物帳に木ペンで書かれた文字は水には流れないでしょう。」
確かにその通りです。さすが知性派攻略者。理論が筋道立っています。
が、こういうのは恋に目がくらんでスルーされるものでは?
「大体開いたことも無さそうな本をいつも抱えているだけの赤の他人の言葉と、毎日図書室でしっかり勉強している可愛い妹のどちらを信じるかなんて、明らかでしょう?」
あ、お兄様、私、可愛い妹だったんですね。また泣いてしまいそうです。
「もう夜も遅いのですから、変なことを気にせずに、もう休むことです。」
眼鏡をクイッと持ち上げてから、お兄様が頭をなでてくださいました。
「はい、おやすみなさい、お兄様。」
お兄様、私、今日はよく眠れそうです。
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