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濃霧の守り人  作者: 朝飯の秋刀魚
第三部

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第六章  盗難

 ポーリズ・プラザーのから通りを隔てた向かい側には、新たな喫茶店が開いた。そこで、最近流行っているソルテラの密林で栽植されたコーヒが飛ぶように売れている。


 イライアスはその店舗の顧客の一人になった。彼は、店のテラス席で優雅な仕草のフリをして、悠然と濃コーヒを啜って、静かに交差点の人流れを観察している。突然、誰の両手が彼の双肩に乗せた。


「お前はここにたか。バーで見かけなくて、先に署に行った思って」グレイはニヤニヤして、イライアスの背後から顔を出し、横からその表情を覗き込んだ。


「味はどう?」


「へえ。駄目、苦すぎる」イライアスは渋々残ったコーヒを飲み干し、先買ったの牛乳をがんがんと飲む。


「ええ。で、三課のサム(盗犯課)、知っている?」


「サムと呼ばれる人が多すぎる、何を言いたいなら、直接に言いなさい」


「チェ!つまんないな、お前。まあ、三課は一、二と三区の盗難事件が多発で困っている。彼はこそっりと我々五課を頼んでみたい。どう、興味はあるの?」


「グレイ、最近の越権のことで、まだ懲りないの?」


「懲りないだと?おい!死刑獄かあの子供殺しを脱獄したは俺じゃないぞ!」グレイは大声で自分の怒りと不満を示す。


「わかった、すまん、すまん。声を小さくして、お願い!」


「へん。じゃ事件を聞くの?」


「聞く、聞く」


「ケっ!」グレイは咳払いをして、事件詳細を続いて語る「賊に遭ったの家は、皆お金持ちだ。三課は使用人が絡み合ったの疑いで、監視や尋問や魔法追跡等の取り調べ方を何から何まで使った、不正の可能性が皆無」


「へえ、では、なんらかの魔法使用の痕跡はあったの?」


「それは不明。富裕層の者は術の使用は頻繁、全部の痕跡の出所を見極めるのは至極複雑で困難。でも、一応調べったが、特に不審な点はなし」


「で、被害規模は?」


「それも不明。宝石、現金などの貴重品はあんまり盗まれていない。被害者は大半家が家具や書類が移動されたことで賊が入ったと知った」


「なるほど。一般人なら、そんな被害金額なら、警察は無視るすが、貴族や豪商な違う・で、なんでお前が三課からこんな面倒臭い仕事を引き取るの?」


「そりゃイライのせいで、我等は最近署に冷遇されて、普通の自動人形暴走事件やたまにある魔物乱入とか、それで山ほどの書類。退屈でも程がる!あの事件からは三ヶ月だ、お前の解禁日だおろう」


「はいはい、わかった。で、課長には言ったか?」給仕はイライアスの」コーヒカップを取り、二人は席外して、上着を着る。


「いえ、一緒に課長を説得にしないか?」


「いや、俺が話に混ざっても、逆効果ではないか?」


「知らん、ついてきな」


「おい、引っ張りないで!」




 612室で、ミラー課長が三課のサムか貰った報告書一語一語を素早く読んむ。


「うん、この事件は我々マーナ対策課が手出しするのは筋合いがない。さらに、三課

 から正式な要請もあらず、ただ君の知人の一言で、我々が何もできない」


「でも、課長……」


「待ちたまえ。まだ続きがある。つまり、目撃者および関係者への事情聴取の過程で、五課による介入を正当化し得る根拠が確認された場合に限り、本件への本格的な捜査を認める、ということだ。理解したかね?」


 [Yes, sir!]


 彼らが事務室に出て、グレイは喜びを隠さずに「やった!」と思わず歓声を上た。


「何がやったの?まだなの根拠を見つかっていないのに?」


「おや、イライちゃん、やっとやる気出したか?」


「うるさいね。早くいきな、ここに最も近い事件現場はーエルムズワース男爵家。その家の主はベアトリス・エルムズワース夫人(Lady Beatrice Elmsworth)。どうやら、彼女は皇室の知り合いである。住所は摂政王街一二四番地」


 摂政公街はまた最近二十年、旧スラムを取り壊して建っていたの新住民街。真っ白な外壁と精密な模様をしている高級マンションが隣接して、旧大貴族の大邸宅には比べない、でも新規小貴族と豪商の間にはかなり流行っている住居である。


 摂政公通り一二四号の屋敷の扉をノックすると、応対に出たのは使用人らしき男だった。


 使用人は二人の刑事から事情を聞くと、丁寧に頭を下げた。


「申し訳ございません。主人はただいま不在でございます。たとえ警察の方であっても、主人の許しなく屋敷の中へお通しすることはできません。どうかご容赦ください」


 グレイは何を言い返しようと、イライアスは話を挟んだ「わかりました。じゃ、屋敷外苑を観察してもいいですか?」


 使用人は少し困った顔をしていたが、数秒の思考で「ご自由に、では、私はまだ仕事がりますので」と扉を閉めた。


「おい、なんでそんなことを言って!」


「あれを見て」イライアスは声を出さず、わずかに顎を上げて郵便受けを示した。


 郵便受けの投入口には、蜘蛛の巣に似た細い糸が絡みついていた。だが、その糸は朝露に濡れてもいないのに、かすかに銀色の光を返していた。


「蜘蛛の巣?それがどうした?」


「この巣が完全体の状態から、三課はこれのマーナ痕跡を検査していない、多分室内の隅々も調査したが、これも思い掴めない。グレイは、俺の探知魔法はそこそこでも、ややなんらかな『熱』を感じる。それは強いマーナの痕跡反応だろう?」


 グレイは 懐疑心を持って、郵便受けに近つく。


「『微マーナ探知』!うん、確かに。でも、それは間も無くで行い市長選挙の為に配った民意感応紙のマーナ残り滓ではないか?待って、あの感応紙はこれほどのマーナ反応を残すのか?お前はマジで何を掴んだみたい!」


「なんでそんなに驚いている?まあいい、このは課長が言われた正当理由になれる?」


「「我々の感知だけでは、少し弱いな」


 グレイは郵便受けを見下ろし、しばらく考え込んだ。


「なら、丸ごと持って帰れば――」


「やめろ」


 イライアスが即座に遮った。


「ここは貴族街だ。郵便受けを台座ごと引き抜いて歩けば、半日もしないうちに街じゅうの噂になる」


「では、どうする」


「内側の金具だけ外す。投入口と裏板だ。反応が残っているのはそこだろう」


 イライアスはまず周囲を見回した。通りの向こう、屋敷の窓、門の陰――誰かに見られていないか確認してから、懐から小さなポケットナイフを取り出す。


「見張りは?」


「今のところいない」


 そう言うと、イライアスは郵便受けの投入口から手を差し入れ、ナイフの刃先で内側を慎重に削り始めた。金属の裏面に残った微かな付着物を、封筒に落として回収していく。


「郵便受けそのものは残す。だが、痕跡は持ち帰る」


 グレイは少し残念そうに息を吐いた。


「丸ごと持っていく方が早いのに」


「早いだけだ。馬鹿でもできる」


「ひどい言い方だな」


「よし、終わった。行くぞ」


 二人が何事もなかったように立ち去ろうとした、その時だった。


「あっ!」


 振り返ると、先ほど応対した使用人が屋敷の門から飛び出してきていた。


「何をしているんですか、あなた方!」


 使用人は顔を真っ赤にしてこちらへ駆けてくる。


 イライアスは無言で歩調を速めた。


「おい、追いかけてきてるぞ」


「見れば分かる」


「だから最初から許可を取ればよかったんだ」


「許可を取ったら削らせてもらえなかっただろう」


「それはそうだな」


 後程、二人は後で正式に謝罪に来る羽目になった。




 警視庁の鑑識部は五課の業務室の隣、同じくポリス・プラザーの地下一階にある。元々、鑑識、すなわち証拠品の扱いは、は各課鑑識作業が得意者の役割で、五年前、まだ王子のオスカーが行政機構の改革で、専門家の助言で、独立の鑑識部が創立された。


「君たちの言った通り、あの郵便受けは確かにマーナ濃度が異常に高い。灯を消せ!みろう!我々果実無し者も見える方法!」


 先まで暗い部屋は、机の上に居た二つの証拠品に照らされた。一つは首都庁選挙管理局からもらった民意感応紙で、その光は夜の蛍並みの強さ;しかし、124号の郵便受けの内部から取った付着物は、部屋を充満する光線が放った。


「すごい、これを可視化するのは一体どんな仕組みだ?」


「いい質問ですね」


 鑑識課のミーナ・ベアトリス・レイモンドは、得意げに胸を張った。


「我が国の西南部に広がる湿地帯には、道標草と呼ばれる植物があります。夜になると淡く光る草でして、その発光の強さは周囲のマーナ濃度によって変化します。マーナ濃度が高いほど、光も強くなるのです」


 彼女は小瓶を軽く振った。中には、薄い琥珀色の液体が入っている。


「その仕組みを利用したのが、この試薬です。道標草の細胞内には、Aethereus luminaseアエテレウス・ルミナーゼという発光酵素が含まれています。この酵素は高濃度のマーナに触れると、わずかに発光反応を起こす。鑑識課ではそれを抽出し、保存用の溶液に混ぜて、残留マーナ検出用の試薬として使っているのです」


 ミーナは机の上に置かれた証拠品を指で示した。


「先ほどこの証拠品に吹き付けたのは、まさにその試薬です。普通の感応式世論調査紙なら、これほど強く光ることはありません。つまり、この郵便受けのサンプルには通常の調査用術式を超える術、あるいは術品と接触したし、かなり濃いマーナ反応が残っているということです」


「なるほど、面白いですね。イライアス、これで課長は……」


 グレイが話しているの途中に、曹長が困惑しきった表情で鑑識課のラボに入った。


「先、幻覚とかなんとか、誰かが……」その時に、彼は机の上にのせた郵便受けを見かけた「どうやら、幻ではないね。はあ、ツッコミする余力もない……」


「曹長、ご心配なさらず。はい、これは報告書」グレイはミーナが書かれた報告書を曹長に私た。


「これは、うん」曹長は迅速その報告書を読み取って「わかった。でも、勝手の真似をせぬように。俺が課長に言い伝える。だが、正式な許可がもらう前に、調査は中止、わかったかな」


 翌日、貴族街連続侵入事件事件は正式に三課から五課に転属。同時に、グレイは恣意的証拠品を取ったことで、反省書に書かされた。


「よし!次は他の盗難事件に遭った家の郵便受けを調べよう?」


 ピーター、サラ、そして先輩格のマイケルは、侵入被害に遭った各邸を回り、郵便受けを押収する任務を命じられた。


 家主たちはいずれも不可解そうな顔をした。無理もない。警察が来たかと思えば、盗まれた品ではなく、門柱に据えられた郵便受けを取り外すと言うのである。


 しかし、判事の署名入りの捜索令状を示されると、彼らも拒むことはできなかった。使用人たちが見守る中、郵便受けは一つずつ取り外され、証拠品として封印された。


 十二軒分の郵便受けを鑑識課が調べた結果、そのすべてから通常値を大きく超える残留マーナが検出された。


 これで、事件の見方は決まった。五課はこの連続侵入事件を、単なる盗難ではなく、魔導紙を用いた情報窃取事件として扱う方針を固めた。


「で、グレイ、賊者は一体どんな術を使えばあんな痕跡が残す?」


「うん、この事件を考えると、やっぱり感応系の術。俺ら最初の事件、あの銀行人質の件で、俺が使った蝶々、その類いのもの」


「あゝ。でも、お金持ちや偉い者の家は殆ど覗き見避けの術式が刻んでいるだろう」


「だからこそ偽民意意向紙という隠れ蓑で、家の住人がこいうものを室内に持ち込み、そして、意向紙が発動されることで、中のもの、例えあいうのー」


 グレイはイライアスの手を自分が作った偽意向紙を押し、封筒から、一匹の紙蜘蛛が敏捷に這い出って、こっそりと部屋の見えない一隅に隠れた。


「へえ。でも、紙自体は窃盗の過程で回収されたかも、が、三課の現場検査は怪しいマーナ痕跡が見つかっていない」


「へえ。でも、その紙蜘蛛が盗難の時に回収されたのだとしたら、なぜ三課の現場検査では怪しいマーナ痕跡が見つからなかったんの?」


 イライアスの問いに、グレイは試薬戸棚の下に這う紙蜘蛛を指で軽く押さえた。


「紙蜘蛛本体は回収された。残った感応痕も、数日で薄れる。しかも貴族の屋敷は毎日掃除されるし、室内には祓い除けの術式もある。微弱な痕跡なら消えて当然だ」


「なるほど。で、この仕掛けが発動成功したら?あの紙蜘蛛は盗聴し、住人の内心を読むの?」


「そこまで万能じゃない。だが、秘密の在りかを探るには十分だ。たとえば『政治献金』という設問で主人が動揺する。視線が書斎へ向く。手が机の引き出しに触れる。紙蜘蛛はその反応を拾い、屋敷の中でどの場所が重要かを覚える。まあ、もっと鮮明な例なら、うん、高地産羊ステーキ。はっ!誰かさんがステーキを食べたくなった」


 イライアスの顔が真っ赤になった「なんでわかるの?この紙直接に内心を読むのじゃないと言ったが?」

「昨夜のは寝言だって、寝言。怒るなよ。ほら、お前がこの前行った喫茶店の近くに、新しいステーキ屋ができたんだ。俺がおごるから、飯行こうぜ」


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