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濃霧の守り人  作者: 朝飯の秋刀魚
第三部

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第五章 後味

「まだ特定できないの?」


 五課の皆は全部グレイに囲まれて、八つの視線が、一斉に彼へ注がれていて、でも誰も一言も言わずに観望する。


「おい、自分のやることをしろよう、お前らの目線が俺の背中を焼く!特にイライアス!早くその手帳のコーピする、方法は教えったから」彼はもう一時間続いて、地図であの院長の追跡をする。しかし、その時、首を後ろ振った彼は作戦室の隅に立っていた課長を見ていた「もちろん。課長はご自由……」


「おい、グレイ!あの駒、一箇所に止めそう!」サラーは叫んだ。


 確かに。先まで、夜中で無規則運動をしている酔い潰れた者みたいに動いた駒、段々地図の一点の周囲に回って、最終的にある廃棄鉱山で止まって。


「また廃棄鉱山か、嫌な思いをします」ピーターは不機嫌な顔を言った。


「仕方がない、ああいう転移先は実に目立たないから。でも、はくしたいと、間も無く俺の術の感知範囲を出る」


 課長が緩めてグレイのすぐ側に歩く、平然と聞く「イライアス、コーピ作業を完成するまでどんのぐらい?」


「今は、三分の二ぐらい終わった。だから、三十分」


「よし。三十分後出発。スプリンガ、犬は用意したか?」


「はい!」マイケルは二匹の魔犬を首輪付けて、鉄籠からを出す。


 犬は古くから猟犬として狩りに用いられてきた。だが、およそ二百年前、高地を探索していた者たちによって、通常の犬とは異なる一種の魔犬が発見された。


 その魔犬は普通の犬よりも嗅覚に優れ、獲物を追う能力も、戦闘能力もはるかに高かった。しかしその一方で、気性は荒馬のように激しく、訓練するのはきわめて難しかった。


 そのため、一般の村では今も従来の猟犬が使われている。だが王室や豪商たちは、狩りの成果だけでなく、自らの地位と財力を示すため、しだいに魔犬を飼いならし、猟に用いるようになった。


 近年では警察もまた、魔犬の導入を進めている。失踪者の捜索や逃走犯の追跡において、魔犬が関わったいくつもの事件が解決に至ったためである。現在では、首都警察の一部部門で、魔犬の運用範囲をさらに広げる動きが出ている。


「こいつら、今日はやけに落ち着けないね」マイケルは必死にあちこちで足掻いている犬共の引き綱を引っ張っている。





 とある廃棄鉱山。水滴が石に落ちている音が響く、院長は起きた。


 彼女は自分の選択に凄く悔やんでいた。廃棄鉱山を転移先として選んで、出口が山崩れで塞いたことだけではない、孤児院の経費を横領して、議員に尻尾を捕まって、孤児たちを人身売買活動に無理やり参加されたことも含める。


「あゝ、これでおしまいかい?」己の定めに嘆き、彼女は再びに瞼を閉じ、命の最後の時間を安静に過ごしたいのだ。


 何時間が経過しても分からず、彼女急には薄々と振動を感じった。「またの山崩れか?これは私の終わりなの?」そいう思想は段々彼女の意識を乗っ取られ、その意識も朦朧となった。


 だが、振動よりよく強くなり、彼女の右上に石のかけらが猛烈に落ちた。院長はその急変に動かず、ただ爆破のおかげて右上の天井に現れた空を見つめていた、そのうちに一つの石塊が彼女の頭にぶつかった。


「いたぞ!まず!傷ついたようだ」を言った若き男性の声と犬の吠えを聞いた。「あゝ、これは幻いかい?」と思いつつ、彼女は気絶した。


 彼女が再び目を開けたとき、そこは病院の個室だった。左手首には手錠がかけられ、その鎖は病床の鉄枠に固定されていた。さらに手錠には、術式による補強まで施されている。


 隣の椅子に座っていた四十代の男が、手にしていた本を静かに閉じた。後ろにはグレイと曹長が不安に立っていた。


 ロジャーズはしばらく相手の顔を見つめていた。だが手錠に気づいた瞬間、その双眸に恐怖が溢れ出しそうだ。


「貴様……だ、誰だ! この手錠を外せ!」


「ミースロジャーズ(Ms.Rodgers)、私は君と二度も話た五課の者の課長だ。うちの乱暴捜査で負傷した君にお詫びを。しかし、うちの人間に煙幕弾に掛けたのこと、これで一件落着と思わないかい?」


 でも、その患者は恐怖と驚愕で無言となって、ただ課長を虚しくに睨んでいた。


「その沈黙、黙認とする。さて、君をどうするの?」


 課長は懐から小さな紙片を取り出し、彼女の前に置いた。そこには、グレイの術式が写し取った図が描かれている。


「これで君を追跡できた」課長は声を低くした。「ミス・ロジャーズ。君が黙っていれば、事件は孤児院と黒灯商会の問題として処理される。十年前のマーティンの死も、今回の子供の誘拐も、すべて君と数人の仲買人の罪になる」


「そうよ。マーティンの件も、子供たちの件も、私が関わった。けれど、私一人でできるはずがないでしょう。あの議員は――」


 その瞬間、病室の扉が乱暴に開かれた。


 一課の制服を着た警官たちが、次々と室内へ踏み込んでくる。先頭に立っていた警部は、課長を見るなり、形式ばった敬礼をした。


「五課課長殿。本件の被疑者、ロジャーズを引き取りに参りました」


 課長は椅子から立ち上がらなかった。


「ずいぶん早いな」


「議会議長室からの正式な命令です」


 警部は一通の書類を差し出した。


「白鳥孤児院事件は、十年前のマーティン殺害事件と一体の重大犯罪として、一課の管轄に戻されました。被疑者ロジャーズの身柄、および今後の取調べは、すべて一課が管理します」


 ロジャーズの顔から血の気が引いた。


「いや……待って。私はまだ――」


 一課の警官が無言で病床へ近づいた。


 課長は差し出された書類を受け取り、封蝋を見た。そこには、議会議長室の印が押されている。


「……議長名義か」


「はい。現時点で五課が身柄を引き渡せば、越権行為としては扱わない、とのことです」


 警部は淡々と言った。


「ですが、これ以後も五課が被疑者の身柄を保持し、あるいは独自に取調べを続ける場合は、管轄侵犯として正式に問題となります」


 病室の空気が凍りついた。


 グレイが何か言いかけたが、曹長が無言でその腕を押さえた。


 課長はしばらく書類を見下ろしていた。やがて、それを静かに畳む。


「なるほど。よくできた命令書だ」


「ご理解いただけたようで何よりです」


 警部の声には、かすかな勝ち誇りが混じっていた。


 ロジャーズは手錠の鎖を鳴らしながら、必死に課長を見た。


「待って……私は話す。話すから、ここに置いて。あの人たちのところへ渡さないで」


 課長は彼女を見返した。


「今さらか」


 ロジャーズの唇が震えた。


「お願い。あの議員だけじゃない。議長も――」


「それ以上は結構です」


 警部が冷たく遮った。そして、課長の耳元に耳語した「課長殿、失礼しますが、議会長から『五課は無駄のことをしないなら、今までの越権と違法活動はお咎め無しとす。さもないと』との伝言が」


 一課の警官たちが病床を取り囲み、補強術式のかかった手錠を外し始める。ロジャーズは抵抗しようとしたが、負傷した身体ではどうにもならなかった。


「待って。私は、私は全部知っているのよ。十年前のことも、子供たちのことも、金の流れも――」


 その声は、白い病室の中でかすれていった。


 課長は顔を逸らして、何も言わなかった。


 ただ、机の上に残された紙片――グレイの追跡術式の写しだけが、開け放たれた扉から吹き込む風に小さく震えていた。


 数週間後、ロジャーズ院長はマーティン殺害の教唆、児童誘拐への関与、偽装移送記録の作成、ならびに黒灯商会との取引を理由に有罪判決を受けた。


 裁判は早かった。証拠は十分にあり、彼女自身の断片的な供述もあった。新聞は「白鳥孤児院の女怪」と書き立て、議会は児童保護制度の改革を声高に叫んだ。


 だが、ケイン議員の名はどこにも出なかった。議長の名も、もちろん出なかった。


 ロジャーズは絞首刑となり、課長は上からの密令でイライアスがルークをコソコソ地下室で殺し、事件は公文書の上では解決した。


 白鳥孤児院事件。マーティン殺害事件。南埠頭における児童売買事件。

 すべては、院長と黒灯商会の罪として片づけられた。


 それでも、五課の誰一人として、事件が終わったとは思えなかった。


 名義的、事件は解決した。だが、その後味は、ひどく悪かった。



「で、これはもう無駄となったか?二度と取り戻さない人生の一時間三十分」


「知っているか?この暗号の意味?」


「うん?」


「そりゃ極めて簡単だ。その地名は載った者に関する貴族の称号に対す封地の名だ」


「というと?」


「ブラッケンウィックはケイン議員の兄の称号だ、ブラッケンウィック子爵」


「で、グレイフェンは?」


「これはちょっとややこしい。議会長の住む街は、約八十年前、当時の王弟、ロッド(Lord)・グレイフェン(伯爵)の提案と資金援助で建てられたの新住宅街」


「それは些か無理な解釈なんだろう?」


「はあ、それは言い返せない。で、その手帳は、証拠品として扱っていない以上、どう処理するの?」


「保存する。我々の失敗記念。世の中には、たまには全てのことを完璧にやらせても、いい結果を出すに限っていないだ」


「そうね」 

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