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濃霧の守り人  作者: 朝飯の秋刀魚
第三部

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第四章 密道

 翌日のニフルヘイヴンはいつも通りの曇天と戻り、早朝で霧は町を丸ごと呑み込み、通りも屋根も人影も、白い帳の向こうへ沈めていった。十歩先の街灯さえ滲ませていた。


「今日の霧は今日の霧は、さすがにひどすぎる。え、ピーターとサーラ、お前らはパートロール終わったのか?」


「ええ、今の二ヶ月の分は済ませた。あ、昨日、曹長から聞いた、捜査が躓いただと?」


「ええ、今日は孤児院に行く。俺たちについてくるのか?」


「うん、ピーターも」


 ピーターまだ朝ご飯のを齧って、何も言わずに、ただ頷いた。


 全員は徒歩で孤児院に着いた。院長はこの突然の来訪に、彼女はかすかに驚きの色を浮かべた。だが彼女は黒い手提げランタンを掲げて、すぐに平静を取り戻し、冷ややかな声で言った。


「お入りください」


 院長室で、曹長が「パッ」と一連の証拠を机に投げた。


「この溺死したの子は、実者のマーティンでは、そうだろう?そうして院長はそれを知って……」


「わかりました。認めます、偽の証言、人攫いに便利をつけるために孤児院の窓をあきのも、全部私の仕業です」


 警察たちは突如の自白にあまりにも驚いて、一瞬、話もつけず、ただ容疑者に見つめいた。


「でも、私を指図する者がいますから……」


「わかりました、残った話は署に戻って」曹長はやっと反応し切れた。


「いや、まだ証拠があります、私が持ち出します」


「構えません、その居場所を示す、我々が……」


「いえ、あれの術は私しか発動できませんので……」


「……どぞ」


 彼女はとても間も無く囹圉に陥る者には見えなくて、のこのこと腰につけたの鍵束を取り、ゆっくりと本棚に向かった。重そな、塵塗れた辞書を移動したら、その後ろの壁に未完成の術があった。


「これは私の血で書いたもの、故に、私の血しか完成できない」


 彼女は手早く左の人差し指を噛んで、指先の血で術を完成した同時に、鍵束からなんの黒い球が落ちていた。


 その球はグレイの足元に転がれ、金属と床と打つかた声を繰り替えに出した。


「あの、落とし物……」グレイはその球を拾おうとすると、その球の表面に刻んた術を見って、その刹那、彼はす状況を理解した。


「まずい」と声を上げようとしたが、もう遅かった。煙幕は一瞬で部屋を充満して、本棚は崩して、後ろに穴が現れ、院長は術で開けたその穴に飛び込み、その向こうには密道らしきものが微かに見えた。グレイはその一瞬の間に、懐から追跡の術が書いた魔導紙を彼女の背中に全力で投げった。


 ピーターは窓を開け、煙幕は消え去り、衆人は煙に刺激され、吐き気が止まらない。


「消え……た、なんか……か、かか、隠し通路が見えたか?」グレイは煙による被害は最も大きいし、彼は猛烈に喘ぎ、咳をした。


「グレイ、彼女は何をした?やっぱり、術でなんらかの仕掛けて隠し通路に通す?」サラーは一番早く冷静になって、状況を分析始めた。


「だったら、グレイさんがその密道の位置を察知し、私が壁を壊せばいいんでしょう?」


「いあ、待って、ケッケッ」煙幕に巻かれた彼はまだ激しく咳き込み、その場に膝をついた。


 すぐさまイライアスは駆け寄り、腕を肩に回して半ば抱き起こすようにして煙の薄い方へ引きずった。


「しっかりして。息を整えて」


 彼の背を何度かさすり、ときおり軽く叩く。咳が少し収まるのを待ってから、イライアスはバックのから持ち出した水筒の栓を抜き、口元へ差し出した。


「……少しずつ飲んで」


 咳が止め、少し平静になったら、グレイは立ち、壁の術をじっくりと見る。


「やっはり、これはただこの地下で穴を開けた。恐らく、他の空間と繋がる術だ」


「即ち、我々はこの壁ごと破壊しても、あの院長の行先も辿り着けないわけか?」


「その通り」


「便利な術な」


「いや、この術は、思ったままの所に瞬時て転移することのような便利なものではない、彼女はきっと、事前に向こうの場所に同じ術を描き、ある程度マーナを溜まって、そうやで二箇所を繋げることが可能」

「我々の再調査が相手を警戒したか」


「まあ、そうようだな」


 無言は空気をさらに冷たくなった。


「仕方がない、ここを犯罪現場として封鎖しよう。彼女はなんらかの証拠を残しているかもしれない」曹長はやむなく次の指示を出した。


「Yes, sir!」




 グレイは以前と同様、隠密空間を探るう役に任せた。イライアスは、曹長と一緒、新人を現場の扱いと記録方を教える。


「あった!」手袋をしていたグレイはなの隠し物を見つけた。彼は改造された床の一部をとり、小型金庫を収めるための隠し穴が掘られていた。


 曹長はこの状況を見て、現場で着いた巡査たちに「君たち、この金庫の抜き出しを手伝って」


 駆けつけた巡査たちは、穴の周囲を囲む、縄を下に伸ばそうの時「待って」グレイは叫んだ「ここには罠があるかもしれません……うん、これだ」


 この凄腕の術者は皆の目を取り、手袋が指した穴の壁に、糸があった。


「グレイ、これはなんらか術?」


「うん……いえ、特にマーナは感じとらん。ただの爆弾とかの罠かも」


「ただの。おい、爆弾を舐めるな。この戦から生き残った者が爆弾の……」


「切った、糸を」


「正気か?グレイ、お前、自殺でも、我々を道連れしないて!」


「いえ、曹長は術の強さを舐めた」彼は二指をもう一つの糸を挟み、気楽に言った「この糸の向こうこそ、爆弾と繋がった」


「いや、これこそ無謀だ。どんな些細な振動は爆弾を起爆する可能……」


 だが、グレイは気にしていない、彼はイライアスの水筒を逆さまにして中の水を出し、土に術を描くと、糸と多分その向こうの起爆装置を凍った。


「あゝ、お前も新人じゃあるまいし、なんという無茶なことを。皆、まず現場から出て、俺とピーターだけを残して、爆発する可能性はまだあるから」


 金庫がピーターの馬鹿力のおかかて穴から引き出してー決して曹長の助力が少ないというわけではなく、いろんな技術者が金庫の錠を解けと凍った爆弾を他所で爆破、中身は素朴な手帳と数十ポンドの緊急資金しかなかった。


「へい、手帳か。でも、見たところは全部意味不明な、暗号?ということか?ブラッケンウィック(Brackenwick)?グレイフェン(Greyfen)?全部地名じゃん?」曹長は適当に手帳を丸ごとめくった。


 皆はその手帳に注意を払った時に、一人の巡査が現場の部屋である院長室に報告を「ローランス曹長、只今、ケイン議員の秘書と名乗った者は門前で曹長と面会したいとおしゃいました。なお、こなん伝言があります」その巡査が両手で手紙を曹長に渡した。


 曹長がちらっと手紙を読み、顔が一瞬青い色になって、でもすぐに感情を取り戻した。少しの考え後「わかった、その秘書に『一時間後議員さんの事務室で会いましょう』と返事しろう」


「Yes, sir!」


「野郎ども、ささと済ませて、グレイトイライアスは私について、議員への面会だ」





 ケイン議員とその秘書は、約束の時刻きっかりに事務室で待っていた。


 曹長は立ったまま、白鳥孤児院から南埠頭の第七倉庫に至るまでの経緯を簡潔に報告した。誘拐された子供。黒灯商会。院長の失踪。そして、彼女の部屋から押収した手帳。


 その間、ケイン議員はほとんど口を挟まなかった。ただ、時折、薄く笑って「よろしい」とだけ言った。


 報告が終わると、議員は椅子の背にもたれ、満足げに指を組んだ。


「わかった。君らはよくやってくれた」


 その口調は穏やかだった。だが、感謝というより、予定通りに事が進んだことを確認する声だった。


「正直に言えば、わしはこの事件が解決されることを、最初からそこまで期待していたわけではない。ただ、一課の連中のあの開き直った態度が気に入らなかっただけだ。事件を古い記録の底に沈め、都合の悪いものは見なかったことにする。まったく、度し難い連中だ」


 そこで議員は、傍らに控えていた秘書へ目を向けた。


「ジェローム。例のものを」


 秘書は無言でうなずき、奥の棚から小さな革袋を持ってきた。机の上に置かれた拍子に袋の口がわずかに開き、中から十ポンド紙幣の端が数枚、滑り出して机に落ちた。


 グレイは思わず眉をひそめた。


「あの、これは……」


「何、君らの調査が警察の務めであることは承知している」


 ケイン議員は笑った。


「だが、これはわしからのささやかな謝礼だと思いたまえ。受け取っておくといい。代わりに、あの手帳をこちらへ預けてもらえれば、それで十分だ」


 部屋の空気が、わずかに重くなった。


「手帳を……?」


「そうだ。あれは君らが持つには少々厄介な品だ。余計な名前、余計な日付、余計な金の流れが多すぎる。警察の若い諸君には荷が重かろう」


 議員は指先で机を軽く叩いた。


「君らの任務はここまでだ。あの院長についても、これ以上追う必要はない。彼女はこちらでどうにかする。君らは一課の鼻を明かし、古い事件に新しい光を当てた。それで十分だ。めでたし、めでたし、というわけだ」


「何をおっしゃって――」


 グレイが一歩前へ出かけた瞬間、曹長の手が横から伸びた。手袋をはめた掌が、彼の口を無造作に塞ぐ。

 

 曹長は何事もなかったように、議員へ頭を下げた。


「かしこまりました、ケイン議員。ただ、これほどの品を私どもだけで処理するわけにはまいりません。あの手帳はすでに証拠品として保管庫に入っております。正式な手続きを踏まずに持ち出すのは、少々不都合がございます」


「不都合?」


「はい。ですが、三時間ほどいただければ、こちらで都合をつけます」


 ケイン議員はしばらく曹長を見つめていた。


 やがて、口元だけで笑う。


「よろしい。わしも間もなく本会議に出ねばならん。三時間後、ここへ戻ってきたまえ。手帳を持ってな」


 その声には、もはや礼儀正しい響きはなかった。


「わしの忍耐を試さぬことだ」


 秘書のジェロームは苛立たしげに唇の前へ指を立てた。余計な口をきくな、という仕草だった。


 曹長は再び頭を下げ、グレイの腕をつかんだまま、部屋を出た。


 議事堂三階の廊下は、本会議場へ急ぐ議員たちで慌ただしかった。書類を抱えた秘書官、黒衣の事務員、足早にすれ違う貴族議員たち。その流れとは逆に、曹長は迷いなく廊下を進んでいく。


 グレイはようやく腕を振りほどいた。


「なぜ黙っていたんです。あの男、今、明らかに――」


「これを読め」


 曹長は懐から一通の封書を取り出し、グレイに押しつけた。


 それは、先ほど白鳥孤児院で受け取ったものだった。封蝋には、ケイン家の紋章が押されている。


 グレイは封を切り、中の紙片に目を落とした。そこには、短くこう書かれていた。


 ――死刑獄での小細工は承知している。直ちに私の事務室へ来たまえ。

 グレイの顔から血の気が引いた。


「まさか……我々はずっと監視されていたんですか」


「少なくとも、死刑獄で何があったかを知る目はあった」


 曹長は歩調を緩めずに答えた。


「だが、それだけじゃない。あの議員は事件を解かせたかったわけじゃない。院長を探させたかったんだ。問題は、どうやって我々が先に彼女を見つけるかだ」


「院長を……? たしかに、あの転移孔の先を特定するのはかなり難しいでしょうが……」


 そのとき、グレイがおずおずと口を開いた。


「あの……俺、転移孔が閉じる直前に、彼女の背中へ追跡術式を貼っておきました。だから……」


「お前!」


 曹長は突然足を止め、声を荒らげた。次の瞬間、グレイの襟元をつかんで引き寄せる。


「なぜそれを先に言わん!」


 グレイは息を呑んだ。


「す、すみません。ずっと言う暇がなかったんです……」


 曹長はしばらく彼を睨んでいたが、やがて小さく息を吐き、手を離した。


「……いや、こちらこそ悪かった」


 軽く咳払いをして、曹長はグレイの肩に片手を置いた。


「よくやった、グレイ。お前のおかげで、まだ先手を打てる」


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