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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
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日焼けします?《5》



  おはようございます、リンゼルです。地下で真っ暗だから朝とか夜とかいまいち把握出来ないけど、ちなみに今は夜です。下位のヴァンパイアは夜に仕事なんで、今起きました。昼夜逆転の日々が始まって早数日……予想通り苛められていました。


「おらあっ!無能!きびきび働けやあ!!」


ドシッ


「ぐふぅっ……はぃぃっ…!!」


  絶賛高位の吸血鬼、バルト先輩にシゴかれております。


ツルッ

「あぁっ!?」


  私は足を滑らせ、手に持っていた掃除用の水の入ったバケツが綺麗にバルト先輩がいる方へ飛んで行き、バルト先輩の頭に水が勢いよくかかってしまいました。


バシャーンッ


「あっ……」


  オワッタ……ここ数日で何度終わりを見たか分からない…



「っ~…こ~んの糞無能がぁあっ!!ぶっ殺してやる!」


  さようなら~ヒルダ先輩ガイエル先輩~今まで良くして頂いてありがとうございました~来世で会いましょうー!天国のお父さんお母さんピーリフ(死んでない)リンゼルはいま行くよ~!!


「おっら、よ!」


タタタッ ガッ バシャッ


「ガッハッッ」


  バルト先輩の容赦ない飛び蹴りを顔面に頂き、奥の方の壁まで飛んで行きバシャッと鈍い音を立たせ、私は死んだ……






と思った……




「バルト!」


「何をやっているのかな?バルト?」


「げっ、ヒルダ!ガイエル!」



  ヒルダ先輩は私の方へ駆け寄って下さり、直ぐに回復の魔法をかけて頂き、身体の傷を癒して貰った。すみません、ヒルダ先輩……あの、回復魔法を掛けて頂けるだけでも有難いことなんですが、あの、身体よりも顔の方をお願い出来ませんか?前が見えないって言うか目が潰れて何も見えない……真っ暗な世界が広がってる……あれ?私目ある?目ないなった?何処いった?私の目玉?ここは何処?私は何者?



「バルト、いくら何でもやりすぎだ。この子はまだ新人で、失敗はよくあることだ」


「ぁあ゛っ?コイツの失敗は毎日だろうがっ!掃除も出来ねえ食料調達も出来ねえ仲間集めも出来ねえで何にも出来てねえじゃねえか!!訓練でも技一つ覚えられもしなければ力も一切使いこなせねえ!コイツの使い道はサンドバッグか今ここで死ぬしか使い道はねえよ!!」



  いや全く、その通りでございます。



「バルト!」


「……」


「おいガイエル、コイツを守る必要が何処にある?ヴァンパイアの力もまともに使えねえどころか、普通の雑用さえもこなせねえ奴が此処にいる必要が何処にある?ん?言ってみろよっ!」



  必要ありませんねぇ~、バルト先輩の意見に私は賛成です!


「っ~~!」


  私は顔面が潰れていて「その意見に賛成でーす!」と声に出して言えなかった…。とりあえずハーイと手を上げて賛成の意思を見せた。


「どうしたの?リンゼルちゃん?突然手を上げて?大丈夫?もしかして頭打った?」


  そう思うなら顔面直してくれませんかね?ヒルダ先輩?見えてますよね?私の顔面潰れてるの?ヒルダ先輩私のことちゃんと見えてます?わざとですか?わざとなんですか?もしかしてヒルダ先輩私のこと嫌いです?



「………彼女は……被害者だ…」


「俺達も被害者だっ!みんな同じ立場さ!みんな生きていくのに必死さ!そんな中コイツみたいな無能に足を引っ張られるんだぞ!腹が立たねえのかよっお前ら!?」


「…バルト……」


  先輩方、もう私のことは良いので……殺してくれて良いので……元々その予定でしたから……もう私のことは……




ゾックッ…



「っっ!!」



  うっ、わっ、お……


  先、輩…?これ、は……ガイエル先輩の殺気?いや力?が、重たくのし掛かる、苦しくて……プレッシャーが半端ない……



「ぐっ……くっそっ…」


「っ……」


  あぁやっぱり、高位の吸血鬼の先輩方にも効いているんだな……下位の私でさえ汗半端なく出てるし、もはやもう死んだかな?って気持ちになってくる……それぐらい威力が強すぎる……他の下位の吸血鬼さん達もガクブルだろうなぁ、可哀想に……流石はここの古参の吸血鬼にしてここで一番最強を誇る男……




「バルト……もう、僕は……子供が死んでゆく姿を見たくないんだ……」


「っ……」


「何も出来ないってだけで、見捨てるのはあまりに酷な話じゃないか…?それにこの子は、此処に来た時から何もかも、全て諦めたような顔をしていた…」


「………」


「身体に傷が沢山あった……顔に表情が殆ど出ない……上手く笑えない……上手く泣けない……地獄を見て来た目だ……


傷付いてきた子供の目だ……」



「……」


「そんな子供を……この世界が地獄だったと思いながら死なせて逝くのを……僕はもう見たくない……」


「……テメエは、まだ……妹のことを引きずってるのかよ…?」


「っ…」


「もうテメエの妹は居ねえし、コイツはお前の妹じゃねえんだよっ!!いつまでも何かと重ねて生きてんじゃねえよっ!!」


「そんっな……ことはっ!」



  ……うん、知っていた……と言うか感じていた……ガイエル先輩が妹さんと私を重ねていることを……ガイエル先輩はなんで私に優しいのかな?ってずっと不思議だった……そんな時、ヒルダ先輩から聞いたんだ……ガイエル先輩には妹さんが居たんだって。あぁ、だから……少し違和感?と言うか…妙な居心地の悪さを感じた……この人は私にとても優しいけど、私のことを全く見ていなかった……


  ヒルダ先輩は元から根は良い人なんだろうなって言うのは伝わってくる、だけどガイエル先輩が私に良くしてくれているからヒルダ先輩も私に優しくしてくれているんだと思う…


  そういうところをここ数日で何となく感じ取れるぐらいには私はこの人達を知っている。元々人間観察は得意だ、弱者は如何に人を見て如何に痛みを少なくするためにどうするべきかを考える。私は基本殺られる前提で考えてるけど…。



「バルト!いくらなんでも言いすぎよ!言って良いことと悪いことの区別もつかないのっ!?」


「……チッ」


  バルトは舌打ちをし、扉の方へ向かった。もう話す気はないらしい。


ガチャッ……



  バルトは扉開けてから立ち止まると…



「……テメエらの優しさは偽物だよ……そいつはフィーリアじゃねえんだよっ、ただの糞無能だ!フィーリアをテメエらが汚すんじゃねえっ!!お前がアイツの兄じゃなきゃ、ぶん殴ってたぞっ」


バタンッ



「「………」」



カツ…カツ…よろよろと、私は歩き出した……



「……リンゼル…」


「あっ……リンゼルちゃん、手をっ…」



  私はヒルダ先輩の前に手をかざし、大丈夫と伝えた。手は借りないよ、大丈夫だよ。うっすら目が開けられてきたんだ……片目だけだけど、これだけで充分だ……



よろよろ…カツ…カツ……



  今にも倒れそうだ……でも、今はこの人達も傷付いている……長い、長いこと……傷付いてきた……私には計り知れないほど、沢山色んな経験をしてきたんだろう……


  私は、この人達に、助けられる価値なんて……ないんだ……



  フィーリアちゃん、私の知らない子、ガイエル先輩にヒルダ先輩、それにバルト先輩にとって、とてもとても大事な人だったんだ……


  そうだよなぁ……汚されたくないよなぁ……分かるよ……バルト先輩……何をトチクるってこの二人は妹さんと私を重ねたか知らないけど、私にそんな優しさ、必要ない……時間の無駄だ……



カツ……カツ……


ガチャ……パタン……



カツン…カツン……よろよろ……



  何処に、向かってるんだろうな…わたし……長い長い階段を上がった先は屋敷の方だというのに、外はもうすぐ夜が明けてしまう時間だというのに、何故だか屋敷の方へ私は歩き出していた……


  馬鹿なのか、死にたいのか、愚かなのか、全てだろう。



  何だかこんなこと、前にもあったような気がするなと、少しデジャブを感じつつ笑った。いま顔が潰れているからそれはそれはきったねえ笑顔だったんだろうなって思った。



カツンカツン…



  あ、光が見えてきた


  ジリジリと肌が焼ける音を感じる……



  あぁ……イッタイなぁ……





「何をしている?」



  重低音の、男の声が耳に入った……




「ぁ……」



おや、ご主人様どうも!


今!私は絶賛日焼け中です!

ご主人様もどうです?

私は今すぐ消えて居なくなりそう雰囲気ですけど!



よろしかったら一緒に日焼けしちゃいます!?















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