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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
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旅立ち《41》



屋敷から外に出て、バイカは二人を抱えて走る、数分後、屋敷の方から耳をつんざくような大きな大きな爆発音が聞こえ、地面が大きく揺れ、爆風でバイカ達は吹き飛ばされる。


「うわっ」

「ボヘッ…」

「………」


その爆風の衝撃で、バイカは地面に転がり、抱えられた二人もその衝撃でバイカの手から離れ転がり落ちた。


リンゼルが顔面から地面に落ち、フィースは無言のまま転がり落ちた。


「わっ、わりぃ!つい手を離しちまった!二人とも無事かっ!?」


「イテテッ……な、なんとか…だいじょーぶ。顔面からのパッション(強打)には慣れているから…」


「いやなんだよ、顔面からのパッションって…」


「そっ、そんなことより!フィッ、フィース君はっ…」


私は辺りを見渡し、フィース君を見つけ、駆け寄った。


「……うん、息はしている、気絶してるだけみたい。やっぱりさっきのゼディアス様との戦いで大分消耗したみたいだね…。怪我も酷いし……一応ゆっくりとだけど自己回復はしているから多分、大丈夫だと思うけど…」


「そうか……魔界に辿り着くまでは持ち堪えてくれるといいが…」


「そうだね…。今はとにかく、ここから早急に立ち去ろう。フィース君の怪我もそうだけど、ゼディアス様があの爆発で完全に倒しきれているとは限らない…今は走って、少しでも“あの方”から離れた方が良い…」


私はそう言いながらも、横目で遠くで爆発した屋敷の方へと視線が向かう。バイカ少年も私に続いて視線を向ける。遠くの屋敷から見えるのは赤く燃え盛る炎、轟々と燃え尽くされ黒い灰となって崩れてゆく建物が見え、そこから黒い煙が止めなく出ている。


「お、おう…。な、なぁ、あの爆発って……ヒルダ先輩は……ガイエル先輩は……」


「………今はただ、振り返らず、前だけを見て、走らなきゃいけない……“生きて”、逃げ切らなきゃいけない…。まだ戦いは終わっていない、ゼディアス様から逃げ切るまでは、まだ……」


「………」


「ごめんね…」


今の私にはそれしか言えない。謝ることしか、出来ない…。


「………」


「後、フィース君も含め、再び私達を抱えて運んで下さると幸いです…」


私は続けて何とも気まずい表情で情けないお願いをバイカ少年にする。


「……チッ…」


バイカ少年は少し間を空けた後、複雑な表情を浮かべながらも、そこからは何も言わず、私とフィース君を脇に抱え、再び走り出した。



走りながらもバイカ少年はやはり疑問が残るのか、私に話し掛ける。


「……なぁ、あの爆発は……お前は知っていたのか?」


「……うん」


私はバイカ少年の問い掛けに少し考えた後、間を開けて、ゆっくりと頷いた。


「奴の……ゼディアスの野郎の目の前にお前が唐突に現れることも、あの爆発も……フィースが屋敷に来る事さえも、お前は知っていたのか?」


「……うん。私だけじゃなく、ガイエル先輩、ヒルダ先輩も、知っていた。フィース君が来ることはヒルダ先輩は知らなかったみたいだけど……私とガイエル先輩は何となく予想していた…」


「全部、先輩方とお前の作戦通りか…」


「うん、“今のところは、作戦通り”にいってる。」


だけどまだ、“作戦は続いている”。


「……そうか…」


バイカ少年は私の返答を聞いて、少し考え込むように返事した。


「………」

「………」


暫く無言の時間が続いた。


森を走り抜けるバイカ少年。

それに黙って運ばれる私とフィース君。フィース君は気絶してるからだけど。


ある程度進んでからの数十分後、再びバイカ少年が口を開いた。


「なぁ……最初から、先輩方を犠牲にした上の、戦いだったか…?」


「………うん。爆発は、最終手段ではあったけど……特にガイエル先輩は渋っていたな、ヒルダ先輩の命の代償だったから…。ガイエル先輩が聖水入りの弾を撃ち込んで時の魔法である程度ダメージを与えたとしても、完全に倒せる訳じゃないから、駄目押しでヒルダ先輩の身体を張った力業っていうか、もう殆どゴリ押しに近い状態であの爆発で決着をつけることになった。その爆発を成功させる為には何が何でもゼディアス様の隙をつく必要があった…」


「それでお前の囮か…」


「うん。突然無能たるこの私が目の前に現れたらビックリするでしょう?」


「あぁ……あれは冗談抜きで肝が冷えた……あの瞬間だけ時が止まって見えたぞ、いやマジで……」


「うん、その、えと、ホントごめん…」


「まぁ…いい、終わったことだし…。それより、何でその作戦を俺達に言わなかったんだ?」


「いや~だって、先輩方をどうみても犠牲にした上での作戦、伝えられると思う?どうみてもガイエル先輩とヒルダ先輩が犠牲になる作戦をだよ?君達余計に此方に向かって来たくなるでしょう?むしろ逃げる事すらしないまである。少しでも希望を持たせて先立つ方が残酷ではあるかもしれないけど足取りは少しは軽くなって逃げて行けるでしょう?」


「………」


納得は出来るがしたくないようなしかめっ面で黙って聞くバイカ少年。


「まず君達が屋敷に来ること事態、例え予測していたとしても、一応君達がいない想定で事を進めていたから、それは事が済んでから話そうって思っていたんだ。というか正直、私自身、生き残れるどうか分からなかったけど…」


フィース君は想像出来ていたけど、バイカ少年が来るのはある意味では嬉しい誤算であったかもしれない。正直私の生存率が上がったと言うか、一人で逃げ切れる自信があまりなかったから、少し助かった部分はある。作戦の成功度が上がった。


それに……まだ、戦いが終わった訳ではない。

まだ、私は死ねない…。



「バカ君、今は納得がいかない事が多いと思うけど、私達の“敵”はそれだけ巨大だった、それだけ強い吸血鬼だった。今はただ、先輩方の死を無駄にしない為にも、少しでも屋敷から離れて逃げ切ろう…」


「………」


「……ごめんね…」


私は再び謝った。今は謝ることしか出来ない。バイカ少年は私の言葉に答える事もなく、ただ無言で走るだけであった。




数時間ぐらい走ったら、一旦休憩することにした。


「少し休憩したら、また行くぞ…」


「うん、分かった…」


私達は言葉少なく、休憩していた。


すると……


「……ぁ……」


「あ、フィース、君?目が覚めたの?」


「リン、ゼル、おねい、ちゃん…?」


「大丈夫なのか?」


「バイカおにい、ちゃん、も……よかっ、た……ふたりとも、無事、だったんだ……」


「うん、何とかね…」


「俺達の事は良いさ。お前はあのバケモンと戦っていたんだ……お前の方こそ意識が戻って良かったよ…」


「うん、そうだね…。バカ君の言う通りだよ。良かった、フィース君の目が覚めてくれて……」


「ふたりとも……えーと、今、どーいう状況なの?」


「今は屋敷から抜け出して命からがら逃げているところかな?」


「そう、なんだ………あれ……?」


フィース君はまだ身体が動かせないようで、目をキョロキョロとさせて辺りを見回した。


「どうしたの?」


私は思わずフィース君に問い掛ける。


「ねえ二人とも……ガイエルおにいちゃんとヒルダおねえちゃんは…?」


「っ……それは……」

「………」


私達は思わずフィース君の“その言葉”に目を大きく開き、そこから間もなく視線を落として口を(つぐ)む。


「リンゼルおねえちゃん?バイカおにいちゃん?どうしたの?どうして……そんな悲しそうな顔……」


「………ガイエル先輩と、ヒルダ先輩は……二人は、私達を逃がすために…」


「…もしかして……」


フィース君は私達の暗い表情とその言葉で何かを察したのか……


「……ガイエルおにいちゃんと、ヒルダおねえちゃんは……死んだんだね…」


「………うん、死んだよ…」


「…ひぐっ……」


フィース君の瞳から大粒の涙がポロポロと流れ地面に落ちる。た。


「……まもれ、なかった……もっと、もっと、ボクが、戦えていたら……もっと、もっと、ボクが、つよければ……」


「フィース君……」


「…お前の、せいじゃねえよ……それに、てめえを責めたところで、先輩方が帰ってくるわけじゃねえんだ…」


「でもっ、でもっ……ボクは、ボクはっ……ボクを、ゆるせないっ…!!」


「フィース君…。さっきバカ君が言ったように自分を責めないで……フィース君は十分戦ってくれたし、先輩方もあの戦いの中沢山助かった部分はあったと思う。だから…」


「でもっ、結局二人とも死んだ!ボクはっ、ボクはっ………もっと、もっとっ……強くなりたいっ……もっと、強くなって、つぎこそは……絶対にっ……」


ポロポロと瞳から溢れんばかりの涙を流しながら、フィース君は何処か決意をしたように力強い瞳でそう言った。


私はその様子を静かに見守っていた。



「………」


バイカはリンゼルの方を訝しげな瞳で見ていた。






数時間後、


光が差し込み、夜明けが近付いていた…。



「随分歩いたね……夜明けも近づいている…」


「あぁ…」


「フィース君は泣き疲れて寝てるね…」


「そうだな…」


「バカ君………こんな時に聞くのもアレなんだけどさ……」


「?…なんだ?」


「君とフィース君と私ってまだ下位吸血鬼だよね?まあ私は良いとして、バカ君やフィース君はまだ上位に進化してないよね?」


「?…あ、あぁ、そうだけど…」


「ねえ、確か上位の吸血鬼に進化してないと太陽の耐性って手に入らないんだよね…?」


「あぁ確かに………ん?ちょっと待て……まさか……」


「私らこのままだと灰にならね?」


「………やっ、やべえええええええっ!?!?」


「あっやっぱヤバい!?そうだよね!?結構ヤバいよね!?どっどうしよう!?」


「いや待て!落ちっ、落ちちゅっ、落ち着け!確か出立前にフィースに日焼け止めを創ってもらって各自に渡されているはずだ!」


「ハッ…そうだった!バカ君ナイスだよ!よく思い出してくれたよ!それがあればっ…」


「………」


「?…あれ?バカ君?どうして黙っているの?」


「鞄に……穴が……空いてる……」


「………えっ?」


「丁度、日焼け止めが入って所に穴が…」


「嘘……でしょ?」


「……残念ながら、事実だ……一体…いつからだ?どこから?こんな穴が……」


「そ、そんな……」


多分戦いの最中か逃げてる最中のゴタゴタの中で木か何処かに引っかけて破けたか戦闘の爆発や何かしらで焼けたか、可能性は沢山考えられるだろうけど、今はそんな予想なんてどうでもいい。今確かなのは頼りの日焼け止めがないという絶望的な事実しかないところだ。


「「………」」


私とバイカ少年の目から光が消えて、私達は現実を受け止めきれず、ひたすら虚空を見つめていた。


すると、少年の寝息が聞こえた。


「スーッ…スー…」


そう言えば私達の側には創造者(フィース君)がいた!


私達は目に光を取り戻し、木陰で眠っているフィース君(神)に全速力で駆け寄った。


「フィースーー!!起きろーーー!!!日焼け止めの薬を創ってくれええええっ!!」


「フィースくーーん!!泣き疲れてやっと眠ったところ悪いんだけど早急に起きてぇえええええっ!!」


身体は戦いでボロボロになって消耗しているだろうし負担になるだろうから手を使って身体を揺さぶる事は出来ないからフィース君の耳元に近付いて私とバイカ少年は叫ぶ。


「………」


だけどフィース君は起きない。


「フィースゥウウウウッ!?!?」

「フィースくーーーんっ!?!?」


「………」


フィース君はピクリとも起きない。


「右耳にバカ君、左耳に私でくそデカボイスで起こしているのにも関わらず起きないなんて……寝ている、と言うより…気絶しているんだろうね…」


「あぁ……そうだろうな……」


「まぁあんなに激闘の戦いの後だもんね…普通に起きれないよね…当たり前だよね…」


「そうだな…」


もうバイカ少年と私は悟った表情で投げやりな会話をしていた。


「「………」」


私達は思わず空を見上げた。二人して現実逃避していた。暗い曇り空が広がる。木々から木漏れ日のようなものが見えるような気がするが、気のせいだろう……うん、きっと気のせいだ。


そんなことをしていても現実とは残酷なもので、無情にも朝日が昇る瞬間が訪れていた。



「えっ……こんな終わり方ある?ここまで逃げて来てみんなで焼けて灰になって死にましたって話ある?」


「今現在進行形であるな…」


「……バカ君、ちなみになんだけど、魔界ってまだ遠い?」


「身体強化のスキルを使っていても、魔界までは三日か四日は掛かるってヒルダ先輩が言っていた…」


「なるほど、今からどれだけ走っても無理ってことか…」


「そうなるな……」


「「………」」


私達は再び空を見上げた。木々から見える光から逃げるように…見えないように…。



私達二人が現実逃避に明け暮れている中、近辺でガサリッと大きな物音がした。


私達はその音がした方へ目を向けた。


ギョロリッと大きな目と私達は目が合った。


ワイバーンであった。


ワイバーンが目の前にいた。



「はっ?えっ?え?はぁあああああああっ!?!?」


「う、嘘でしょおおおおっ!!?」


バイカ少年が最初に叫び私もその後に叫んだ。二人して絶叫した。いやもう叫ぶでしょうこれは!叫ぶしかない!


えっ?どんなタイミング?どんなタイミングで現れているの!?もう私達灰になって死にま~すサヨナラ~みたいな展開だったのに何で更に上にいく死亡フラグが立ったの!?もう死亡フラグ立ってるのに何でまた増えたの!?


「グァ……」


涎ダラダラですよ~!?どう見てもお腹空かせたワイバーンさんですよ~!?補食されますね~!?今日のワイバーンさんの朝食かな~?私達~!?


「クッソ!どっどうすればっ!」


「あわあわあわあ…@☆◎#▼1★〒っ!?」


バイカ少年がこの状況をどうにか出来ないか考えながらも朝日は昇っているしワイバーンは目の前で腹を空かせているで絶体絶命。私に関してはパニックになり過ぎて言葉すら儘ならない。


もう日に焼けて灰になるのが先かワイバーンに食われて死ぬのが先か、どちらにしろ最悪な結果しか目の前にはなかった…。


「グァアアアアッ!!」


そうこう考えている内にも、我々の気も知らず(当たり前だが)、ワイバーンが涎を滴しながら大口を開けて此方に突進してくる。



「畜生っ!こんなところでっ…」


「ギャアアアアアッ!?」


くっ、どうすればっ!?とにかく!私一人が死ぬ分には良いが、未来あるフィース君とバイカ少年の二人が死ぬのは良くない!


「っ~…バカ君!フィース君を抱えて逃げて!」


「っ!?お前はどうするんだよ!」


「囮になる!!」


「なっ!?」


「このままみんなして全滅するより!泥臭くとも醜くとも足掻いて生き残るんだよ!一人でも多く生き残る為に!今この場で誰が最優先で生き残るべきかバカ君だって分かってるでしょう!?バカ君!とにかく走って!口を動かす暇も惜しい!」


「っ…!」


「うぉああああああっ!!」


私もワイバーンに向かって手を広げて叫びながら突進しにいった。


「無能っ!?」


バイカ少年が後ろの方で私に向かって叫ぶ。


「早く!行って!!」


「っ……チッ…クショウッ!!【身体強化】!!」


バイカ少年がフィース君を肩に背負い走り出す。


「うぉおおおおおっ!!!」


私は走り出す。ワイバーンの大きな口が目の前に広がる。


ふん!リンゼルお婆ちゃんを舐めるんじゃないよ!これでも100年は生きた歳だけ食ってきたお婆ちゃんだからね!メンタルだけはアホみたいに強いんだから!年の功を舐めるんじゃないよ!そんなに大きなお口を目の前にしてもね!………してもねっ!!ひるっ、怯まにゃ、怯まな……………



「こぇええええええっ!!!目の前にするとものっすんごいっこえええええええっ!!誰かぁああああっ!!助けてぇええええっ!!?」


私は泣き叫びながら助けを呼んだ。えっ?さっきの威勢はどうした?そんなもの知りません!怖いもんは怖いんです!!お婆ちゃんを労って下さい!お婆ちゃん思った以上にメンタル弱かったんです!だってお口の中の歯のギザギザが見えて!なんかアレで刻まれて死ぬのかと思ったら痛そうだな!とか!後、口に近付いたら思った以上に口臭ヤバイな、結構臭いな…とか!なんか色々と考えちゃって怖くなっちゃったんだもん!!


「うわぁあああんっ!死ぬぅうううっ!というか本当にお口が臭い!ちょっと洒落にならないぐらい臭い!もはやこの臭いから逃げたいから助かりたいまであるっ!」


あぁ、死ぬ直前ってスローモーションに見えるとか走馬灯が見えるって言うけど、私は死ぬ瞬間までこんな煩いんだな…。よく喰われる一歩手前でこんなに早口でベラベラ喋れるな…と、現実逃避並みに喋ってる。いや実際現実逃避してるんだろうな…。



ガサッ


「うるせ~な…」


ザシュッ…と、“何かが切れる音”がした。


「えっ…?」


すると、私を喰らおうと大きく口を開いた目の前のワイバーンの首が飛んだ…。


「なっ……」


何が起こってっ…!?


そう口にする前にワイバーンの切れた首から大量の血飛沫(ちしぶき)が私の顔面に降り注いだ。


「うえっゴホゴホッッ……ゲホッ…ちっ血で溺れるっ!」


うぇ~…驚いて口開けちゃったままだったからワイバーンの血を沢山飲んじゃった。いや目の前で血があんなに降って来たら避けきれないって。それにしてもワイバーンの血ってあんまり美味しくないな、不味くもないけど、こう、苦味と酸味がある。大人の味だ。ガイエル先輩辺りが好みそうかも……いや暢気に血の味の評価してる場合じゃない!一体何事っ!?突然どうしてワイバーンの首がぶっ飛んだのっ!?


そうだ!首が吹っ飛ぶ前に男性の低い声が聞こえた気がした!バイカ少年?いやバイカ少年はもう少し声が高かった筈だ。声変わり前のハスキーな声をしている。いやそれじゃあ先程の声の持ち主は誰だ?


「さっきからギャーギャー煩わしい。耳が痛くなる。チッ、さっきの俺と目が合うなり早々に襲いかかってきた“ガキ”といい、いつからこの辺はガキ共の遊び場になったんだ?」


そう喋りながら首がないワイバーンの上で立つ男。ん?何だろう?か、み?髪?いや、髪か?あれ?あれは……


「タコ……足?」


頭から髪みたいにタコ足が数本生え?てる?何あれ?髪はたこ足、でも身体は人間の形と同じ……多分、男性。


「………」


私は見たこともないタコ?人間?を見て、口をポカーンとして驚くことしか出来なかった。


「こっちの騒がしい方の餓鬼はアホ面だな…」


あれ?サラッと悪口言われた?

いや待ってっ!?よく見れば数本あるタコ足?の二本にバイカ少年とフィース君が巻き付かれて持ち上げられていた。


「っ!バッ……っ!?」


バイカ少年とフィース君を見付けて思わず二人の名前を叫びそうになったが…。


「あづっ…!?」


頬に強烈な痛みが走った。

思わず強烈な痛みを感じた頬に手を置いたがその手からも強烈な熱さと痛みを感じた。一体何がっ……そうだ!私はハッとしたように空を見上げた。太陽が昇っていた。私は自分の身体から焼き焦げて灰になって行く熱さと痛みを感じながら、バイカ少年とフィース君をタコ足で持っている男性の方を見た。彼は一体何者なんだ?二人をどうして持っているの?二人は生きているの?色々な思考を巡らせたが、刻一刻と自分が太陽の光に焼かれていく熱さと痛みで頭の思考を停止させた。


熱い熱い熱い熱いあつい痛い痛い痛い痛い痛い痛い熱い痛いイタいッ!!


「グァアアアアアア゛ッッ」


私はあまりの熱さと痛みで獣のように泣き叫ぶ事しか出来なかった。


「ギャアアアアアッッ」

「ガァアアアアアッッ」


あぁ……フィース君とバイカ少年の泣き叫ぶ声も聞こえる……二人も太陽の光を浴び、焼かれて熱さと痛みで泣き叫んでいるんだろう……あぁ、ごめんね……ごめんよ……リンゼルお婆ちゃん……君達の側に行って、助けてあげられない……あぁ、熱いよね……痛いよね……あぁ……子供達の悲痛な泣き声ほど、心が抉られる事はない…。


「何だ?お前達は吸血鬼(ヴァンパイア)か?」


私達の様子を見て、髪?がタコ足の男性はどうやら私達が吸血鬼であることに気付いたらしく、問い掛けてくるが、現在太陽に焼かれて死にかけの私達にそれに答える余裕などなかった。


「ぐっ…ぁぁ……」


私は意識が朦朧としてゆく中、無意識にバイカ少年とフィース君がいる方へ手を伸ばす……無駄だと分かっていても、助けられないと頭で理解していても、手が届かないとしても、それでも手を伸ばした…。


「ふむ………チッ、面倒な所に居合わせちまったな……ハァーッ……しゃあねえか……」


痛みと熱さで意識が途切れる直前……


「ガキ共、感謝しろ。お前らは運が良い、他の“魔族”の連中だったら見捨てられていたところ……まぁそんなこと話してる場合じゃないか。ハァーッ、時間もないし転送魔法を使うか、この魔法は魔力をほぼ持ってかれるから使いたくないんだが……まぁ四の五の言ってられねえか…」


タコの、人、が、ブツブツと、なにかを、言ってる、気が、するけど、もう、なにも、聞こえ、ない、見え、ない…。


あぁ……なん、だろう?

伸ばした手に、ブニンッ…と、不思議な感触を感じた。


「ほれ、掴まれ」


なにかを、言っている、気がする……

まぁ、いいか……眠い……眠ろう…。


あぁそれにしても、この不思議な感触は、冷たくて、ヒンヤリしてるけど、不思議と、血の通ってるような暖かさも感じる…。





「ガキ共、さあ行くぞ。魔族領へ。」





奴隷編完結です。


次は魔界編、の前にちょっとした小話を挟みます。小話を挟んだら魔界編へ。

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