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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
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戦いの果て《40》



リンゼルとバイカが三人の戦いを見守っている中、戦いの終わりはそれは唐突に訪れた。



三人が血を流して倒れていた。


その三人はガイエル、ヒルダ、フィースだ。


そして立っているのはゼディアスだけだった。




「ゼエッ…ゼエッ…」


「うぅ…」


「ヒュー…ヒュー…」


ヒルダはふらつきながらも立ち上がる。

ヒルダに続いてフィースも立ち上がろうとするが、まだ幼い身体故か、体力の限界を迎え、指一本動かせそうになかった。


ガイエルは呼吸をするので精一杯の様子で辛うじて生きている、という感じだ。ほぼ瀕死状態であった。


「………」


ゼディアスはそれを何処か冷めた表情で見ている。


「あ、ら?その表情は、何?ゼェッ……まさか、もう勝った、気で、いるの、かしら?」


「ふん……そんなに息を上げ、煽ったところで貴様らが今、私の前で哀れにも膝を付きながら負けている事実は覆らんぞ?」


「そんなこと、ゴホッ……まだ、分からないわ…」


「その傷でか?ハッ、愚かなことだ。自分と相手との実力差も分からぬ程の馬鹿とはな…。私の眷属の中でお前達が一番聡く力を持った者達だった、戦争で他の眷属共の先導役として貴様らを働かせていた。どうやら他の眷属共からも慕われていたようだからな、丁度良いと思った。故に貴様らはもう少し頭の回る者達だと思っていたが……見当違いだったようだ。いや、この期に及んで言葉は不要か…。さっさとこの戦いの決着を付けよう…」


ゼディアスはトドメだとばかりに右手を振り上げた。その手には大きな魔法の陣が広がる。


「っ……」


「ぐぅっ」


「ヒュー…ヒュー……」


ガイエルは意識が飛びそうになりながらも、何かをブツブツと呟いていた。


そして…


「ヒュー……ヒュ……」ニヤ


ガイエルがほんの少し笑ったような気がした。



「………リン、ゼル……頼ん、だ……よ……」


そう呟いた後、ガイエルの瞳から光が消えた。



コツ


「はい……任されました、ガイエル先輩。だから、どうかゆっくりと、休んで下さい…」



ゼディアスの目の前へと突如としてリンゼルが、現れた。ガイエルの魔法によって転移されたようだ。



遠くからバイカ少年の「……ハッ!ちょっ、えっ?むっ、無能っ!?」と動揺した声が聞こえ、フィース君は絶叫したような表情で“私”を見る。



「なっ…」


それはゼディアス様も同じなようで、突然目の前に“私”が現れたことに驚いていた。


私は、“いつも通り”、ガイエル先輩方やフィース君達と話す時と同じように穏やな表情でゼディアス様の前に、立っていた。


バイカ少年が驚きながらも此方に駆け寄り助けようとする姿が見える。


フィース君も「リン、ゼル、おねぇ、ちゃん…に、逃げて…」と息を途切れさせながらも、私を心配するように声を上げる。



ゼディアス様は右手から放たれる魔法を寸前のところで方向転換し、空の方へと打ち上げた。


そして上空からドンッと大きな音が鳴り響く。




“やっぱり”、私に“疑問”が残るようだから、まだ私を殺そうとはしないか…。


ゼディアス様は驚きと困惑したような表情で此方を見ている。


「フフッ…」


私はたまらず笑ってしまいながらも、ゼディアス様の方へ一歩二歩と歩み寄り、穏やかに笑って話し掛けた。



「ゼディアス様……お話があります。」


「な……一体……お前は……」


私はゼディアス様にだけ聞こえるように顔を近付けて伝えた。




「“次”は必ず、私を殺して(喰らって)下さいね?ゼディアス様?」


「!………何を、言って……」


私は“ソレ”を伝え終えると…


「さて……それでは!伝えたい事も伝えたし!じゃ!私は逃げます!おサラバデスッッ!!」


そう爽やかな笑顔で伝えて、クルリと回り、ゼディアス様に背中を向けて逃げ出した。


「……………はっ!?」


ゼディアス様の困惑した声を背中越しに聞きながら、近くで倒れているフィース君も抱き抱えて回収して逃げ出す。無能たる私でもフィース君ぐらいの子供なら何とか持ち上げられる。


けども!


「バカ君!流石にフィース君抱えたままだったら無能たる私の逃げ足激遅になるから私達の回収よろ~!バカ君早急にカモーン!」


「気が抜ける呼び声ヤメロ!なんか腹立つ!

あ"~っ、訳わかんねえけど!助けには行く!行くけどなっ、後で色々と話を聞かせてもらうからな!?この糞無能がっ!!」


「アハハ~…りょーかいりょーかい!後で何でも話して上げましょう!私のスリーサイズまでも教えてあげるよ!ちなみに私のスリーサイズって知ってる?私は知らないんだけど…」


「知らんわ!テメエのスリーサイズなんて!つーかそんな情報なんているか!こんな時まで変なこと言ってこっちの調子を狂わすな!」


私のいつもの調子の小ボケにツッコミながらも私とフィース君を自分の両肩に背負い、何とか回収をしてくれたバイカ少年。


「おい!ガイエル先輩とヒルダ先輩はどうするんだ!?」


「とにかく今は逃げよう!屋敷から!早急に!」


「だっ、だけどよっ…」


「今のこの状況を見て!私達のこの状況を!明らかにピンチでしょう!負けているでしょう!なら私達がやることは一つ!先輩達の奮闘を、先輩達が私達の為に戦ってくれているその“思い”を無駄にしないこと!そして自分達の命を無駄にしないこと!今の私達に出来ることはそれだけだよ!!」


私は肩に抱えられている状態から起きて、バイカ少年の頭を掴み、目線を会わせ、バイカ少年の目を真っ直ぐと見て、声を張り上げて伝えた。


「っ……チッックショウッ!【身体強化】!」


バイカ少年は私の言葉を聞いて少し涙を浮かべて悔しそうにしながらも、スキル【身体強化】を使い、私達を抱えて全力で走り出した。




「……!待てっ…逃がすか!」


呆然としていたゼディアスがリンゼル達が逃げる様子を見てハッとしたように動き出しリンゼル達を足止めしようと魔法を撃とうとするが…。


「やっと貴方の後ろが取れたわ……屑野郎!」


ヒルダがゼディアスの背後に立っていた。


「何っ!?」


「死んでいった仲間達、そして馬鹿な幼馴染みのバルト……それに……それにっ!!私の愛した(ガイエル)の仇よっ!!」


ヒルダの表情は、怒りと憎しみ、そして悲しみで涙が溢れかえりながら、ゼディアスに向けてそう叫んだ。


「チィッ」


ゼディアスが舌打ちをして、後ろを振り返ろうとするその前に、ヒルダは先に行動してゼディアスに飛び掛かり背中にしがみついた。


「ガブリッッ」


「なっ!?」


ヒルダはゼディアスの首筋に思いっきり噛みついていた。血を吸っているようだ。


「ぐっ……貴様何をっ!?」


「(お前を殺すための力を蓄えているのよ!)」


ヒルダはゼディアスの首筋にかぶりつき、念話のスキルを使って伝える。


「っ!まさか貴様!私の血を吸って力を強化する気か!愚かな!過度な血の摂取は体に負荷がかかり、爆発して死ぬのだぞ!?例え貴様が強くとも血の適正があったとしても、私の血は他の吸血鬼とは違って強力なのだ!貴様が強化される前に死ぬぞ!」


「(ふふ、別に良いわよ……ガイエルが死んだ今、私は生きる理由がないわ……それに、逃げている子供達もいるもの。時間稼ぎになるでしょう。)」


何処か悟った表情でヒルダは答えた。


「チッ…面倒なガキ共だっ!!」


背中にしがみついてゼディアスの首筋に噛みつき離さないヒルダを、引き剥がそうとゼディアスはその鋭い爪でヒルダを引っ掻き、魔法を連発してヒルダに攻撃を与える。


「(ふふっ……無駄よ……確か、過度な血の摂取は体に負荷がかかり、爆発して死ぬ?ですってねえ……ええ、そんなことは分かった上でやっているのよ。というか、“ソレ”を狙ってやってるのよ!!その爆発を私の破壊魔法の力と合わせて利用させてもらう!貴様の血を吸って強化された力でお前を巻き込んで爆発する!私の命を代償に!知っている?私の得意とする魔法の一つ、破壊魔法の上級技はね!捧げる代償が大きければ大きいほど!お前をあっという間に死に地獄に送ってやれるぐらい力を発揮するのよっ!!)」


ヒルダは念話でそう叫びながら、ビキビキッと音を立て、ヒルダの体全体がひびが割れ始め、そこから眩しい程の光が溢れる。



「ぐっ……己っ……己おのれおのれおのれええっ!!奴隷の分際がぁあああああっっ」



「(死に晒しなさい……屑野郎っ……)」


ヒルダは最期に、不敵に笑いながらゼディアスに念話でそう伝えた。




大きな大きな爆発音が屋敷全体に響いた。






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― 新着の感想 ―
[一言] 感想読んで作者の意欲が削がれないといいなと思いつつ、退場する人たちが出番が終わって舞台裏で笑顔で花束受け取っているといいなとは思う。妹の件といい個人的には思うところがある展開かなと。ただまあ…
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