時の魔法《38》
「リンゼルちゃん!無事っ!?」
「っ……」
あぁ…ヒルダ先輩、ガイエル先輩、二人とも……やっと来てくれた……。無事、というか、もう死にかけですかね……息も絶え絶えですよ…。妹の幻影が見えたぐらい結構やべえ状況、ですね…。
「チッ……次から次へと……」
ゼディアスは次から次と自分の“元”眷属達が現れ始め、少し苛立ちを表す。
「……チッ…」
「グヘッ…!?」
「リンゼルちゃん!?」
「リンゼルお姉ちゃん!?」
ゼディアス様は首を締め上げていた私をその辺の地面に放り出し、攻め込んできた4人に対して警戒体制に入った。流石にガイエル先輩とヒルダ先輩までもが来ていては私を殺すより先にそちらを対応しなくてはならないと思ったのか、私への“疑問”もあるからだろうか、とりあえず私は見逃された。突然地面に放り出された衝撃で何とも情けない声を出した気がするが、気にしない気にしない。
「大丈夫!?リンゼルちゃんっ!?」
地面に放り出された私の元へヒルダ先輩がすかさず回収してくれてゼディアス様から距離を取ってくれた。
「ゲホッゴホッ……ハァッハァッ……な、なんとか……だ、だいじょー、ぶ、です……ははっ…」
私はヒルダ先輩の呼び掛けに何とか答える。あぁ何故だろう、ヒルダ先輩の顔を見て気が抜けたのか、何だか笑えてくるよ…。
「待ってて、今首に回復魔法かけるからね!」
「あっ、待って、下さい…」
「?…どうしたの?ほら早く回復しないと!」
「いま、下手にヒルダ先輩が力を使うのは、ダメ、です…」
「でもっ」
「はい、お気持ちは、嬉しい、です…。だけど、今は、ゼディアス様と戦う為に、少しでも魔力を、温存しておかないと…ダメ、です…。わたし…は、大丈夫、ですから…」
「リンゼルちゃん…」
タタタッ
「リンゼルお姉ちゃん!大丈夫っ!?」
「フィース、くん…」
フィース君がヒルダ先輩に続いて私を心配して駆け付けてくれた。
「えっ……ってフィース君!?何でいるの!?」
ヒルダ先輩は此処にいるはずがないフィース君を見て絶叫していた。
「あっ、え~と…」
フィース君はヒルダ先輩の問い掛けに「どうしよう…」と少し困った表情で冷汗をかいている。
「ちょっと待って……よく見ればバイカ君もいるじゃない!?どうして二人が此処にっ!?」
バイカ少年はヒルダ先輩に見つかり、「あっ、やべ!」と言いながら気まずそうに目を逸らした。
「ちょっとっ!!ねえっ、二人ともっ!?」
ですよね…流石のヒルダ先輩も驚きますよね…。私もメチャクチャ驚きました。
「そうか……君達だったのか……此処に来る道中に感じた気配は…」
ガイエル先輩はあまり驚いた様子は無く、至って冷静にバイカ少年とフィース君の二人が此方に来ていた事を分かっていたように呟く。
「ちょっ、ガイエル!?何でそれを私に教えてくれなかったの!?」
「いや、本当にうっすらと感じた気配だったから、気のせいだった可能性もあるから…言わないでいた。」
「いやっだとしてもっ!ていうか何で貴方はそんなに冷静なのよ!?」
「まぁ…何となくフィースが大人しく言う事を聞くような子じゃないって事は分かっていたからね。一応、頭の片隅で予想はしていた。流石にバイカまで一緒にいることは予想していなかったけど……これだから人生って面白いよねえ…(しみじみ)」
「いやしみじみとしていないでっ!?ちょっとガイエルっ!?私そんな話し聞いてないんだけどっ!?」
「まああくまでも予想だからね、本当にそうなるなんて僕だって想像してなかったよ。だけど、まあこれも人生だねえ…」
「っ~……貴方のそのノンビリとしたところ好きでもあるけど今はちょっと嫌いよ!?」
「アハハ、それは残念だ…」
ガイエル先輩とヒルダ先輩のそんなやり取りをボンヤリと眺めていると…。
「…話しは終わったか?よく“私”の前でそんなに悠長に話していられるな?」
重低音の偉く低い声が冷たく響いた。
ゼディアス様だ。まぁ確かにこんな状況で悠長に話しているの可笑しいよね、いやごもっとも。私達も余裕があるわけではないんですがね、ヒルダ先輩と話しながら一応ちゃんとガイエル先輩は此処に来た瞬間からずっとゼディアス様に殺気を飛ばしつつ、警戒は怠らずにゼディアス様を睨み付けている。
「それは申し訳ありませんご主人様?いや、もう僕達の“ご主人様”ではなかったですね?」
「っ……貴様らっ……私を出し抜いた所で生きて此処から逃げ仰せると、本気で思っているのか?例え貴様らに付けた“枷”を外したところでこの私に勝てるとでも?」
「………」
ゼディアス様の言葉にガイエル先輩は黙る。
「私の血で作った眷属だ。貴様らにはほんの数滴程しか血を与えていない。普通の人間に血を与え過ぎると肉体が耐えきれなくなり爆発する。そこの無能が前にやっていたみたいにな。所詮貴様らは吸血鬼の劣化版に過ぎない。“元の親”たるこの私がお前達如きに届ききると思うか?」
「っ……正直、一か八かの賭けです…」
「………愚かなことだな…」
「でもこの賭けに出ないと、僕達は死んでしまいます。」
「なら、私達に残された道は、“戦う”しかないでしょう?」
ガイエル先輩に続きヒルダ先輩も言葉を紡ぐ。
「僕達は大人しく死ぬ気はありません。愚かでも、馬鹿でも、構いませんよ。僕達は一人でも多くの仲間達を生かすために“此処”にいる。後悔なんてありません。今この瞬間も仲間達は逃げている。少しでも長く生存率を上げる為なら、例え僕達が貴方と戦った末、死んだとしても、彼らを逃がす為に少しでも時間を稼いで貴方を此処に足止めします。」
「言っておくけど、簡単にはガイエルも私も、倒されるつもりないから。貴方は確かに馬鹿みたいに強いけど、決して無敵でも不死身でもないことは分かっている。それに今、私達の亡き幼馴染み(バルト)の執念深ーい“呪い”を受けている事は知っているわ。少なくともこの一年“ソレ”を解くのに悪戦苦闘しているみたいだし?私達の付け入る隙がないわけでもないと思うのよね…」
「………」
「あら?黙っているってことは“肯定”と受け取って良いのかしら?」
「フンッ……その程度の“隙”など、私の戦力を削ぐに足らぬわ…」
「ええそうでしょうね、残念ながら。僕達二人が全力で戦ったとしても、貴方と戦って“勝つ”ことは出来ないでしょうねぇ。ですが、それはまあ驚くべき事に、僕達が逃がした筈の切り札達が大変不本意ながらですが今此処にいるわけでして、この二人を合わせて僕達“四人”で貴方と戦うなら、まぁやっと五分と五分、でしょうかね?」
「……あまり舐めてくれるなよ、糞餓鬼共っ…」
「ええ、勿論ですとも。舐めて掛かるほど我々も愚かではありません。隙一つだって許されない状況だってことは此方も百も承知ですよ」
「そうか……なら話はもう終わりだ。今すぐ“殺し合い”を始めようか。“奴”からの、ロネス・グリオからのオーダーでは眷属達のまとめ役である貴様ら二人と、そこのチビ(フィース)、そして……無能の女を、絶対に生きて研究所に送れと言われていたが、気が変わった……もうそんなものはどうでもいい。元々“奴ら”の事は好かん。そんなことよりも、今は直ぐにでも貴様らを嬲り(なぶり)殺しにする方が先決だ。」
ゼディアス様は怒りと共に、凄まじいオーラと魔力を放ち始めた。
うわ、お……肌がヒリヒリする…。恐ろしいなぁ…殺気が此方にも直に伝わってくる。先輩方の殺気も感じるけど、やっぱりゼディアス様のものは一段と重い。
「っ」
「うぐっ」
流石にこの殺気に当てられてフィース君もバイカ君も怯んでいる。ガイエル先輩とヒルダ先輩は少し顔を歪める程度でゼディアス様を睨み付けたまま警戒していた。流石だな、先輩方は。
暫く殺気を飛ばしながら睨み合っていた五人、最初に動きを見せたのはゼディアス様だった。
ゼディアス様の影が少し揺れたように感じ、その次の瞬間、唐突に目の前から姿が消えた。辺りを見回す隙もなく、無数の黒く鋭い魔光が四人に襲いかかった。
四人は瞬時に散り散りに避けた。
私は魔光を避けようと思って走ったら全力で転けた。
「アテッ!」
うぅ……地味に痛い……膝擦りむいた…血が出てる……ちょっぴり涙出てきた…。
私が地味に怪我して落ち込んでいる中、四人の戦いは続いていく。
そしてガイエル先輩が応戦するように炎の上級魔法をぶっ放す。凄い迫力!此方まで熱気が伝わってくる!
ゼディアス様は己へと一直線に向かう猛炎の渦を軽々と避け、それを見越したようにヒルダ先輩の魔力を込めた拳が殴りかかっていく。拳で戦う女性って何だか魅力的に感じます!
その拳を、表情も変えずに避けながらその拍子にゼディアス様の爪は瞬時に鋭く伸び、ヒルダ先輩の腹を目掛けて突き刺ささる寸前ので、ヒルダ先輩の破壊魔法がその爪を粉々にして回避した。そして、ヒルダ先輩はそのまま後ろに下がるように咄嗟にその場から距離をとった。
凄い!咄嗟に破壊魔法で防ぐとは流石はヒルダ先輩!素敵です!そして距離を取って様子を伺う感じですね!ナイスです!なんて戦闘未経験者が言うことではないですね!ヒルダ先輩頑張って下さい!私に出来ることは今謎にやってる実況と応援をすることのみ!え?さっきから煩い?ハハッ、今に始まったことじゃありませんよ!
そこに間も無く、フィース君の創造魔法により創造された無数の剣が、ゼディアス様の元へと放たれる。フィース君いつの間にあんなに大量に剣を出せるようになったんだろう?フィース君の成長にリンゼルお婆ちゃんはついて行けません!
迫りくる無数の剣たちは、ゼディアス様の創造した大きな障壁により、防御されてしまった。
あーやっぱり防がれちゃったか……そんな簡単に攻撃を受ける訳ないですよねぇ…。
あ~…あれ?何だか、少し、目蓋が、重い……
目がチカチカする……どう、して……?
み、みんなの戦いを、ちゃんと、見届けなきゃ…いけない、のに……。
そう考えながらも、私は気が付けば目を閉じて意識が遠退いていくのを感じていた。
「おいっ、無能!」
あぁ…バイ、カ、少、年の、声が、する…。
バイカは足早にリンゼルの元へと駆け寄った。
「チッ、気絶しちまったか…。いやまぁ仕方ねえか、さっきまであの野郎と対峙していた上に、首を絞められていたからな…」
流石に体力的にも精神的にも限界だよな…。
「チッ、しゃあねえ…」
運ぶか…。
俺じゃ三人の足手まといに成りかねない。とりあえず、コイツをこの場から離すか…。
四人の戦いは続く。
ゴゴゴゴッ
けたたましい音が鳴り響いて、ヒルダ達は直ぐ様その音の方へと目を向けた。
その音の主であるガイエルが、高度な土の上級魔法を使い、ゼディアスの足元の地面をボコボコと激しく壊していく、その隙を見てヒルダは再度、拳に魔法を込め、その拳を強く握り絞めながらゼディアスに襲い掛かかっていく。
そして同時に、詠唱を終えたフィースが先程の剣とは違い、より威力を上げた魔剣を大量に創造してゼディアスの背後へと放った。ヒルダの拳を避けられないようにするために。
前からヒルダの拳、後ろからフィースの召喚した魔剣が迫り来るのを、ゼディアスはどこか冷めた表情で見ていた。
「ふん……」と、鼻を鳴らし、ゼディアスの姿が突如目の前から消えた。
二人の攻撃は外れた。
ヒルダは攻撃を止め、直ぐ様辺りを見渡したがその姿は見当たらない。
フィースも少し遅れ、辺りを見回すが、ガイエルの「上だっ!」と叫ぶ声に同時に天を見上げた。三人の頭上には魔法で創造されたであろう黒光りした巨大な針の様な物が、ズラリと埋め尽くされ、天井からそれは瞬く間に鋭い風切り音を立てながら三人へと降り注いだ。
ガイエルは咄嗟に二人にバリア魔法を展開し、回避を図った、だが幾つかの針がその障壁を貫通し、退避が遅れたヒルダの右肩へと突き刺さった。
「ヒルダッ!?」
ガイエルは自分が作ったバリア魔法が咄嗟に展開した為に、強度が甘く未完成だとわかっていた。そのバリアのせいで、退避が遅れてしまいヒルダを傷付けてしまったことを、深く後悔をしていた
「ぐぅっ…」
ヒルダは、貫かれた肩を抱き、苦痛の表情を浮かべながらも直ぐに自身の右肩に回復魔法をかける。
フィースはギリギリで避け、頬にかすり傷が残った程度だ。
だがまだまだ、ゼディアスの攻撃は止まない。姿の見えなかった筈のゼディアスが突如、ガイエルの目の前に現れ、禍々しい魔剣を右手にガイエルへと襲い掛かかった。
ゼディアスはこの戦闘の中、まず魔法に長けており、遠距離攻撃とバリアのサポートを持つガイエルを一番先に潰そうと考えていた。
凄まじい魔力を纏いながら迫りくる魔剣がガイエルの視界に入り、そして攻撃を食らうその寸前で自身へとバリアをかけた、だがゼディアスのパワー、そして魔力はそれを簡単に凌駕して、一瞬で粉々に破られてしまった。物の簡単に破られことに対し、改めて畏怖の念を覚えながら、ヒルダとフィースの二人がガイエルのフォローにまわろうと直ぐ様、駆け寄ってくる姿が目に入った。
そして次の瞬間、激しい痛みと共に、ガイエルの身体に魔剣が貫かれた。
ガイエルは酷い痛みに眩暈を覚えながら、大量の吐血をしながら貫かれた自身の身体に手をおいた。
「ゼエッゼエッ」
息が、苦しい。自己回復が追い付きそうにない。深い傷口から抑えても抑えても溢れ出る鮮血が、これは重症だと物語っていた。
「……ハァアアアアッッ」
ヒルダは咄嗟に破壊魔法を拳にありったけ注いでゼディアスへと向かっていく。激しく頭に血が上っているのを感じながら、瞬間ゼディアスが少し後退するのを見て、直ぐ様ガイエルの元へと回復魔法のために駆け寄っていくが、ガイエルへと向かうヒルダを、ゼディアスが許すわけがなく、妨害するように黒い魔球達がヒルダを追いかける。ギリギリの所で何とか避け続けるが、ガイエルの元に辿り着けない事にどんどんと焦りとイライラが募り、ヒルダの顔は苦く歪んでいった。
「チッ…」
苦虫を噛み潰したような表情で、ヒルダは舌打ちをした。
後方に控えていたフィースがそれを耳にしたと同時に、すでに造り終えていた大量の大砲を、ゼディアスに向けて、全力で撃ち放った。
「いけえええええっ!!」
フィースは叫んだ。
だが、ゼディアスはそれを無表情のまま、避けることも防ぐことすらせず、もはや避けることを面倒くさがるように、その大量の大砲をその身に喰らっていた。そして大きな衝撃波と地鳴りが響き渡る中、ゼディアスの姿は灰煙に消えたように思えたが、何事もなかったように無傷のままそこに立っていた。
「そんなっ…!?」
フィースはひどく怯えたように驚いている。
「ホント……貴方は、規則外すぎるのよ…」
ヒルダは何処か複雑そうな表情で吐き出した。今もなおガイエルの傍で回復魔法が出来ないことに苛立ちが募りながら。
「……これで、終わりか?」
ゼディアスは変わらず無表情で、二人に問いかける。
二人は息を飲みながら、悔しそうにその姿を睨み付けた。
そして、あまりにも自分達の攻撃が効かないでいるこの状況に、次にどんな攻撃をすれば良いか、手を打てずにいた。
すると、
「終わり、ませんよ…」
青年の掠れた声が聞こえた。
バンッと、銃声の鳴り響く音がヒルダ、フィース、ゼディアスの耳に入る。その瞬間、ゼディアスは気配が弱まっていたガイエルの声を背後から聞いたと同時に、自分の背中に鋭い痛みが走ったことに驚きその痛みがする方へ手をやると、血がベッタリと付いていた。どうやらゼディアスは背中からお腹にかけて拳銃の弾に撃ち抜かれたようだった。
後ろを振り返ると、横たわり血を吐きながらも、しっかりと拳銃を握り、ニヤリと笑っているガイエルの姿があった。
「な……に……?」
「ふふ……ほんの少し……油断、しましたね……【アクセラレーション】ッ!!」
そう言いながら、何かの魔法名を叫ぶガイエル。
ゼディアスはその瞬間、自身の身体がドクンと脈を打ち、起こり始めたそれに目を見開いた。
「っ……これはっ…」
それは、“禁忌術”の類いだったからだ。
【アクセラレーション】、この力は時の魔法。
時の上級魔法であり、本来ガイエルは時の魔法は適正ではないため使えない筈だった。ガイエル自身の能力は、土、火、水、風、防御、攻撃力上昇、魔力上昇のバフ等々を使えるオールマイティーな魔法使いだ。
元々、時を操る魔法は、賢者クラスの偉人か化け物レベルでなければ操れない代物。ガイエルがどれだけ強くても、そう中々使えるものではなかった。一般人が使うと反動で代償が付いてくる。例え吸血鬼の身体をしているからといって、決して容易く扱って良い代物ではない。禁術の類いだ。
ガイエルはゼディアスと戦う以前から、戦争や色々な日用調達をする際に、禁忌術の本を探し続けており、それを見付け出し、主人の目を掻い潜っては、禁忌術書を読み込み学び続けていた。そして上級の、時の魔法を習得をしていたのだ。
バルトがかけた命を削る魔法を、ゼディアスは、食い止めていた、その魔法があと少しで解除出来るという頃に、眷属達の反乱が起きた。正直ゼディアスも焦っていただろう。だからこそ、針の様な隙が生まれた。
その命を削る魔法を食い止めていた所を、ガイエルの時の魔法で再び動かし始めた。
バルトの決死の呪いの魔法を、ガイエルが、バトンを受けとる(繋ぐ)形で、再び命を削り始めた。不覚にもガイエルとバルトの二人の共闘の様な形にはなったが、幼馴染みの腐れ縁が成した最後の軌跡と言うべきなのか。
「ぐぅっ……なんだっこれはっ!!?傷の治りが遅い……まさか、この弾はっ…教会の聖水を使っているな!」
ガイエルは酷い激痛と大量の出血で少しずつ霞んでいく視界の中、狼狽えながら声を荒げるゼディアスを初めて目にしていた。
「ハハッ……流石、ですね……ええ、その弾は教会の聖水と僕の魔力をブレンドさせたオリジナルの弾です……フィースの創造魔法で手伝って貰いました……いやぁ、良い後輩を持ちました……聖水は中々手に入れるのに苦労しましたが…ゴホッ…まぁお喋りはこの辺にしておきますか……貴方をそれで完全に仕留め切るとは思っていませんが、暫くは持つでしょう…」
「チッ、貴様の魔法で私にかけられている“呪い”を速めたかっ…!だが、その身体でそのような上級魔法、貴様の命も縮める行為だぞ!」
「ハァッハァッ……こんな時、だからこそ、ゴホッ…命を、縮める魔法を使うんですよ……ハハッ……只では、死んでやりませんよ…」
「フンッ……こんなもの、直ぐにでも解いて…」
「させるわけないでしょうっ!」
ゼディアスの言葉を遮って奇襲にかかるヒルダ。破壊魔法を込めた拳で全力でゼディアスに向かって振りかぶっていく。
「ガイエルが…!命をかけた魔法を早々に解かすわけないでしょう!そんな間もない内に貴様に拳を叩き込んで黙らせてやるわ!絶対にガイエルの魔法をっ…あの馬鹿の魔法を無駄になんてさせない!フィース君!ボーッとしてないで貴方も手を動かしなさい!」
ゼディアスとガイエルのやり取りにしばらく困惑し、ガイエルの状態が心配で、顔が青ざめて動けないままでいたフィースに、ヒルダが活をいれるように声をかけた。
「っ……うっうんっ!ヒルダお姉ちゃん!」
フィースはヒルダの言葉に答えるように創造の魔法で再び無数の魔剣を造り出し、ヒルダに続きゼディアスへと撃ち込んだ。
「フンッ……無駄なことをっ……捻り潰す!」
ゼディアスはその瞬間、今までにない程、低く鋭く響いた声で、禍々しい魔力と激怒を滲ませて、殺気を放つ。
四人の決死の戦いは、より強く、勢いを増して激しくなっていった……。




