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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
45/48

見つめる先《39》



大きな音が沢山する。

何がぶつかる?音、爆発音ような、耳障りな音がよく聞こえる…。


ちょっと煩いな……静かにして欲しい…。

私は眠たいんだ……寝かせてくれ……。


ドンッガンッガチャンッドッゴンッッ


もう……うる、さい、な……


「……ん…?」


あまりの音の煩さに目を開けると、星空が広がっていた。


「…わぁ……きれ、い…?」


あれ?何で私、星空眺めてるんだろう?いや、というかなんで地面に寝転がっているんだ?私?


「起きたか…」


私は寝転がったまま声のした方へ首を動かし目線を送ると私の目の前にバイカ少年が腕を組んで立っていた。


「バカ、くん?あれ、私…何をして……」


「何寝ぼけてんだ……あれを見ろ」


バイカ少年が呆れたような表情で私を見て、とある場所に指を指した。


「あれ…?」


バイカ少年が指を指した方へ目を向けると、此処より遠くの方でゼディアス様、ガイエル先輩、ヒルダ先輩、フィース君が激闘を繰り広げていた。


「ハッ!そうだ!今戦いの真っ最中だった!バカ君!今の戦況はっ!?私どれだけ寝てた!?というかいつの間に気絶してた!?私!?」


私はガバッと勢いよく起き上がった。


「起きて早々声がデケエなお前は……まぁ気持ちは分かるけどよ。心配すんな、まだ戦闘が始まって4~5分ぐらいだ。」


「そっ、か……一瞬だけ気絶してた感じかな?ハァーッ、焦った…。寝て起きたらみんな死んでたみたいな事になってたらどうしようって一瞬だけ想像しちゃったよ…」


「不吉なこと想像すんなよ…」


「ぁ……いや、ごめん…。ついつい最悪の方を想像しちゃって…」


「…ハァーッ……」


バイカ少年は呆れた表情で私を見て、深く溜め息をついた。


いや、ほんと、なんか、ごめんなさい…。


「まぁ、正直、俺もあの戦いを見ていると緊張するし、つい悪い方向ばかり想像しちまう…」


「……そっか…」


あれ?


「そう言えば、バカ君は何で此処にいるの?私も含めてだけど。此処、玄関の扉の近くだよね?今戦ってる4人の所から結構離れてるし…」


「それは…」


「……もしかして、私をあの四人の戦いに巻き込まれないように避難してくれた?」


「…まぁ、お前があの場に居れば、先輩方もフィースも戦いづらいだろうしな…」


「た、確かに…」


「それに……俺は、あの三人のように、ゼディアスの野郎に挑める程の力がねえことぐらい分かってる……正直、そんな大した戦力にならねえだろ……だから、俺は俺の出来る事をしているだけだ…」


「バカ君…」


決して、バイカ少年が弱い訳ではないんだ。どちらかと言うと眷属の中ではフィース君の次に上位に進化するかもしれないと期待の声が上がるぐらい、彼は戦闘に長けているし、自分の能力を客観的に見て、無為に強大な敵地に踏み込む事はしない。その場その場でちゃんと適切な判断が出来る。頭も悪くないのだ。


ただ、今回戦う相手が悪すぎただけだ。ゼディアス様は異常なぐらい強過ぎるんだ。あのお方ほど“化け物”と言う言葉が相応しい吸血鬼はいないだろう。


バイカ少年の判断は今回に置いてはとても良い判断と言える。無能にそんなこと言われたくないだろうけど、というか私を落ちてくる瓦礫や魔法の流れ弾が此方に来ないように守ってくれている。本当に有り難い。



私は、ガイエル先輩、ヒルダ先輩、フィース君達がゼディアス様と戦っているのを横目に考えていた。


相変わらず私の目にはあの四人の激闘している様子が見えなかった。早すぎて私のような無能には目で追いきれない。バルト先輩の時も思ったが、わりとみんなが戦っている間はとても暇……いやガイエル先輩達が命懸けの戦いをしているのにも関わらず暇だなんて言うのは失礼だって分かっているんだけど、せめて見えていたらハラハラしながらその状況を見守れるんだけど、ほぼ見えないからガイエル先輩達が天井に穴を空けて入ってきた所から見える星空を暫く眺めていたら、なんかもう星空見るの段々飽きてきたから星の数を数えていた。星空を数え始めるぐらい暇だった。


もう一度先輩方とフィース君の戦闘の様子を見る。うん、何も見えん…。あれれ?気絶する前は多少はみんなの戦いが見えていたんだけどな?急に目が悪くなった?


けたたましい音と共に地面が揺れて、物凄い勢いで建物が崩れてゆく姿しか確認出来ん…。まず物理的に少し離れた距離から見ているってこともあるから余計見えずらいんだろうな…っていう言い訳を置いておく。


なんかビュンビュンッ風のように何かが過ぎ去っていく感覚があるから、多分4人が戦っているのだろう……全く見えないけど…。ガイエル先輩ヒルダ先輩フィース君……マジで何処?


「ねえ、バカ君……」

「…ぁあ?なんだ?」

「4人の戦闘、全く何も見えないんだけど……バカ君は見える?」

「………」


バイカ少年、そんな残念そうな子を見るような冷めた表情で此方を見ないで。分かってたでしょ?私は無能の中の無能なのですよ?あの化け物クラス4人の命懸けの壮絶な死闘を私のような戦力外の無能吸血鬼が目視出来る筈がありません。


「ハァーッ、まぁあれだけすげえ戦いだからな、俺も辛うじてだが見えるぜ……あ~、今フィースが大砲ぶっ放した」


「そっか……うん?」


今フィース君が大砲ぶっ放した!?なに言ってるの!?えっ!?ちょっとどんな戦いか気になって来たんですけど!?私の目よ!今すぐ良くなれ!11.0とかになれ!私の左目と右目にかけられた呪いと祝福よ!今よ!今こそ覚醒する時よ!いやピーリフ(妹)そんな目的でこの目を授けた訳じゃないか…。ごめん、流石に無理言った…。






私は寝転がり、再びぼんやりと先輩方とゼディアス様の戦いを見守っていた。先輩方が決死の思いで戦ってる中、暢気に寝っ転がってるんじゃねえってバイカ少年に思われてそうだけど、いやごもっとも。だけど本当にごめん、流石にちょっと疲れてるんだ、私…。一応さっきまで殺されかける一歩手前だったし、此処に来てからずっと緊張しぱっなしだったから…。


それに、まだ私には“やること”があるから、それまで休憩させて。




ドンッガンッギンッボンッドゴンッ



相変わらず見えない戦いをボンヤリと眺めながら思っていた。



この戦いに終わりがあるのだろうか?



戦争があった時代でもそんなことを思ったものだが、何だかんだ戦争は終結した。長い長い戦いが遂に終わった。人間の敗北という形で。


先輩方やフィース君にはもちろん勝って欲しい。生き残っても欲しい。だけど、だけど……ゼディアス様は………。


私は起き上がる。


「お…おい、大丈夫なのか?」


私の目の前で立って周りを警戒していたバイカ少年が唐突に起き上がった私を少し心配そうにしながら問い掛けてくる。


あぁ、暢気に寝転がってる私に怒ってないんだ……心配してくれてたんだ…。何だか少し優しいバイカ少年にむず痒さを感じながら…。


「うん……大丈夫……ごめんね……手間をかけさせてしまって……あの四人の戦いに巻き込まれないように安全な所に運んでくれてありがとう。」


そう言えばバイカ少年にちゃんとお礼言ってなかったな、と思って遅ればせながらお礼を伝えた。


「いや……俺の方が謝らなきゃならねえ。わりぃ……俺はフィースを連れてきちまった……いやここまでの道中はフィースに連れて来られたんだが……えっと、そうじゃなくて、俺が言いたいのは、フィースを、説得出来なかった……先輩方とお前にフィースのこと頼まれたのに……すまねえ……約束を違えてしまって……」


「フフッ……ううん、もういいよ。君も沢山考えての“今”なんでしょう?そうだよね、先輩方二人だけを犠牲にしてフィース君が生き残る子じゃないってことは、正直私もガイエル先輩も想像出来ていたんだ。」


「そう、なのか…?」


「うん。何となく、来るんじゃないか?ってね…。ふふ、でも流石にバカ君まで居るのは予想外だった…」


頭の隅で分かってても目の前にすると、やっぱり驚いたけどね、“本当”に来たんだって…。


「わりぃ……何の役に立てねえことは分かっていたんだが……正直、やっぱ俺もフィースと同じく居ても立ってもいられなくてよ……気付いたらフィースと一緒に来ちまってた……」


「ふふ、そんなに自分を卑下にするものじゃないよ?バカ君はバカ君なりに私達を助けてくれているじゃないか?今私をゼディアス様と先輩方の戦いから巻き込まれないようにこうやって安全な所に運んでくれて、その上私を守ってくれている。少なくとも私はとっても助かってるよ…。まぁ、こんな無能を助けても、何の良いこともないけどさ…」


「……あぁ、本当に、そうかもな…」


「ふふ、バカ君は素直でいいね。私のような無能を助けても何にも返せないよ?歌でも歌ってあげようか?私にはそれぐらいしか誇れるものがなくてね…」


「いらねえよ、そんなんもん…」


「そんなものだなんて……酷いなぁ、私の唯一“失敗”しないものなのに…」


「………俺は、“借り”を返してるだけだ…」


「借り?私はバカ君に借りなんて作ったかな?迷惑かけた覚えしかないんだけど…」


「……テメエが覚えてねえなら、別にいい。つーか迷惑かけてる自覚あったのかよ?いつもへラヘラしてふざけた事しか言わねえから無自覚でやってるものかと…」


「えっ?もちろんバカ君に関してはずっとふざけ倒していたよ?バカ君限定でね?」


「おいっテメエッ!!やっぱワザとおちょっくってたかっ!!」


「ウフフッ…」


「ウフフッ、じゃねえんだよ!!ぶっ殺すぞ!テメエッ!!」


「誠に申し訳ありませんでした」


「流れように謝るんじゃねえ。物凄く自然に頭を下げたな…」


「謝り慣れていますので(ドヤッ」


「ドヤ顔で言うことじゃねえよ…」


「まぁ、私が君にどんな借りがあるのか覚えてないけど、過去の私に感謝しとくよ…」


「おう……感謝しとけ…」


「うん…」


「………」

「………」


「ねえ、バカ君……この戦い、どっちか勝つと思う?」


「それは……分からねえ…」


「アハハ……だよね…」


「分からねえ……けど、先輩方とフィースが勝つ。絶対に。」


そうバイカ少年は両手の拳を強く握り締めて真剣な眼差しで私に答えた。


「!……そうだね……三人なら、ガイエル先輩とヒルダ先輩、フィース君なら、きっと……」



私はバイカ少年にそう答えながら、ガイエル先輩ヒルダ先輩フィース君、そしてゼディアス様が死闘を繰り広げているであろう場所をぼんやりと見ていた。


無意識に、ガイエル先輩やヒルダ先輩、フィース君を探すより先に、“ゼディアス様”を見付けようとする自分が、何となく、嫌になるな、と思いながら…。




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