現れたのは…《36》
短めです。
「貴様っ……貴様らっ……この私を謀ったなっ!!」
そう叫び、顔を歪ませ、怒りで拳を強く握り潰し、殺意の籠った瞳で此方を睨み付けるご主人様(ゼディアス様)を見て、私はこの時、どんな表情で貴方(ゼディアス様)を見ていたのだろう?
「っ……」
気が付けば、ゼディアス様は私の目の前に立っており、有無も言わさずその手は私の首にかけられていた。
「ぐぅっ…」
私はゼディアス様に首を締め上げられ、苦しく声を上げる。
「………」
首を絞め上げられながらも私は薄目でゼディアス様を見た。
怒りと憎しみの籠った、暗い瞳をしていた。
あぁ、もうゼディアス様は、“私”を見ていない。もう、怒りと殺意と憎しみで目の前の私を排除することしか考えられていない。先程まで見せてくれていたあの“表情”は、もう見れないんだろうなぁ…。まぁ、そうしたのは私だけど、少しだけ、寂しく感じる…。
何でだろう?さっきまでの穏やかな時間が、本当に、夢のような時間だったからかな?
変だな……この人は私達の“敵”で、私達を奴隷にした張本人で、暴力を振るって、無理矢理戦争に出させて、最低で、最悪な人だと思うのに、心ではそう分かっているのに、どうして……。
「っ…………貴様っ……何故笑っている?」
「………ア、ハハ……」
本当に、どうして笑っているんだろう?
私は今、殺されかけている、この人に、ゼディアス様に。だと言うのに、私の心は、とても穏やかだ。先程と変わらず、私は笑っている、“いつも”のように、貴方(ゼディアス様)の前で、笑えている。
「っ………あぁ、そうだな、そうだ。お前は自殺志願者だったな!そうだっ、そうだった!お前はこんな時でも死にたがりを発揮するか!愚かで哀れな事だ!あぁそうだ!貴様は出会った時からっ………?」
「………フフッ…」
あぁ、“気付いた”みたいだ。
私の首にかけている手の力が少し弱まっている。さっきまでは怒りで頭が一杯になって周りがあまり見えていなかったでしょうけど、どうやら少し冷静になったのかな?
ふふ、不思議で仕方ないでしょう?
驚いた表情で此方を凝視するゼディアス様に私は思わずフフッ、と鼻で笑ってしまう。
今日は本当に沢山ゼディアス様の驚いた表情を見た気がするな。この100年の人生の中でこんなにご主人様の表情が動いた事があっただろうか?
「……どういうことだ?貴様……貴様何故……」
ドッゴーーッンッッ
すると突然大きな物音が屋敷に響いた。
「なっ……!?」
「ぇっ……?」
大きな物音がする方へゼディアス様と共に目を向けると……屋敷の壁を突き破って、大きな穴が空いていた。
そしてその壁の穴から出てきたのは………
「リンゼルお姉ちゃんっ!!」
美しく宝石のような蒼い瞳、睫毛は長く、サラサラの金髪が輝いている、まるで王子様のような美少年がそこに立っていた…。
「………へっ?………え゛っっ!??」
いや待てっ!その美少年メチャクチャ知っている美少年ですけどっ!!?
「フィー…ス、君っ!??」
えっ?へっ?フィース君っ!??
何故っ!?いや本当に何故っ!?
バイカ少年が連れて行ったのではっ!?
「あ~……よう?」
なんか気まずそうに額に汗かきながら「ごめん、来ちゃった☆」みたいな何処か悟りを開いた表情で手を上げて挨拶してるバイカ少年。
ってバイカ少年までっ!?
えっっ!??一体全体どうなってるのっ!?
明日投稿あります。




