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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
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町へ《3》

視点がリンゼル→ガイエル→リンゼル過去回想とコロコロ変わります。



  ガイエル先輩とヒルダ先輩に地下を案内してもらってから数日、私は町へ来ていた、奴隷が町に出れるのか?って?どうやら人間の血を頂く時は良いみたい、なんか絶妙に緩くてこれで良いのか?と思う時もあるけど、良いみたいだからやってきた。そもそもゼディアス様から逃げられる訳ないのだ。私達はゼディアス様に血を注ぎ込まれた時点で“血の盟約”?とやらがあるらしく、それが私達を縛り、必ずゼディアス様の元に帰ってくるように出来ているらしい。自分達が吸血鬼であること、誘拐された事なども喋れないらしい…血の盟約こわっ!


  まぁ難しい話は置いといて!今日は私が吸血鬼になって初めての“狩り”をする日なのです!




「ふぉおおおおおっっふんんんんっ………ほいっ!!」



  そして私はとある紳士の前で踏ん張っていた。決してウ○チをしている訳ではないです!断じて!!



「?……どうしたの?お嬢さん?」


「はっ!どうです!?お兄さん!私に何か感じませんか!?こう…クラッとくるとか見惚れるとか!!」


「いや全く何も感じないね」


「ふむなるほど!正直で清々しいっ!!」


  あっぶね!涙出るとこだったぜ!魅了の魔法全然効いてないね!!



「そうだ!せめてこの技は!貴方は私にお菓子をあげたくなーる~あげたくなーる~」


「お菓子が欲しいの?うーんと、ごめんね、今持ち合わせがなくて……それよりお嬢さん迷子?お父さんとお母さんは?」


「………うん!」


  洗脳魔法も失敗!というか掛かる気配一ミリもなし!!もう泣こうかなっ!!



「うん…?えと、キミ大丈夫?頭でも打った?」


「大丈夫です!正常かつ通常です!心配ありません!」


「あ、通常なんだそれ……いやだとしたら余計心配が増した気がする…」


「安心して下さい!立派な保護者が私を見守ってくれていますから!」


「あ、保護者さんちゃんと居るんだね?それは良かった……?…見守ってる?何処にいるの?」


「ハイ!貴方の後ろに!」


「えっ…」


  ガイエル先輩とヒルダ先輩がニッコリと笑顔で紳士の後ろに立っていた。



「チャーム(魅了)」


「ぁ…」


「おいで」


「ぁぁ…」フラフラッ


「今日のこと…彼女と会ったこと、出来事、私のこと、ぜーんぶ忘れて帰って下さる?」


「ぁ…ぁ………はい…わかりました…」フラフラ…



  フラフラと足取りが怪しく歩きさって行く紳士。



「お~!流石です!ヒルダ先輩!」


「ありがとうリンゼルちゃん…」


  いや~流石だな~先輩方は~もうアッサリと魅力と洗脳使いこなしちゃうもんな~。はぁー!私にはサッパリ出来ませんでしたけどね!



「「………」」


  おや?お二人とも突然無言になってどうしたのでしょう?



「ところでリンゼルちゃん……えーと、本気でやった?」


「勿論ですよ!本気で全身全霊で先輩達の言われた通りにやりましたよ!」


「うん、全力で空振っていたね……魔力の動きが全く感じ取れなかったよ…」


「んー、何故でしょう?」


「うーんと、リンゼル、魔力は感じ取れる?」


「なんとなーく?感じ取れるような、感じ取れないような……」


「そっか……うーん、そうだなぁ……」


「(思った以上に何にも出来ない子だったわね…)」


「(あ~そうだね…これは、その、初めてというか、こんな子も居るんだねぇ…)」


「?」


  お二人とも目配せしてどうしたんだろ~?あっ、前に言ってた念話ってやつかな?私もいつか覚えられるかな~?覚える前に死にそう~


  さてさて、そろそろ二人とも私が無能である事を察しつつあるはずだ……今後この“イイ人”達はどういった対応をするんだろう?


「………」



  彼女、またあの“目”だ……







『その内、分かるんじゃないですか?』


『えっ……』


『いずれ分かりますよ、私が言っていたこと』





  掃除や食事調達、訓練にマナー、力の使い方、彼女は何をやらせても全部ボロボロの結果で終わった。


  世の中にここまで出来ない子が居るとは、正直最初はふざけてるのかな?冗談なのかな?って思ったけど、どうやら彼女は本気でやっているらしい。ふむ、初めてのタイプだ…


  それに彼女のこの反応を見るに、彼女は自分を諦めているらしい…


  そうだろうな、ここまで出来ない事が多いと自信だって失くす、プライドなんてあってないようなものだ。




『お兄ちゃん』



  なぜ僕は今、妹と彼女を重ねた?顔も性格も能力も、何もかも違うのに……



『お兄ちゃんは、やりたいこと、ある?』


『え?唐突になんだい?やりたいこと?うーん、そうだなぁ……体力と健康を手に入れられたらフィーリアと友達と沢山遊べるようになりたいかな?』


『…そっか』


『急にどうしたの?そんな質問して』


『……何でも……何でもないよ……』







「……リンゼル…」


「はい!」


  さあどんな反応をするだろう?私はわりと、この瞬間が好きかもしれない……人が手のひらを返す瞬間を……だって、本当に、可笑しくなるんだもの……本当に………



「…大丈夫!時間は沢山あるよ、少しずつ自分のペースでゆっくり覚えていこう?せっかく僕達はヴァンパイアなんだ、時間を有意義に使っていこう?」


「………」


「そ、そうね!私達は血さえあれば何年でも生き残れるわ!リンゼルちゃんはリンゼルちゃんのペースで進んで行けば良いのよ!」


「………」



  どう、して…?



  どうして……そこまで……






  ~回想~




『ぁっ………………~っ……ちょっと待ちなさい!』


『………なんですか?』


『…家においで』


『………えっ…』


『君のような小さな子が一人で外に出るのは危ない』


『でも……』


『すまないね……大人の勝手な価値観や責任を君に背負わせてしまった……そうじゃな、君は無能かもしれん……じゃがね、そう何もかも捨てなくて良いんじゃよ?』


『………』


『頼りなさい……出来ないなら出来るまで頼りきりなさい…』


『でも、それじゃあ迷惑では……』


『………10才の子供が…迷惑も何もない……そうか、お前さんがそんなに大人びた子供に育ってしまったのは、我々大人の責任なのかもしれん…』


『そんなことは…』


『甘えて良いんじゃよ、甘えて良いんじゃ!そんな困ったような悲しそうな表情するんじゃない……大丈夫、お主のような子でもな、きっとお前さんの良いところを見つけて、一緒になってくれる人がおる。じゃからな、それまでワシの所でもう少し生きてみないかい?』


『っ……うぐっ』ポロポロッ…


『うむ……良かった……まだ涙を流せる力があるようじゃ……人としてその力があれば、まだ、生きていけるよ……涙を流せなくなってからが本当にしんどいものじゃ…』


『ひっぐ……うわぁあああんっ』


『よしよし……よー泣くんじゃ、沢山泣くんじゃ…泣いても良いんじゃよ……その後たんとご飯を食べて寝て、笑い飛ばせば良いんじゃよ、なんだこの不運はと、クソッタレ生きてやる!とな!』


『ひっぐ…ひっぐ…』


『……すまないね……大人は勝手だ……捨てたり、拾ったりする……でもね、悪いことばかりじゃない、きっと……』


『………』


『なぁ、綺麗事かもしれん、じゃけどな、お前さんの人生を、諦めないでおくれ……世の中、皆が皆、悪い人間ばかりじゃないよ…』


『………』


『リンゼルや、どうしたい?』


『………』


『お前さんが決めていい』


『……』


『無理にワシも引っ張らんよ』


『………』


『………私は…』


『うむ…』


「生きていて、良いのでしょうか?」


『………そうじゃな……それは…ワシが決められるものじゃ、ないな……お前さんは、本当に心から、死にたいかい?』


『…心から……それは、分からない、です………だけど、私は…この地獄で、生きていたくないって…よく、思います……


それでも、時々、夢を見るんです……いつか、私を、愛してくれる人が、現れるんじゃ、ないかって……』ポロポロ


『うむ…』


『夢を…見るんですよ……』


『夢を、見てもいい……きっと、お前さんを心から愛してくれる人が、現れるよ……今は、そうじゃな、少し、夢がサボっておるんじゃよ…』


『そっか……夢ってサボるんですね…』


『そうそう夢はおサボりさんなのじゃ…』


『……』

『……』


『いやまぁ、苦しいことはワシも分かっておるっ…』


『ふふ………ありがとうございます…村長さん………私に、まだ夢を見させてくれて……もう少し……ほんのもう少し、頑張ってみます!』


『そうか……うむ、良かった……』



  世の中は、分からないものだ……私のような無能に死ねと消えろと言う者も居れば、生きろと此処に居なさいと言う人間もいる……



  世界は、分からない……


  優しいのか、残酷なのか、


  私は、ずっと、探している



  でも、きっと私は、とても恵まれている……




  だから、ほんの少し、生きてみようかと思うんだ。




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