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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
38/48

後戻りは出来ない《32》



「ゼエゼエッ……つ、疲れたぁ……」


な、なんとか……屋敷に辿り着いた。

しんどかった~!た、確かに下山の方がしんどいって本当だな…。まぁ昼間フィース君達と沢山遊んだもんなぁ……下山すること忘れてて全力で遊んでたわ。そのお陰で下山する時に余力一切残してなかった。馬鹿だなぁ…私。


いや登山も大変だったけど、フィース君だったりヒルダ先輩の補助もあってわりと難なく登山の方はクリア出来た。


下山中、冗談抜きで、いやわりと本気で、引き返そうかな?って何度も思った。後ろチラチラ見まくってた!なんかワンチャンバイカ少年が引き返してくれないかな?って儚くも切ない願望を捨てきれなかった!!多分絶対叶わないであろうけどずっと願ってた!いま屋敷に到着して尚も思ってる!!未練タラタラだよっ!!


まっ、まぁとにかく、今日中に屋敷に辿り着けて良かった。


もう夜だけど……真っ暗だけど……。


うん!過ぎたことは忘れよう!とにかく任務遂行を果たさなくては!


あっ、その前に先輩達に連絡連絡。屋敷に着いたら連絡寄越すよう言われてたんだった!あぶねえ、疲れてて忘れるところだった。


「えーと……うん……この距離からでも【念話】可能みたい。よし、それじゃあ……」


(ガイエル先輩、ヒルダ先輩、屋敷に着きました。すみませんっ、大分遅くなってしまいました!)


(リンゼルか?そうか、無事に辿り着けたか…。時間は大丈夫だよ、想定内だ。此方も準備が丁度整った所だよ。流石に400近くいる仲間のみんなに刻まれている従属の烙印を一気に解除するから、準備に手間取っちゃってね…。今さっき解除する魔法の陣を作り終えた所だよ…)


(なんとか完成したわね……今みんなに陣に入って貰ってるところよ。ハァーッ……少し、疲れてしまったわ…。そうだ、リンゼルちゃんの方こそ大丈夫?疲れていない?)


(アハハ……すこーしだけ、疲れてますが、大丈夫です…)


嘘です、アホみたいに疲れてます。体力半分も残っていません。


(そっか…なら良かった。無理しないでね?って言いたい所だけど……“今日”に限ってはそうは言ってられないのよね…)


(アハハ…はい、そうですね…。今が一番の踏ん張りどころですからね…)


(リンゼルちゃん……みんなの刻印を消したら直ぐに向かうからね?それまで絶対に生き残っているのよ?)


(はい……まぁ、絶対の保証は出来ませんが、なんとか踏ん張ってみます!)


(……リンゼル…)


(どうしました?ガイエル先輩?)


(………“フィーリア”を、頼んだよ…)


(!……はい、分かりました…)


私は先日ガイエル先輩とヒルダ先輩と話した内容を少し思い出しながら笑顔で答えた。


(リンゼルちゃん…ごめんなさいね、最後まで貴女にお願い事ばかりしてしまって…)


(アハハ……大丈夫ですよ。お二人には沢山助けられて来ましたから。むしろやっと先輩方に恩返しが出来ると思って私は嬉しいですよ?)


(そっか……だったら、良かったのだけど…)


(リンゼル……ありがとう…。僕達の個人的なものまで…)


(だから気にしないで下さいって!これぐらいお安いご用ですから!“伝言”ぐらいなら私でも出来ますからね。フィーリアちゃんを探しだして救う力はありませんけど、私が万が一生き残った暁にはお二人の“言葉”は必ず伝えてさせて頂きます。まあ、出会えたらの話ですが…)


(うん、その辺は僕らもあまり期待していない。こればかり“運”だからね…。それでも、“賭け”てみるだけならタダだろう?)


(はい、私もその“賭け”に乗ったからには全力で生き残ってみせます!)


(あぁ、頼んだよ…。でも無理のない範囲で、だよ?)


(はい!分かりました!)


(リンゼルちゃん…)


(はい!何でしょうっ?ヒルダ先輩!)


(……大好きよ?)


(………ファッ!?!?えっ!?唐突の告白っ!?)


(ウフフ、もちろん仲間として、妹分として、そして、“家族”として、リンゼルちゃんのことを大好きってことよ?)


(………)


(祝福も呪いも関係ないわよ?)


(えっ…)


(確かにリンゼルちゃんを祝福の魔法でフィーリアと重ねる事があっても、リンゼルちゃん自身を大好きなことと、それは関係ないわよ?)


(だけど…)


(…確かに少なからずとも“そういった部分”もあったかもしれないけど……私はね、リンゼルちゃん自身を大好きになったのよ?これは本当の本当。信じてもらって構わないわ)


(………)


(だからお願い……お願い事ばかり本当にごめんなさいだけど、これが本当の最後のお願いよ……


私達の大好きな大好きなリンゼルちゃん、



どうか、どうか……


生きて、生き残って。



そしたら、また一緒にみんなで遊びましょう?


ガイエルと、私と、バイカ君と、フィース君と、子供達のみんなで、吸血鬼の仲間のみんなで、また馬鹿やって遊びましょう?)


(っ……グスッ…)


私はポロポロと目から涙が溢れる。


(ね、約束よ?)


(ひっぐひっぐ………はいっ……やぐっ…約束でずっ!約束じまず!私もっ、ヒルダ先輩と、ガイエル先輩がっ、大好きでした!いいえ、これからも、大好きです!!)


(うん…うんっ……ぐすっ……ありがとうっリンゼルちゃん!また会いましょう!)


(はいっ!)


(………言いたいことはヒルダが全部言ってくれたから、僕からは短めに。リンゼル、僕達が屋敷に付くまでは何とか、踏ん張って生き残るんだよ?絶対に直ぐに助けに行くから。リンゼル、人にしても、吸血鬼にしても、みんなね、生きている限り、“独り”には早々ならないんだ。何だかんだ誰かと関わって生きて行くことになる。その中にね、きっと君が無能でも受け入れてくれる人が必ず居るはずだ。例えそれが祝福の魔法のお陰でも、それはきっかけに過ぎない。それをきっかけに君を知っていけば良いんだ。僕達みたいに、ね?君を好きになってくれる人が、きっと現れる。だからね、リンゼル、君は“独り”じゃ、ないからね?それをしっかり頭の片隅に置いておくんだよ?忘れないでね?)


(っ……はい!)


(ハハッ、結局僕も少し長くなってしまったね?)


(仕方ないわよ。それだけ私達には沢山の思い出が出来たってことでしょう。その分気持ちが溢れてしまうのは当たり前よ…)


(そっか……300年も生きたら、思い出も何もかも抜け落ちて、忘れていくものだと思っていたけど、リンゼルと出会ってからのこの100年間の思い出は、鮮明に覚えているものが多い……そうか、僕も結構…楽しんでいたのかもな…)


(ガイエル……ええ、私もよ)


(……お二人とも…)


(………うん、話はこの辺にしておこうか?名残惜しくなってしまう…)


(そうね…)


(そうですね…。それでは、お二人とも、お気をつけて。また会いましょう!)


(ええ、リンゼルちゃんも気を付けて。いってらっしゃい!)


(はいっ行ってきます!)


(……お互い、頑張ろう。何としても、“何に変えても”……もう、後戻りは出来ないのだから…)


(……ええ、分かっていますとも…)


私は少し、声を落として返事をした。

最後に話したガイエル先輩の言葉は、“私にだけ”伝わるように念話のスキルで伝えてきたな。ヒルダ先輩には多分聞こえていない。


「………」



行くしか、ないんだ。“進む”しか、道はないんだ。もう、戻れない。ガイエル先輩が先程言ったように、もう後戻りは出来ないのだ。



先輩方と念話の通話を切って、暫く無言で屋敷の玄関の扉をジッと見つめていた。



そして、私は深く深呼吸をした後、覚悟を決めて、玄関の扉のドアノブに手をかけて、扉を開いた。



さあ、“此処”からの“脱出劇”の始まりだ!






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