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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
36/48

ピクニック《30》



ザッザッザッ



「うわあー綺麗~!」


「そうだね~!」



  私達がいま見ている世界、それは地面一杯に広がった沢山のお花たちであった。


  花びらが舞い、とても幻想的な光景が広がっている。



キャッキャッ



  私達は今なんと!吸血鬼のみんなと一緒にピクニックに来ています!!しかも昼間に!


  なんと!フィース君の【創造】のスキルで開発した吸血鬼専用の日焼け止めの薬を使って下位吸血鬼のみんなは昼間に外に出られるようになったのです!フィース君凄すぎない!?何処まで行くの!?あなた!?



  えっ?いきなりなに言ってんだ?急展開過ぎる?ハハッ!それは私も思った!なんとガイエル先輩とヒルダ先輩がみんなでピクニック行こうよってお誘いがあり、もちろん私達は尊敬する先輩方のお誘いなので、みんな即オーケーを出した。フィース君が作った日焼け止めがあることだしね!せっかくだから昼間に出かけることに!


  実はゼディアス様の住む屋敷の裏手は山で、その山を登っていけば、なんとお花畑が広がっているのでした!まさかこんな近場に素敵スポットがあるとはリンゼルは先輩方から聞くまで知りませんでした!本当にすっごく驚きましたよ!まさにピクニックするには最高のスポットですね!


  そして今、お花畑の世界を駆け回りみんなで自由に楽しく遊んでいる。ヒルダ先輩やガイエル先輩はシートを広げてお茶やお菓子を出して寛いでいる。


  えっ?なんでこんなに平和にやってんだ?って?どうやら戦争が終結して一段落したからみんなで打ち上げしようぜ!みたいな会らしいです!ちなみにゼディアス様の許可も下りています!まぁ、“明日”ロネス博士の研究所に私達が引き渡されるから、ちょっとしたお目こぼしみたい感じで、今日のピクニックは許された。最後ぐらい自由にしてやるか、みたい感じかな?いや~毎度ながらゼディアス様って私達に緩すぎますよねえ……本当に我々に興味ないというか……いや、どちらかと言うと、遠ざけてる節すら感じる時がある……気のせいかな?


  いや~それにしても、まさかまさかの400年も続いた戦争がまさかこの年で終結してしまうとは、リンゼル本当にビックリですよ~!


  まぁ周りの吸血鬼のみんなも驚いていたけどね!下位の吸血鬼のみんなは最初に戦争が終結したって聞いてた時、嘘!?信じられん!みたいな顔をしてた人達が多くて面白かったな~!いや私も最初にガイエル先輩とヒルダ先輩に聞いた時はみんなと同じ反応してたんだけどね…。


  しかも人間側の敗北という!まさかまさかの結末で衝撃が凄かったですよ!


  いやはや、これで平和になった世界でみーんな平和に幸せに暮らしましたとさ!って、終わればどれだけ良かったことか……。



「ハァーッ…」


「リンゼルお姉ちゃん?」


「フィース君…」


  お目目パッチリ、睫毛も長い、蒼い目とサラサラの金髪が輝いておる……うーん、見れば見るほど美少年。いつ見ても眼福だね~。



「どうしたの?溜め息なんてついて?」


「いや~まぁ、やっと戦争が終わったんだな~って……長い、長い戦いだったから……こう、思わず溜め息が出ちゃってね…」


「そっか……リンゼルお姉ちゃんは100年間も戦争の行く末を見てきたんだもんね…」


「あはは……そうだねえ…長いこと見てきたよ…」


「でも今日はやっと戦争が終わって平和になったんだ!みんなで楽しく遊ぼう!リンゼルお姉ちゃん!」


「…うん!そうだね!今日はとことん楽しもう!」



  うわーい!みんなで駆けっこ駆けっこだ~!あっ、直ぐ捕まった。ですよね…。


  ちなみに捕まった者は、花の檻に牢獄される。蔦が伸びて四角い牢が一つ出来ていた。所々蔦から生えている花が綺麗だな~…。


  つーか誰だ?花の檻作った人?すげえ完成度なんですけど?えっ?フィース君が作った?ん?フィース君スゴくね?ていうかフィース君って手のひらサイズまでしか《創造》の魔法出来なかったのでは?え?あれから沢山訓練して手のひら以上に大きなものでも《創造》して作れるようなった?なにそれ聞いてないスゴすぎるコワイ。


  いや~フィース君の成長がまだまだ続きそうだね~!アハハ~……ホント、底が知れないな…。何処までいくんだろう?この子?天まで?


  うん、考えるのは止めとこう…。本当に天まで上り詰めそうで恐い。最終的には神々とか魔王とかと戦っちゃったりね……


「………」


  マジでそうなりそうな未来一瞬見えちゃった気がするから、想像はこれぐらいにしよう!考え止め!寝よう!いや遊びに来てるんだから寝ちゃ駄目だ!まあそれも有りっちゃ有りだけど!


  うーん、だけど暇だな~捕まっちゃったし、やることない。やっぱ寝るか?


  そうだな~、お花沢山あるし……花冠でも作ろうかな~?


「ん~……これをこうして……こう?」


  おや?おやおや?なんかイビツな形をした花冠出来たな……なんで?


「んぬぬ…?こうか!アレ?違う?」


  下を向いて花冠作りに悪戦苦闘していると、首が痛くなってきたので顔を上へあげると、知り合いを見つけた!


  あっ、あそこにいるのはバイカ少年だ!


「おーい!バカくーん!」


  私は手を振りながらバイカ少年を呼ぶ。


「あん?誰だっ俺のことバカって言ったやつ!?なんだ無能か……つーかお前なんで花の檻に入ってんだ?」


「フィース君と下位吸血鬼の後輩の子供達と鬼ごっこしてたら早々に捕まってフィース君が作った花の檻に収監されました…」


「ブフッ……お前にお似合いの場所だな?無能?」


「バカくんも入るかい?」


「ハンッ、誰が入るかよそんなところ!テメエは一生その牢獄に捕まってろ!」


「うえーん!後輩が苛める~!」


「ハッ、言ってろ!」


ニヤリ

「ふっ、油断したな!」


「なにっ!?」


「フィースくーん!どうやらバカくんも一緒に鬼ごっこで遊びたいって言ってるから入れてあげて~!」


「ハアッ!?テメッ何を言ってっ…」


「え~?バイカお兄ちゃんも鬼ごっこで遊んでくれるの~?ヤッター!いいよ~!大丈夫~!」


「ちなみに今、鬼はフィースくんだからね?(ニッコリ)」


「なっ……おい俺は参加するなんて一言もっ…」


「じゃあバイカお兄ちゃんも加わったことだし、もう一回数えるね~!いーち、に~い、さーん……」


「おい聞けよっ!?……チクショウ!逃げるしかねえ!」


「ガンバ~バカくーん(ニヤニヤ)」


「テメエッ……後で見てろよ!」タタッ


「はーち、きゅーう、じゅうっ!よーし、行くよ~!」ダッ


「フィースくん!バカくんはあっちに逃げました!」


「そうなんだ!教えてくれてありがとう!リンゼルお姉ちゃん!」シュンッ


「どういたしまして~( ´∀` )b」


「おいコラッ糞無能~っなに教えてんだ!?って、はええっ!来んのはええよ!フィース!待てまてまてまってえ!?」






「じゃ、バイカお兄ちゃん、ここで大人しくしててね」タタッ


「………」


「ようこそ~!花の牢獄へ!バカく~ん?」


「………」


「どうだーい?花の檻に入れられた感想は?」


「ぶっ殺す…」


「アハハ!負け犬の遠吠えだね!バカ君もこの花の牢獄にとっても似合ってるよ!」


「殺す…」


「あら?この子もう殺意しか宿していない。そしてもしかして私判断間違えたかな?いま同じ檻に入ってるってことは私殺されね?」


「チッ……アイツ、フィースのやついつの間にあんなに身体能力上げてやがったんだ?【身体強化】のスキル使う間もなかったぜ…」


「アハハ~フィース君の成長は目覚ましいよね~」


  私はそう話ながら二つ目の花冠を製作をしていた。


「…テメエは何を作ってんだよ?」


「え~?花冠だよ?そう見えない?」


「……そのグチャグチャになった花が、か?」


「へ?あれ……何故こうなった!?」


  またイビツな形の花冠が完成した!あれ?なんかさっきより花萎れてね?何故?


  なんだろう…よく見ていると、呪いでも宿ってそうな可哀想な状態の花冠が出来たな……もうこれある意味才能では…?


「バカくんこの花冠被るかい?」


「誰がそんなきったねえ花冠なんか被るかよ!!」


「そっか~じゃあ私が被ろう!」


「ハッ、テメエにはその汚ねえ花冠が似合いだな…」


「あっ、そう?似合う?ありがと~!」


「褒めてねえからな!?ハァ、お前と話しているとなんでいつもこうなんだ…」


「フンフーン♪」


「またきったねえ花冠の製作に戻ってんじゃねえよ…」


「次こそは成功するさ!」


「……無理だろ…」


  呆れた表情のバイカ少年。

  そんなのやってみないと分からないじゃないか!リンゼルは頑張って美しき花冠を作り上げるのです!




ガヤガヤガヤッ



「わあ~捕まった~!フィース早いよ~」

「いつの間に居たの!?フィース!?」

「ゼエッゼエッ……ここまで逃げれば……ってギャアアアッ!?」

「みんな、つーかまえた!」


  花の檻の外でみんながワイワイと喋る様子が聞こえてくる。フィース君が着々と逃げている子供たちを捕まえているようだ。なんか最後ホラーみたいになってなかった?気のせい?







「……なあ、無能…」


「ん~?」


「………なんでもねえ…」


「?……あ、やっぱりこの花冠欲しくなった?」


「欲しくなるか!んなもん!燃やすぞ!その花冠!」


「いやぁああっ止めてええっこんなんでも丹精込めて作ったんだよ~!?」


「丹精、ねえ…」


「フフン♪沢山この花冠作って捕まった子供達に配るんだ~♪」


「……新手の後輩イビりか?」


「なんで!?花冠渡すだけだよ!?」


「もう嫌がらせだろ、そんなきったねえ花冠渡されたら…」


「そんなっヒドイ!そっ、そんなことないよ!なっ、ないよね?」


「馬鹿じゃねえの…」


「えっ……バカ君がその言葉使う?」


「だから俺はバカって名前じゃねえって言ってんだろうが!?」


「アハハッ」


「笑ってんじゃねえよ!?」


  チッ、コイツといると、本当に調子が狂う。つーかまだ懲りず花冠作ってやがる。誰がそんなもんいるかっつーの。



「よーし、次こそは上手く作るぞ!」


「………(もう何も言わん…)」


「え~と…ここをこうして…それでこれをこうして…こう!あれ?なんか違う?何故こうなるんだ?」


「…ハァーッ……おい無能、その花冠よこせ」


「えっ!やっぱり欲しくなった?」


「ちげえわ!そんなゴミみてえな花冠いるか!」


「ゴミッ!?リンゼルショック!!」


「あーうるせえな……作り直すんだよ…」


「作り直す?えっ、これって修復可能なんですか?先生?」


「自分でもそう思ってるぐらいヤベエもんなら何度も作るじゃねえよ!?つーか誰が先生だ!?」


「フッ……仕方ないじゃないですか……作ったら、なんか出来ちゃったんですから( ´,_ゝ`)」


「フッ、じゃねえよ!?つーか何なんだその顔は?腹立つな!そんなふざけた表情で言ってもテメエがゴミを作り出している事実は変わらねえんだよ!」


「エヘヘ…(照れ照れ)」


「なんで照れてんだよ気持ちわりぃ!どの辺に照れる要素があった?褒めてねえからな?お前の耳はあれか?ゴミでも詰まってんのか?」


「これが100年間長く生きる為のコツなのさ!何事もポジティブに捉えること!」


「ポジティブ過ぎるだろ……ハァ、んなこと言ってる間に出来たぞ、ほれ」


「わあ~!すごい!どうなってるの!?あのゴミみたいな花冠がこんなにも綺麗に!?」


「自分でもやっぱりゴミみたいだなって思ってたのかよ…」


「ぁっ…」



「クッ……アハハハッ!」



  俺は思わず声を出して笑った。




「………バカ君って、そんな風に笑うんだね…」


「あ?なんだよ、悪いかよ…」


  チッ、思わずコイツのいる前で爆笑しちまった。あー、チクショウ……不覚すぎる。



「いや、うん……バカ君って笑う子なんだなって…」


「ハッ、俺が心がない奴とでも言いたいのか?」


「うーん、そうは言ってないけど……ごめん、ちょっぴり思ってた!」


「おいっ!」


「アハハッ!ウソウソ!ジョーダンさ!」


「………」



  前は“しょうもねえ死に方晒すんじゃねえぞ”なんて同情めいたことを思っちまったが、撤回しよう…。




  今すぐクタバレ糞無能!!










「それにしても、本当にこの花冠、私にくれるの?」


「俺が持ってても似合わねえだろ…」


「えっ……メチャクチャその顔に似合うと思うけど?鏡見てきな?君のその可愛らしい顔に花冠とか似合いすぎて怖いぐらいだと思うよ?」


「テメエもう一度俺に“可愛い”って言ったらぶっ飛ばすからな?」ゴゴゴゴッ


「ひぃっ!ごめんなさいっ!!」


  圧がぁ!圧が強すぎるよ~!


  うっ、うぅ……そんなに嫌か、“可愛い”って言われるの…(シクシク)。


  これからも隙あらば言い続けよう。←(懲りない)





「チッ……ハァーッ……」


  舌打ちに溜め息というコンボを決めたバイカ少年、大分疲れてきているな。そろそろからかうのは止めるか。


「バカ君、花冠、ありがとう!大事に使うね!」


「……勝手にしろ」


  バイカ少年はそっぽを向いた。もう話す気はないってことかな?



「それにしてもまさかあの花冠がこんなに綺麗になるとは、凄いな~!バカ君って器用だね~!」


「………」


  あ、やっぱりもう話す気はない感じかな?


  ふう……私も、少し休むかな。久々にバイカ少年と会話の殴り合いしたからな~、あー楽しかった!


  あ、そうだ!せっかくバイカ少年が作り直してくれたし、今被ってるのは私が最初に作ったイビツな形の花冠だから、バイカ少年が作り直してくれた花冠と交換するか。



「ふむ……鏡がないからどうなってるか分からん…。ちょいとバカ君、もう話したくないことは分かっているけど聞くね、これって私に似合ってる?」


「………似合ってねえ…」


「そっか~…まぁこんな綺麗な花冠、私に似合うわけないか!なら最初に作ったイビツな花冠の方が私に合ってたかもね~」


「……だろうな…」


「ふふ、だけど一体どういう風の吹き回しなの?バカ君?花冠、作り直してくれるなんて。いつもはほっとく事が多いじゃない?何かの気まぐれ?」



「………お前……行くんだろ?この後……“アイツ”のところ……」


「………」


「そんなきったねえ花冠被って行くよりは良いだろうと思っただけさ…」


「……そっか…」


「………フィースには、言ってないんだろ?この“作戦の詳しい内容”までは。」


「うん、そうだね……あの子は、“優しい”から……きっと止める。」


「……アイツは、何でか知らねえけどお前のこと気に入ってるからな…」


「……そうだね…」


  それはきっと、ピーリフの祝福の魔法のお陰なんだろうけど……バイカ少年が知るわけないか。



「?……よく分かんねえが……無能……」


「ん~…な~に?」


ボソッ

「………気張れよ……」


「へっ?なんて?聞こえなかった!もう一度言って~?」


「っ~……なんでもねえよ!」


「え~?何故に逆ギレ?」


「うるっせえ!」


ガヤガヤガヤ


「あっ、フィース君に捕まった子達が来たみたいだね……って全員捕まってない?」


「フィースの野郎、手加減を知らねえな…」


「ふふっ、いくら天才って言ってもフィース君もまだまだ子供だからねえ。何事も全力でやっているんだよ。今はそれで良いんだよ、子供の成長は伸び伸びと伸ばして見て行かないとね?」


「保護者かよ…」


「保護者みたいものさ。これでも100年も生きた大人だからね?」


「お前が言うと実感も沸かなければ説得力もねえんだよな…」


「まぁ見た目は子供のまんまだしね~…」



「リンゼルお姉ちゃーんバイカお兄ちゃーん!終わったよー!次なにして遊ぶー?」


  フィース君がこちらに手をブンブンと振りながら、次の遊びの話をする。


「アハハ!元気だね~フィース君!そうだな~?次は“かくれんぼ”とかどう?」


「いいね!それにしよう!」


「よーし!私はかくれんぼは得意だぞ~?」


「嘘つけよ!無能!」

「アッサリとフィースに捕まってたやつがなに言ってんだ!」


  一緒に遊んでいた下位吸血鬼の子供達からブーイングがきた。


「お黙り!子供たち!!」


「へえ~!リンゼルお姉ちゃんってかくれんぼ得意なんだ!」


「フィース君は素直で良いね~!フッフッフッ、何を隠そうこの(わたくし)!何事も逃げて隠れてばかりの人生だったから、かくれんぼは得意なのだよ!」


「誇らしげに語ることじゃねえよ…」


  バイカ少年が呆れた顔でこちらを見ている。あれ?何故そんな表情で私を見る?


「おー!」


  フィース君は多分何も分かってないのだろう、パチパチと手を叩いて凄いっといった表情でこちらを見ている。ふっ、照れるぜ!


「フィース?コイツはそんなに大したこと言ってねえぞ?胸張ってるけど、カッコ悪いことサラッと言ってるだけだからな?」


  しっ!余計なことを言うんじゃない!バイカ少年!





フィース

「よーしとにかく、ジャンケンでまた鬼を決めよう!」


「「「おー!」」」



「私は多分負けるから隠れることは確定している!つまり隠れることに専念すればいい!」


「お前……たまに物悲しくなってこねえか?」


「やめてっ!必死で見ないようにしているの!!涙を引っ込めているの!現実見せないで!」


「………」


「じゃあ次はジャンケンで負けた人が鬼ね~」


「終わった……私がみんなを見付けられるわけないんじゃん……」


「なんでお前が鬼確定みたいなこと言うんだよ…」


「私、人生でジャンケンに勝ったこと一度もないもの……私の人生はいつだって負け戦だったわ。フッ……(悟った表情)」


「………」


「よーしいくよ~!ジャンケンッ…」


「あー、待て、俺が鬼やる…(コイツ(無能)が鬼になったら一生見付けられないし時間を死ぬほど食うだろうし、なら俺が鬼をやった方が早い。)」


「え~!なんで~?」


「バカ兄ちゃんどうしたのさ?」


「誰がバカ兄ちゃんだっ!訂正しろ!」


「あっやべ!つい口が滑っちまった!」


「良い具合に浸透してるね~!よしよし」


「よしよしじゃねえよっ!?誰のせいでこうなったと思ってるっ糞無能!?」


「ヒュー…ヒュッ…ヒューッ」


「明後日の方向向かって口笛吹いてんじゃねえぞ糞無能っ!?あと全然口笛吹けてねえからな!?」


「あれ?可笑しいな?ヒュッヒュッ、ヒューッ!…ンゴホッゲホッッ……ヤッ、ヤバイッ……つっ、唾が気管にっ!?」


「リンゼルお姉ちゃん!?大丈夫!?背中擦るね!」


「何やってんだ…お前は…?」


「無能が喉詰まらせた~!」

「馬鹿だ馬鹿だ~!」

「囲め囲め~! 」




ギャアギャアッ…





  一方その頃、シートを敷いて、のんびりと寛いでいたガイエルとヒルダ。



「ん?あの辺が騒がしいな?ん~……あ~!リンゼルとバイカがまた喧嘩……いや、あれはもうじゃれ合いみたいものか…」


  ガイエルは騒がしくしているリンゼル達の方へ向けて望遠鏡で覗き込む。



「あの子達、また喧嘩してるの?」


「ん~…あれは喧嘩というより、リンゼルが真っ青な顔して地面に手をついて死にかけてるな……そんなリンゼルをフィースが背中を擦ってあげていて……バイカは呆れた表情でそれを見ている……あと何故か死にかけのリンゼルの周りを踊り回ってる子供達がいる…」


「いやどういう状況なのよソレ…」


「ん~…見ている僕でもよく分からないや…」


「リンゼルちゃんが絡むと、いつもカオスな状況が出来上がるわねぇ…。よっぽど具合悪そうだったら私が向かうけど、大丈夫そう?」


「ん~…大丈夫そう?かな?顔色も戻ってきているし……うん、わりと直ぐ持ち直して走り去っていった。なんか走り去る前にバイカになんか言ったのかな?バイカが顔を真っ赤にして怒ってる…リンゼルまた余計な一言でも言って怒らせたんだろうなぁ~…」


「あ~リンゼルちゃんならやりかねないわねぇ…」


「うーん…でもある意味あそこまで来ると仲が良いのかもしれないよ?」


「それ、バイカ君が聞いたら全力で否定するでしょうね…」


「アハハッ、バイカはリンゼルのこと嫌ってるからなぁ~…」


「リンゼルちゃん、バイカ君で遊ぶの好きだものねえ……それなのにバイカ君との出会いも覚えていないときた……」


「リンゼルが最初にバイカを見つけたのにねぇ…」


「そりゃバイカ君にも嫌われるわよ…」


「リンゼルのあの空気の読めなさは計算か、天然物か……いや両方かな?」


「両方でしょうね。全く、あの子はあの子で“いい性格”してるわよねぇ…」


「アハハ……だね…。だけど、たまにリンゼルの“あの性格”に助けられる事もあるよ。“今”なんて“特”に、ね。ああやっていつも通りリンゼルがおふざけをして、みんなを振り回して困惑させて……だけど、結局最後はみんなで笑っているんだよね…」


「そうね…」


「本当に、リンゼルがああやって楽しそうに遊んでいるのを見るとホッとする……僕らが頼んだことは、とても褒められた内容ではなかったからね…」


「あんな“大役”を任せてしまったものね…。私も、リンゼルちゃんがいつも通りああやって遊んでいる様子を見ると罪悪感が少し薄れるわ…」


「リンゼルのあの性格に、本当に助けられている。それにしても、リンゼルは本当に肝が据わっているな。今日が作戦決行日だって言うのに、あんなに楽しそうにはしゃいで遊んでいる。流石に僕でも、“今日という日”はあまり楽しめそうにないな…」


「そうね。私も、少し手が震えちゃってる…」


「気持ちは分かるよ。正直、僕も少し怖い。リーダーが情けないこと言っちゃいけないって分かってるんだけどね…」


「幼馴染みの前ぐらい良いんじゃない?それに私は貴方が実は怖がりな性格をしていること、知っているもの。」


「アハハ…敵わないなぁ…」


「当然よ。口喧嘩でガイエルが私に勝ったことがある?」


「ないね。君は基本的に圧とごり押しで負かすからね。というか、僕が折れることが多いだろう?」


「フン!喧嘩は折れない心を持つものが勝つのよ!」


「確かに、道理だね……」


  ガイエルは突然黙りだした。


「ガイエル?」


「“死ぬ覚悟”が決まっている人間は、良くも悪くも“強い”、か…」


「?」


「リンゼルは、もう“失う”ものがないから、あれだけ肝が据わっていられるんだろうね…」


「ぁ…」


「最初から“死”を望んでいた者は、“生”にしがみつく者より、ある意味では“無敵”なのかもしれない…」


「あの子は、百年前から、心変わりはしていないのね…。ずっと、この百年間、あの子は笑顔で過ごしていたけど、戦争で仲間が死ぬ度、悲しそうにもしていたけど、何処か羨ましそうにも、していたような気がする…」


「…リンゼルの体にある複数の傷は、あの子の心の中にも、沢山沢山あるんだろう…」


「………ねえ、ガイエル……私達は……本当にあの子を犠牲にして良いの?」


「………“生きたい”と望んでいるなら、僕も全力で救う。だけど、これから、“外”の世界で、しかも人間側が敗北したその世界で、彼らは生きて行かなければならない…。そんな状況の中、この先も進んでいく気がない者を、連れていくのは、正直にいって、みんなの足手まといに成りかねない…」


「でもっ…」


「正直、リンゼルが仲間達と仲良くなれる未来が見えない。しかも僕達が亡き後だよ…?例えフィースが居たとしても、限界があると思う。こういった狭い世界だからこそ、僕達が守ってこれた。だけど、これから“外”に出て、彼女が“世間”に認められると思うかい?」


「それは……」


「きっと、今リンゼルの体にある傷以上の傷がまた新たに増えていくだろう。それが自己回復で治ったとしても、“心”の傷は一生治らない。」


「………」


「僕達と一緒に、“戦って”もらうしかないと思う。それに、何より本人が望んでいることだ…彼女自身、百年も生きてきたんだ。もう覚悟はある程度決まっているだろう…」


「………」


  ヒルダは悲しげに目を伏せた。


「フフ……」


「なによ、なんで笑うのよ?ガイエル?」


「いや、なに……君は、最初はリンゼルのこと、“諦めよう”としていたのに、今は、“諦めきれない顔”をしている…」


「……そうね…。最初は、無能力者なんて、どうしようもない、どう相手をすれば良いのかもよく分からなかった…。死にたがっているし、戦争に出して早々に退場させた方が、“この子の為”だと思ったこともあった……いいえ、違うわ。ほんと言うと、“面倒事”は早く消えて欲しかった…」


「君は、良くも悪くも合理的に考える人間、いや吸血鬼だからね…」


「でもね、この百年間、大変なことも沢山あったけど、リンゼルちゃんの失敗に溜め息をつくことも、リンゼルちゃんのおふざけに笑うことも、リンゼルちゃんの優しさに励まされることも、もう殆ど振り回されっぱなしだったけど、でも、“楽しかった”……楽しかったのよ……」


「ヒルダ…」


「これが、リンゼルちゃんにかけられた祝福の魔法のお陰だとしても、それを抜きにしても、あの子といた時間は、三百年間私が吸血鬼として生きてきた中で、一番沢山笑って過ごせたと思うわ…」


「……確かに……僕もそうだよ…」


「思った以上に、あの子と過ごす時間がとっても楽しかった。それだけのことよ…」


「……そうだね…」


「だからこそ、あの子にはもっと、もっと良い未来があったんじゃないかって…思ってしまったの…」


「………」


「私達の都合に、付き合ってもらって良かったのか?って……」


「……だけど…リンゼルの“覚悟”は相当なものだよ?僕達が巻き込む以前に、リンゼルは自分の命なんてどうとも思っていない。こちらにあんな“条件”を出してくる程の徹底ぶりだ。リンゼルは、確実に“死ぬ方”を選ぶ。僕達がリンゼルに生きてほしいとどれだけ望んでも、どうにもならない…」


「………」


  ヒルダはガイエルの話を聞き、また悲しそうに目を伏せて、黙り込んだ。







「ヒルダ……落ち込んでいるところ悪いんだけどね、話があるんだ…」


「なによ…」


「もし、もしもだ、ゼディアスと戦いで僕達が奇跡的に生き残ったりでもしたら、その時は、僕と結婚してくれないか?」


「………へっ?ハァアアアアアアアッッ!?」



  ヒルダはガイエルの放った言葉を聞いた瞬間、頭のてっぺんまで顔が真っ赤になった。



「ダメ、かな?」


「へっ?えっ?いやっダメっていうか、いやいやっ待って!?脳が処理しきれない!?」


「もしも、何かとんでもない奇跡が起こって三人とも生き残った時は、僕とヒルダと、それと、リンゼルちゃんと……“家族”になって一緒に暮らさないか?」


「パクパク…」


「もしも僕達三人、ゼディアスに勝って、生き残ったなら、死にたがりのリンゼルを無理にでも引っ張ってさ、一緒に家族になって、暮らさないか?」


「………ガイエル……あなたって時々……ほんと~に突然突拍子もないこと言い始めるわね…」


「アハハ……だよね?でも、それぐらいの希望ぐらい持っても良いだろう?どうせ、三人ともどうなるか分からない命だ。なら、奇跡的に三人とも生き残ったなら、もうそれって運命じゃない?そうなったら一緒に家族となって暮らそうよ」


「……えっと……ガイエルの言うことは、まぁ何となく分かったわ……リンゼルちゃんと家族になることは賛成よ……確かにそんな奇跡でも起きれば、もうリンゼルちゃんを無理にでも引っ張って生き残らせてやるわ!その、それは良いんだけど、だけど、私達が…その……けけっ、結婚って…?」


「うん、結婚したい。僕は君が好きだから、愛しているから。君とともに連れ添って生きたい、これからも。」


ボッ

「っ~…」


  ヒルダはまた顔を真っ赤にさせた。


「返事は……そうだな……生き残った時にでも聞かせてよ…。うーん、でも、その表情を見る限り、返事を聞くまでないのかな?」


「うっうるさいわね!ちょっとっほんのちょっとだけ心の準備が出来ていなかったというか!何というか!あーもう!私も貴方のことがっ……!」


  瞬間、ヒルダとガイエルの唇が重なった。



「うん、知ってるよ…。300年前からずっと、君と出会ったあの日から、僕らはお互い一目惚れしてた。だけど、いま君からその言葉を聞いてしまったら、僕は君を戦いに連れていけなくなる。君を失いたくないからね?だから、その答えは、全てが終わってからにしてくれないか…」


「っ~………馬鹿ガイエル……大嫌いよっ……でも………」




  それと同じぐらいっ……“大好き”よ……馬鹿……。








  花びらが、舞う。






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