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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
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二人の話《28》



  天国のお父さんお母さんピーリフ、こんにちわ!今日は私、リンゼルはバイカ少年の伝言の下、一部の上位階級の吸血鬼のみが許された上位専用のお部屋の前に立っております!


  お二人とも一体何の用だろう?とりあえずドアをノックするか。


コンコンッ


「ガイエル先輩!ヒルダ先輩!リンゼル・ハルジオン、来ました!」


「!……リンゼル、来たか。入って良いよ」


「はい!失礼します!」ガチャ


  ドアを開けると、白髪の短髪、紅い瞳、睫毛も眉毛も肌も真っ白、綺麗な整った顔立ちの青年、我らがリーダーのガイエル先輩が部屋のベットに座っていた。ベットの近くの机の前の椅子に座っていたのは、赤い髪のポニーテール、紅い瞳にツリ目。こちらも整った顔立ちの美女、我らがリーダー補佐のヒルダ先輩が足を組んで椅子に座っていた。



「……わぁ……え?お二人とも、今日はその、なんと言うか、お綺麗?ですね……というか、元は良いだろうなと思っていましたけど、やっぱり美男美女でしたねっお二人とも!?というかお二人とも?なんでお顔とか身なりがそんなにお綺麗にっ!?」


  何故私がこんなにもお二人を見て驚いているのかと言うと、実は二人とも出会った当初からこう、なんと言うか、小汚ない容姿をしておられて、所々汚れていて、髪とかボサボサで、酷い時は埃とか頭に被ってる事もしばしばあった。顔とか戦争帰りの煤だらけの真っ黒な状態のままそのまま日常を過ごしていることも多くあり、私が汚れを落とさないんですか?と聞くとゼディアス様は“顔の良い”者が嫌いなんだよ、それも男女ともにね、と伝えられた。


  私は最初、えっ?顔の良い者が嫌い?はい?意味が分からなすぎて最初全く頭に入って来ず、混乱した。私は逆に顔の整った美男美女を見ると目の保養だ~って思って嬉しくて飛び跳ねるんですけど?何故?何故ご主人様は顔の良い者を嫌うので?と疑問に思い、ガイエル先輩に理由は何ですか?と聞いた。


「僕にも詳しく分からないんだけど、昔から顔の整った人間をよく思わない方でね。顔の良い人間を見る度によく殴っていたよ。自分達で言うのも恥ずかしいが、僕らは眷属となり奴隷になった当初、よく殴られていたよ」


「確かに、お二人とも小汚なくとも何処となく美男美女感が漂ってましたもんね…」


「えっ…そうなの?」


「じっ、自分達じゃ分からないものね…。というか私達って普通の顔だと思うんだけど…」


「うっうん、僕も何処にでもいる一般家庭の普通の顔だと思うんだけど…」


「………アハハ、お二人とも、それは私以外には言わない方が良いですよ?嫌味に聞こえますから。そして全国のフツ面の皆さんが今号泣していますから。地味面の私もいま号泣していますから…(ダーッ)」


「なんでっ!?」


「どうしてなの!?あとリンゼルちゃんっ目をかっ開いて真顔で号泣するのやめて!本当に怖いから!ホラーだから!出会った当初思い出すから!」


「あぁ、そんなこともありましたね……ア、ヤバイ、それを思い出してまた涙が…(ダーッ」


「いやっ本当にあの時のことはすまなかったっ!あれはなんと言うか、僕も馬鹿だったというか…考えなしだったっ、本当に申し訳ない!」


「あぁ、大丈夫ですよ、ガイエル先輩。もうあの時のことは水に流してますよ。急に来たばかりのよく分からない状況の中、あまりその当時は知らない同じ眷属の先輩方に突然笑顔を要求されて、その場で緊張しながらも何とか頑張って絞り出した女の子の笑顔を見て、“気持ち悪い”と放ったあの言葉なんて全く気にしていませんから(⌒‐⌒)」


「メチャクチャ気にしてるし引きずってるよねっ!?水に流しきれてないよね!?流れるどころかドッロドロに真っ黒な泥水となって涌き出ちゃってるよね!?本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!」


「お願い!そのカッ開いた目で涙を泣かしながらこちらを見ないで!トラウマになりそうなの!!本当に怖いの!いや本気でっ!!お願いもうゆるしてっ!!」


「トラウマを抱えたの私も同じなんですけどね…(遠い目)」


「「誠に本当に申し訳ありませんでしたっ!!」」


  ガイエル先輩とヒルダ先輩は私に土下座して謝っていた。あれ?100年前にもこんなことがあったような…?デジャブ…?





  お二人は本当に整った綺麗な顔立ちをされた方々だ。私なんて普通より少し地味めな影の薄い田舎の娘感が拭えない地味な見た目。子供の姿だから多少は可愛がられているけど、大人の姿だったら、異性は誰も見向きしないだろうな。別に異性に好かれたいとは思いませんが。ブスって程ブスでもないが、普通よりの地味めな顔立ちと言うべきか……自分で自己分析してて何だか悲しくなってきたな…。



「あ、あの…?リンゼル、ちゃん?ええと、なんで急に静かに目を閉じて涙を流しているの?何かあった?」


「いえ、自分の自己分析に傷付いてるだけです…」


「??……そ、そう、なの…?」


「はい……深くは触れないで下さい…」


「わっ、分かったわ!」


「それにしても……まさかご主人様が人の容姿を気にするようなお方だと思いませんでした。その…とても、そういうのを気にするようなお方だと思えませんし……。だって、我々にいつも興味無さげで、虫ケラでも見るようにしていて……それに、あれだけの強さを持って、容姿に拘るお方なんでしょうか?』


「さぁ、その点は僕達にはよく分からない。ただ……そうだな、あのお方の“お顔”を、リンゼルはしっかりと見たことはあるかい?」


「えっ……あ、はい。よく会う度にガン見してますね…」


「ハハッ、リンゼルは怖いもの知らずと言うか、胆が据わっているよね?あのお方の“お顔”をガン見出来る者達なんて、そうそういないよ?」


「なるべく長くは見ておきたくないわよね……目が腐りそうだもの……あんなに“醜い顔”を見ていると…」


「アハハ……ゼディアス様って、すこーし、強面?な顔立ちですもんね…」


  ゼディアス様の容姿は、デコボコとしたジャガイモのような顔の形に、顔から頭の天辺まで切り傷のような傷跡が沢山あり、火傷したかのように皮膚がボロボロで、歯も不揃いで汚く、全体的に身体が大きく手も足も大きく、ギョロリとしたデカく紅い瞳、そんな化け物ような姿なのだ。そしてその見た目に強者としての貫禄も相まって物凄く近寄りがたいし、目茶苦茶に怖い。


  でも、私はあまり、ご主人様の容姿を醜いと思ったことはなかった。それは、最初に“あのお方”に出会った時から、ずっと。というか、気にした事がなかった。それよりもゼディアス様から溢れる強者故の圧倒的オーラとピリピリとした圧の方がよっぽど怖かった!


  あぁっそうだ!フィース君と初めて出会った時、ゼディアス様は直ぐ殺すよう命令を下された。フィース君は綺麗な整った顔立ちの美少年君だった……もしかして……。



「あのお方の容姿が“アレ”だろう?だからなんじゃないかな?“顔の良い”者をよく思わないのは。あくまで予想だけどね?」


「醜い顔をしているから、心まで醜いのかしらね?ていうか、そんなに自分の醜い容姿が嫌なら人に当たってないで、魔法で自分の顔変えたら良いのに……あのお方レベルの上位吸血鬼だったらそれぐらい容易く出来ないのかしら?」


「……そうだね……整形魔法が無くはないんだけど、それは本当に限られた者しか手に入らないレアなスキルだからね。いくら上位の中の最上とも呼べる吸血鬼でも、それは無理なんじゃないかな?出来て幻術で顔を変えて周りを騙すことぐらいしか出来ないと思うよ?」


「そっか……流石にそんな都合の良いスキル、最上位の吸血鬼でもそうそう持ってるわけないか…」


「なんだか、ご主人様が容姿を気にするような方だと思ったら、少し面白いですね…」


「面白い?」


「なんだか、普通に“人”と同じ感情を持った方だったんだなって……ハハッ、不思議と親近感湧きませんか?」


「んー……いや、僕はあまり親近感は湧かないかな?」


「私もガイエルと同じく、それはないわ。アイツがやってきたことを思うと、どちらかと言うと嫌悪感しかないわ。自分が醜いからって顔の良い者に嫉妬して人に当たるなんて、正直性格最悪過ぎて普通に生理的に無理ね。」


「アハハ……」


  ヒルダ先輩は本当に正直者だな~…。まぁ確かに、少し…心の狭いお方、かな?とは思うけど…。理不尽に殴るのはやっぱり駄目だよね…。


  この人達は綺麗な顔をしているから分からないだろうけど、容姿を貶されるのって、わりと、いや結構傷付くことなんだよ。嫉妬しているってことは、多分もう随分昔から沢山容姿のことで色々と言われて来たんじゃないかな?ゼディアス様は。まぁ勝手な想像だけど。



「まぁ、今はゼディアスのことはいいんだ。リンゼル、君を此処に呼んだのは、大事な話があるからなんだ…」


「大事な話、ですか?」


  あっ、そう言えば私呼び出されて此処に来たんだった!ついつい話が脱線してしまった!


「まず一つ目は報告、もうに一つは、君にお願いがあるんだ…」


  フムフム、一つ目は報告、と。何の報告だろう?今日の晩御飯の報告ですか?んなわけないか。そんなことで部屋まで呼び出す馬鹿いないわ。私ぐらいだわ、そんなことするの。


  二つ目は私にお願い……私にお願いがある?先輩方が?私(無能)に?正直敬愛する先輩方のお願いだったら何でも叶えてあげたい所存ですけどもっ、私に出来ることならなるべくやりますけども!で、でも、だっ大丈夫かな?難しいことじゃないよね?あんまり難しいことは無能は出来ませんよ!?




「まず一つ目の報告だけど……先程、ロネス・グリオ博士が屋敷に訪ねて来たんだ」


「えっ……」


  ロネス・グリオ…博士?私の瞳に祝福と呪いが宿っているって見抜いたあのへんた……変人の博士さん?どうして此処へ?まさかここの吸血鬼のみんなの誰かをまた研究所に持っていくとか、そういう感じのあれかな?でもロネス博士がわざわざ来る程のことか?いつも此方から研究所に送られるって言っていたし…。まさかフィース君目当てだったり?彼凄い勢いで成長していってるし、才能あるフィース君を実験の対象として選ばれたとか?いや待て、前に話したときに私の無能力にも興味を惹いていたから、もしかして私目当てっ!?


  私がそんなことをグルグルと考えていると……



「それで、ロネス博士からとある報告を受けた」


  ガイエル先輩、真剣な表情だ。


「とある報告?」


  あれ?もしかして結構真面目なお話だったりします?そう言えば最初に大事な話って言ってたわ…。







「戦争が終結した。



 人間側の敗北だ」




「………えっ…?」




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