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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
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見えざる影《25》



ポタン……ポタン……ポチャンッ…



「んん……」


  水滴が落ちる音が聞こえる……

  なんだろう?前にも水滴が落ちる音が聞こえて目を覚めしたような記憶が……それで……それから……。


「……ぁ…」


  うぅ、(まぶた)が重い…それに体も鉛のように重い…。私はゆっくりと恐る恐る瞼を開けた。


「…ここは……」


  何処だろう?誰も居ない。ここはみんなで共有で使ってる寝床じゃないな…。ええと確か……ここは上位吸血鬼の方々のみが許される個人部屋だった気がする。ということは、ガイエル先輩かヒルダ先輩の部屋?


ポチャンッ


「………」


  ここに来た当初から思ってたけど、この地下って雨漏り酷くない?この上って屋敷だよね?屋敷の方に問題があるのか?いや、よく考えたら屋敷の方の屋根は穴だらけだったわ…。そりゃ雨漏りも酷い訳だよ。


「………」


  なんだか、とても古い夢を見た気がする。凄く懐かしい夢を…。


ブルッ

「っ~……寒い…」


  それにしても、ひんやりしてて寒いな……雨漏りしてるから今日は雨が降ったんだろうな。だから気温が下がって寒いのかも。


「………あれ?」


 私って何でここで寝てるんだっけ?


「うーん……」


  私は体を起こしつつ考える。


「あっ……」


  そうだ………


「思い出した……」


  あぁ……ヤダな……思い出しちゃった…。


「ピーリフ……」



  ピーリフ……生命を削って私を守る為に“呪い”と“祝福”を授けて逝ってしまった私の大切で大事な妹。大好きな妹。


「馬鹿だなぁ……本当に……」


  私なんかの命、守らなくても良かったのに…。私のような無能、命をかけて守る必要なんてなかった!なかったのに…。ピーリフの命の方がよっぽど世のため人のためになる命だったでしょう!絶対に、絶対に……私は………そんなに君の為に出来た事があっただろうか?お姉ちゃんは、君を守れていただろうか?君に守られる資格があっただろうか?


  私は……どうすれば……これからどうすれば良いの?この事実を知って、私はどうやって受け止めれば良いの?こんなの、受け止められる訳、ないのに…。


  貴女(ピーリフ)の居ない世界でどうやって……貴方(ピーリフ)の命の上で成り立っているこの命で、どうやって生きていけば良いの?


  ねえピーリフ、どうして私を助けるような真似をしたの?ピーリフが学園に入学の為、ニコイ村から首都の方に引っ越す為、まだ幼いピーリフ一人を都会の大きな街に連れていくのは父さんと母さんも心配だったから一緒について行く事になった。まあ元々両親ともに何処かこの閉鎖された小さな何もない田舎に嫌気が指していたように見えるし、ピーリフが心配半分この田舎から解放されたい半分ってところだろうな。


  勿論そのお引っ越しに(リンゼル)が入ることはなかった。“三人だけ”で首都に引っ越すという話を両親がリビングで話していたのをたまたま通り掛かった時に耳に入り知ることになった。


  私はその話を聞いて、あぁ遂に私が捨てられる日が来たんだなって、いつかこういう日が来るんじゃないかと思っていた。最初にその話を聞いた時は物凄く落ち込んでいたが、切り替えて翌日ピーリフに学園の入学をおめでとうと伝えに行った。そしたら目茶苦茶怒っていたし、最後には「大嫌い!」と言われた。それがピーリフと喋った最後の記憶だ。



  やはり、別れる直前までピーリフは私を嫌っている様子だった。それなのに何故?私を救うような真似をしたのだろう?


  ピーリフ………ねえ、“あなたは何を考えていたの?”最期のその時まで……あなたは一体、何を”…。


「ズズッ……」ポタッポタッ


  涙が溢れる。ポタポタと溢れる涙をおさえきれず、私はまた泣いた。



  涙を流しながら、私は先程夢で見た古い記憶を思い出していた。


  ザナドさん、それにサラさん。


  どうして忘れていたんだろう?初めて出来た私の友達。あんなにも楽しかった思い出を、今の今までどうして私は忘れていたんだろう?


  そうだ!あの日、ザナドさんとサラさんがニコイ村から去ったあの日、家に帰ってピーリフに話しかけられて………あれ?あの時ピーリフになんて言われたんだっけ?あ、れ?なんだか頭に黒いモヤがかかってて、その辺の記憶が曖昧に…。ええと…待って……その時にザナドさんとサラさんの記憶が曖昧になって、思い出せなくなって……。


「………」


  待って、そうなると……ピーリフが私に何か記憶を封じ込めるような魔法をその時にかけたってこと?


  どうして?何のために?


  いや、その前に、“二人が居なくなった”途端ピーリフの様子がもっと可笑しくなったような?こう、何だろう?性格が大分変わったような?最初は無視するだけだったのに、だんだんと私に悪口を言い始めたり私を見掛ける度よく睨み付けてきたり……手を出したりすることは無かったけど。たまに父さんと母さんの“いき過ぎた教育”(虐待)には助け船を出してくれたりしたし、根っこの部分は変わっていないのかな?って思っていたんだけど。


「……!」


  そうだ、ザナドさんが村に居た時に何か言ってた気がする…。



『あぁ、いや、気のせいか?あの嬢ちゃんから妙な“力”を感じた気がして……あれはなんや……“何”かがあの嬢ちゃんに“憑いてる”ような…』



  あの時は私自身まだまだ幼かったから、ザナドさんが放ったその言葉の意味がよく分からなくて、深く考えていなかった…。もしかしてあの時、ピーリフの身に何かあったの?“何か”がピーリフに“憑いて”いた?


  確か……あの頃ピーリフは何も無いところにブツブツと喋る事が度々あった。子供の頃はあんまり気にしていなかったけど……いやよく考えたら大分可笑しなことしているな。なんで気にしなかったんだろう?可笑しいな、変だなって感じる度、頭にモヤがかかって考えられないようになってたんだよね…。


「………」


  “誰がそんなこと”をしたんだろう?


「っ……」


  あの家に、父さんと母さんと、私とピーリフ以外に、“誰が存在していた?”



「………なんで………今まで、気付かなかったんだろう……」



  ピーリフを歪めた存在がいる。“ソイツ”がピーリフの性格も変えたのか?そうだ、どんどんと思い出してきた……。あの子が私の悪口をいう時も、私を無視する時も、何処か苦しそうにしていた…。いつも私に対して怒っているような態度で恐い顔をして私と接していた。だけど、よくよく思い出してみたら、あれは怒っているんじゃなかったんだ、苦虫を噛みつぶしたように何処か苦しそうにいつもしていた。まるで本当に言いたいことが言えないような、そして同時に“何か”に抗っているような…?


  どうして気付かなかった!?どうしてっ………“ソイツ”が私の記憶も操作していたってことか?ザナドさんとサラさんの記憶を消したのも、ピーリフの様子が可笑しくなっていたのにも関わらず、深く考えられないように認識を操作されていた。


  一体誰が?何のために?




『あー、ゴホンッ…失礼!思わず興奮してしまいました。そうですね……ここまで辿り着けたご褒美、ではありませんが、小耳に挟んだ噂程度ものですが、お話しましょう。その光と闇の属性を持った少女が17の歳に消えてから数ヵ月後、ある村の近辺でドロドロに溶けた人間の死体が見つかったと言います。顔も、身体もドロドロに溶けて、性別も何処の誰かも分からなかったそうです…』




  “ソイツ”が私の大事な妹にそんな“惨い死に方”をさせたのか?





コツコツコツ


「あっ、リンゼルお姉ちゃん!起きてたんだ!」


  すると、フィースがやってきた。


「良かった~!リンゼルお姉ちゃん二週間ぐらいずーっと眠っていたんだよ!もう二度と目を覚まさないんじゃないかって思って、ボクすっごく心配したんだから!」


「………」


「リンゼル、お姉ちゃん…?」


  フィースはリンゼルの様子が可笑しいことに気付き、リンゼルに近付き顔を覗き込んだ。



ゾクッ

「っ……」


  フィースはリンゼルの顔を見て思わず後ろにたじろいだ。



「…あ、れ?フィース、くん?」


  あ、フィース君だ。いつの間に居たんだろう?なんだか驚いた顔をしている。少し怯えているようにも見える……どうしたのだろう?





  あぁ……私は今……どんな表情をしているんだろう?






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