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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
27/48

とある姉妹の過去1



  わたしの住んでいる村には、とても優しい村長さんがいました。その優しい村長さんは、「ピーリフには魔法の才があるから」と言って、魔法の事が詳しく書かれている書物をよくわたしに貸し出してくれていました。


  この日も村長さん宅に向かい、魔法の書物を借りて、その本を大事に抱えながら帰る途中、わたしをよくいじめてくる、近所の子供三人組、おかっぱ頭のユーくん、食いしん坊なドットくん、出っ歯のデッカくんにわたしは捕まってしまっていました。



『ねえっ、その本返してっ!村長さんから借りた大事なものなの!』


『やだよ~だ!』

『やーいブースブース!』

『取れるもんなら取ってみな!』


『うぅっ…』


『おー泣くか?泣くか?泣き虫ピーリフ!』


『『泣き虫ピーリフ♪泣き虫ピーリフ♪』』


『グズッ……ン…ゼルぉねい…ちゃん……』


『はあ?なんだって?』


『うえーんっリンゼルおねえちゃ~んっ』


『アハハッ!!まさかあの無能を呼んだのか?』

『例えアイツが来たところでお前を助けられるわけないだろ!』

『だってアイツ』


『『『無能のリンゼルなんだから!』』』


『来たところで俺たちが返り討ちにしてやるよ!』


『『『ガハハッ』』』



タタタッ


『ピーリフ~?』


『あっ……リンゼルおねえちゃん!』



おかっぱ頭のユーくん

『ハッ、無能がノコノコ来やがったぜ?』


食いしん坊なドットくん

『馬鹿だな、またボコボコにしてやるよ!』


出っ歯のデッカくん

『今から見物だぜ!』


タタタッ


『あらら~?私の愛しの妹の泣き声が耳に入って走って来てみれば~??やあやあ~!近所の悪ガキども~我が家の可愛い可愛い愛し子に~、な~にをやってくれているのかな~?』ブンッ


ドッスッ


ユーくん

『ギャーッ!?おまっ、来て早々いきなり鎌をこっちに投げるやつがあるか!?殺す気かっ!?』


『あら~?ごめんなさーい!手が滑っちゃって~でも良かった~当たらなくて~?チッ』


ユーくん

『ギリギリだったけど!?あとちょっと避けるの遅れてたら死んでたけど!?つーかいま舌打ちしなかった!?』


『え~?舌打ちなんて!無能はそんなことしません!チッ……後もう少しだったのに…ガキが…やるな…』


ユーくん

『こええよ!物騒なんだけど!?最後に至ってはもう人格すら変わってなかった!?』


『ピーリフ?無事?怪我ない?何処も痛いところない?』


『うん!わたしは大丈夫だけど、本が……』


『本?』


ユーくん

『おいっ無視してんじゃねえよ!?無能がっ調子に乗ってんじゃねえぞっ!?』


『坊や、ちょっと静かにしないかい?家の可愛い可愛い妹が喋っているんだよ?シーッ』


ユーくん

『シーッじゃねえんだよ!?あと坊やってなんだ!?ほぼ同い年ぐらいだろうが!?』


『年上の男子たるものが、自分より年下の子供を苛めて楽しいかい?そんな奴は坊やで十分さ』


ユーくん

『ぐうっ…』


ドットくん

『何処の女ボスっ!?なんでちょっとハードボイルドな感じの女ボス感出しながら話してんの!?その人格の変化なに!?』


デッカくん

『おのれぇっ…無能のくせにぃっ』


『大事な妹を守るのに、いつものへなちょこ見せる訳には行かねえだろ?』


ユーくん

『チクショォオオッッなにこのイケメンンンンッ!?』


ドットくん

『なんか一瞬トュンク…って、トキメいちゃったじゃねえか!』


デッカくん

『おのれ無能のくせにぃっ』


『お前らさっさとその本こちらに返して、家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶっときな!』


ユーくん

『クッソォオオッ!!もはや誰えええ!?無駄にカッコイイんだけどっ!?』


ドットくん

『あれ?本当に同い年か!?おまえ!?』


デッカくん

『おのれぇっ無能のくせにぃっ』


『まあまあ落ち着きな?それにしても、ユーくん達は相変わらずのツッコミの切れ味だね~?アメちゃんいる?』


ユーくん

『誰のせいでこんなにツッコンでるんだと思ってるんだっ!あと急に脈略なくアメ差し出すのなに!?怖いんだけどっ!?いらないわ!』


『ぇっ……イチゴ味だよ?』


ユーくん

『アメの味とかどうでも良いんだよ!?そういうことじゃねえんだよ!』


『知らないオジサンから貰ったんだ!』


ユーくん

『よりいらないわ!そんな何処の誰だか分からん奴のアメ!つーか知らないオジサンから食べ物貰うな!』


『美味しかったよ~?』


ユーくん

『食べたんだ!?お前命知らずだな!?』


『おっ、おねえちゃん!?だっ大丈夫なの?おなかとか、痛くない?』


『うーん、今のところ平気だよ~?』


『ホッ……そっ、そっか。ならよかった~』


『うんっきっと大丈夫だよ~!』


『そうだね~』


『『うふふっ♪』』


ユーくん

『お前ら頭沸いてんのか?後から痛い目あっても知らねえぞ…?』


『えっ、心配してくれてる?』


ユーくん

『だっ、誰がお前みたいなヤベエ女の心配なんてするかっ!!』


ドットくん

『……ちょっと、食べてみたかった…』


ユーくん

『ドットッ!?はっ?えっ?正気か?いくらお前食いしん坊でも知らないオジサンから貰ったアメだぞ!?』


ドットくん

『そっ、それもそうだねっ!ごっ、ごめん……ついイチゴ味に惹かれて…』


『アメちゃんならいつもでもあげるよ!』


ドットくん

『えっ、本当に?(パアッ』


ユーくん

『ドットォオオオオッ!!?なに目キラキラさせてんの!?なにパアッっ表情明るくなってんの!?餌付けされてんじゃねえぞっ!?』


デッカくん

『おのれえっ…無能のくせにぃっ』



『なんか、あの……出っ歯くん?だっけ?あっ、違う?デッカくん?オッケイ理解した。それで出っ歯くん。きみ、さっきから同じ事しか言ってなくない?語彙力死んでるの?』


デッカくん

『グハァッ』バタッ


ユーくん

『出っ歯ぁああっ!?あ、間違えた。デッカァアアアッ!?』


ドットくん

『デッカが精神攻撃を受けて血を吐いて倒れたーっ!?』


『ぁっ…意外にナイーブな子だったのね……なんか、ごめん…』


ユーくん

『おのれえ~っ…無能が調子に乗りやがってっ!!』


ドットくん

『糞無能がっ!さっきから生意気ばかり言いやがって!もう只じゃおかねえ!!』ゴゴゴッ


『あっ……ちょっと待って?少年たち?暴力は良くないな~ってお姉さんは思うというか~…』


『オラアアアッ!!』

『デッカの仇だ~っ!!』


『ギャアアアアッッ』



ボカッドカッドシッバシッ




  まぁ、どんだけカッコつけたって、私が無能である事は変わりようがない訳で、喧嘩など勝てる筈もなく……結果いつも通りボコボコにやられて終わった。



帰りの道中……



『リンゼルおねえちゃん?大丈夫?痛くない?』


『んー大丈夫大丈夫~慣れっこ慣れっこさ~』


『……ごめんね…おねえちゃん……わたしのせいで…』


『う~ん?ふふ、ピーリフのせいじゃないでしょ~?どう見たってアイツらのせいです!それより私の方こそごめんね、本……どうにか取り返せたけど、ボロボロって言うか、殆ど破けちゃってて……もう読めないよね…』


『ううん!だいじょうぶだよ!これぐらいだったら【修復】の“まほう”でなんとか直せるよ!』


『へえ~魔法って本当に便利だね~!ていうか、ピーリフってそんなことも出来るようになったんだ!?どんどん新しい魔法覚えてるね~凄いね~!』


『うっうん!まあね!だっ、だからリンゼルおねえちゃんが謝る必要なんてないよ!』


『じゃあ……お互い謝るのなしとなしで仲良しってことだね!』


『うん!よくわかんないけど!そうだね!』


『うん!よく分からないけど乗ってくれるそんなピーリフが大好き!』


『わたしもリンゼルおねえちゃんがだーいすき!』


『えへへ~両想いだ~!』


『りょうおもい~!』







『そうだ!これは帰って父さんと母さんに伝えたら喜ぶよ!ピーリフがまた新しい魔法を覚えたよって!もしかしたら今日の夕飯はピーリフの分のオカズは一品多くあるかもよ~?』


『………』


  ピーリフはリンゼルのその言葉を聞くと、少し表情に陰りが帯びた。


『んー?どうしたの~?』


『ううん、なんでもないよ…』


『?……そっか』



  おとうさんと、おかあさんは、“ピーリフ”にとっても“やさしい”。だけど、リンゼルおねえちゃんには……。


  わたしは、おとうさんとおかあさんのことは、だいすき。だけど、おねえちゃんをイジワルする、おとうさんとおかあさんは、きらい。


  でも、リンゼルおねえちゃんは、そんなこと、気にしているようには見えない。


  どうして、なんだろう?


  こんなにも、あからさまに酷い扱いをされているのに……それでも、リンゼルおねえちゃんは笑っていた。


  昔から、リンゼルおねえちゃんは笑顔がどうも下手?なようで、表情筋がどうも固いらしく、何故だか笑うときは“ニヘ~”と、もう、どう見ても悪人面にしか見えない笑顔を浮かべていた。わたしはそんなおねえちゃんの笑顔が好きだけど、近所の子供達はその笑顔を見ると恐怖で逃げ出していた。


  稀にとっても柔らかい表情で笑う時があるんだけど、美味しいもの食べてる時とか、ピーリフを褒めてる時とか……ふへへっ……ハッ、いけない!わたしもたまに油断すると変な笑い方になっちゃうんだよね!危ない危ない!


  でも、ピーリフの目の前でだとそういう風に柔らかい表情で笑うことが多いから、少し、ううん、かなり嬉しい。


  でも……リンゼルおねえちゃんは、もっと自分を大切にしても良いと思うんだ…。





『リンゼルおねえちゃん…』


『んー?な~に?』


『“なれ”ちゃ、だめだよ…』


『…え~?』


『“痛み”なんかに……“慣れ”ちゃ、だめだよ…』


  そういうピーリフの表情は、何だか大人びて見えた。


『?………アハッ、ハハ~……ピーリフ~?どうしたのさ?』


『………血、沢山ついてる…』


『あ~……ちょっと汚いね?ごめんね~家帰ったらちゃんと落とすから~…』


『っ…そうじゃないよ!』


『!…ピーリフ?』


『おねえちゃん……もっと自分の身体を大事にしよ?』


『大事にしてるよ~?ピーリフの次に~』


『……わたしは、おねえちゃんに、もう…傷付いてほしくない…』


『ピーリフ?良いんだよ~私のことはさ~?ほら、まぁピーリフが傷付くと父さんも母さんも悲しむじゃない?それだったら…』


『おねえちゃんが……傷つけられても……お母さんとお父さんは…何とも思わない…』


『そうそう~、だから…』


『だからおねえちゃんはわたしを守るの?』


『……えっ…?』


『お父さんと、お母さんに、わたしは、愛されているから…わたしを傷付けちゃ…自分が怒られるから?』


『………ピーリフ?』


『………ごめんなさい……ほんとは……そんなこと、言うつもりじゃ、なかった……リンゼルおねえちゃんが、そんな人じゃないって……本当にわたしのこと大好きだから…守ってくれていることなんて……分かっているのに……分かっているから……つらいよ……グスッ』


『……ピーリフ…』


『おねえちゃんが……もっとイヤな人だったら良かった……わたしを、嫌ってくれたら……良かったのに……』


『………』


『おねえちゃんの……大好きが……愛しているがっ……時々……本当に、泣きたくなるぐらい……痛いの……』


『……』


『だって……だってっ……おねえちゃんはっ……みんなから…沢山沢山苛められてっ……お父さんとお母さんからもっ……無視されてっ…叩かれてっ殴られてっ……でもっ……私の前では笑ってくれているっ……』


『……』


『ピーリフは天才だ!すごい!可愛い!最高の妹だって……ずっと、ずっと褒めてくれる……愛してくれる……』


『…当然だよ』


『っ~……おねえちゃんの……そういうところ、わたしも大好きだよ…』


『ありがとう!私も大好きだよ?ピーリフの優しいところも可愛いところも天才なところもちょっと頑固なところがあるところも、一回怒るともう手が付けられなくなるところも、全部、ぜーんぶひっくるめて、大好きだ!』


『……うん……うんっ……』ポロポロ


『あはは……ちょっと愛が重たすぎたかな?』


『うん……確かに、時々、重いかな?』


『アハッ、やっぱそっか~』



  うん、だけど、私はそんなおねえちゃんのことを……



『………』


  やっぱり……“彼”の、“あの話”……乗ってみよう、かな…?




『ピーリフ?』


『……ううん、なんでもない!』


『(あっ、いつもピーリフに戻ってる。さっきの大人びた表情…。それに、さっきの発言……少し、いやそれどころか大分言葉がしっかりしていたな…)』


『あっ、それよりリンゼルおねえちゃん!ずっと気になっていたの……その、肩にせおってるロープと、手にもってるカマ?と、お酒は、その、いったいなに?』


『ん?ああっこれは最近村に来た旅行者の男女の二人が居るでしょう?その人達がアメちゃんあげるから、酒とロープと鎌を持ってきて欲しいって頼まれてんだ!』


『………ええと、それってだいじょうぶ?というか、そのアメ、その人たちから貰ったんだ…』


『ピーリフの分もあるよ!いる?』


『え"っ?ええと……うっ、うん……あっ、ありがとう……リンゼルおねえちゃん……(本当に食べて大丈夫かな?お腹壊さないかな?)』


『あの、えっと、おかあさんが言ってたよ?あのふたりにはあまり近づかない方が良いって……』


『え~そうなの~?面白い人達だよ~?男性の方のお兄ちゃんは喋り方は変だけど、あれって何て言うのかな?訛り?って言うのかな?なんかずっと男性の方は「もうアカン、終わりや……死ぬなら自分の手で死にたい…。そこの通りかかった嬢ちゃん、飴ちゃんあげるからロープと強めの酒持ってきてくれへんか?」って、女性の方は「そこのお嬢様、コイツの首をかっ切るので鎌を用意して頂けませんか?」って、「ん~?よく分かんないけど良いよー!」って言った!』


『いやよくわかんないのに良いよって返事しちゃダメだよ!?それにどうみても“ふおん”なこと言ってたよ!?ぜったい手を貸しちゃいけないやつだよ!?』


『えっ、そうなの?』


『そうだよ!?考えればわかるでしょう!?』


『ん~まぁそんな日もあるかなって!大丈夫かなって!』


『そんな日そうそうあっちゃいけないよ!ぜんぜん大丈夫じゃない人たちだよ!?』


『そうなんだ~』


『おねえちゃん……もう少し、いろいろと考えよ?ね?』


『うん!わかった!』


『(本当にわかったのかな?)』


『それじゃっ、届けに行って来るね!』タタッ


『ぜんぜんわかってない!?あっ、おねえちゃん!まってよ!考えなおしてっ!?いやわりと本当にっ』タタッ











タタタッ


キョロキョロ

『ハァッハァッ……あれ?見失った?おねえちゃーん!どこ~?』


  わたしの方が足は速い方なのに…。

  いや、おねえちゃんはこの辺の地理の感覚はズバ抜けて良いからなぁ……よく村を探索しているし、おねえちゃんの趣味は散歩だからなぁ…近道とか隠し通路みたいなところ知ってるのかも…。


『………おねえちゃん……』



  リンゼルおねえちゃん。わたしの大好きな大好きな自慢のおねえちゃん。


  だけど、わたしの自慢のおねえちゃんは、魔力を一切持っていなかった。それだけならまだしも、おねえちゃんは人よりも物覚えが遅く、普通にみんなが出来ている事がおねえちゃんは上手く出来ない事が多かった。みんなからよく無能のリンゼルと言われて、蔑まれ苛められていた。


  わたしはリンゼルおねえちゃんがそんな風に扱われているのが腹立たしかった。だっておねえちゃんはとっても優しい!正直、誰よりも心が綺麗な人だってわたしは思うの!少なくともおねえちゃんを無能だと罵り蔑んで暴力に訴えてくる人達よりよっぽどまともで物事をよく理解している人だと思う!


  ちょっと変わってるところっていうか、抜けてるところはあるけど、それはおねえちゃんの愛嬌ってことで!たまに心配になることもあるけど……うん!そんなおねえちゃんも素敵だよ!←(ピーリフもピーリフでかなり重度のシスコンであった。)


  だって、あんなにも、何処までも優しくて、お父さんとお母さんのイジワルにも、おねえちゃんは「仕方ないよ」って、少し遠い目で寂しそうに言った。


  それでも、わたしに優しく笑いかけてくれて、わたしが困ったことがあれば、出来ない事が多くても、傷付くことがあっても、絶対に手を差し伸ばして助けてくれる。


  いつも何処か儚げに、切ない表情で笑うあの人を、わたしは………



【やあやあ、こんにちは。可愛い可愛いボクのお姫様?】


  ピーリフが考え事をしていると、突然後ろから男の低い声が聞こえる。


『………』


【おや?無視かい?酷いな~】


  そう言い、後ろからピョンピョンッと飛びながら、ピーリフの目の前までやってきたのは、全身真っ黒な毛と、紅い瞳が妖しく光る、小さな生き物。その小さな生き物は、“兎”だった。全身真っ黒の兎がピーリフの目の前に現れたのだった。



『……なに?』


  ピーリフはその黒兎が現れた途端、表情を消し、冷ややかな目で黒兎を見つめていた。言葉も何処か投げやりな感じにもなっている。


【そんなに警戒しないでよ。別にとって喰うわけじゃないんだからさ】


『………』


【嫌われちゃってるな~?ボク、君に何か嫌がることでもしたかい?】


『…あなた、どうみても怪しいし不気味なのよ』


【怪しい?不気味?こんなに愛くるしい見た目をしているのに?どうみたって可愛い可愛い小動物じゃないか?】


『見た目だけね。ていうか自分でそういうこと言うから信用ないんじゃない?』


【あらら~、人間って難しいね~】


『それに、あなたが纏ってる空気、いえ、瘴気?かな?どうみても嫌な感じしかしない…』


【…全く、君は本当に天才、いや鬼才?とでも言うのかな?ふふ、あのお姉ちゃんや両親にも君の“そういう”部分、あまり見せていないでしょう?】


『………』


【君は思った以上に何倍も優秀だ。家族の前では年相応にある程度振る舞ってはいるけど、その年にしては落ち着きすぎてるし、物事の理解も速い。能力の高さもズバ抜けている。特に“闇”の能力はとても興味がそそる…】


『……あなたは、これが欲しいの?私の闇属性の力が…』


【アハハッ、まあ確かに。君のその力は魅力的ではあるが、さっきも言った通り取って喰うわけじゃないんだ。ボクは君の願いを叶える為に此処にいる】


『………前にも言っていたけど、わたしの願いを叶えて一体あなたに何の利益があるの?』


【ヤだな~ボクは君に惚れ込んだんだよ?ボクも君と同じ闇属性を持つ魔物だ、君に惹かれるのは仕方ないことなんだよ。闇と闇の共鳴性は高いからね~。それに、その年でそれだけの魔力の量、頭の賢さ、闇と光という表裏一体であるこの二つの能力を同時に受け止められる君の身体の器のデカさ、どれをとっても優秀なものだ。ボクは君専属の使い魔になりたいだけさ。】


『………』


【優秀な人間の使い魔になりたいと思うことは変なことかい?僕達魔物だってご主人様を選ぶ権利はあると思うからね?】


『………本当に、わたしの願いを……叶えてくれるの?』


クスリッ

【…嗚呼、勿論だとも。君の願いを何でも叶えてあげよう……只し、願いを叶えるのは一つだけだ。】


『……まるで、悪魔の誘いね…』


【……アハハッ!本当に、君は、賢い子だ…】




  “嗚呼、本当に、今すぐ喰べてしまいそうになるくらい、素敵なお嬢さんだ。”





  “可愛い可愛いピーリフ、血の繋がった姉が無能だったばかりに、健気に“お姉ちゃん”を守ろうとする姿………”




  “嗚呼、本っ当に、

  素敵で(愚かしくて)、可愛らしくて(愚かしくて)、愛おしくて(愚かしくて)”、




  “今すぐにグチャグチャに喰い散らかして、その魂を血肉を貪りたい”っ!!




  “嗚呼、駄目だ駄目だ駄目だ。取り乱してしまった。それには【まだ】早いからね。少しずつ、だけど確実に、【侵食】していかないと、ねえ?”




  

  “フフッ”





  “絶対に逃がさないよ?”




  “ボクの愛しい愛しいお姫様?”






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