閑話
とある研究所某所ーー
ウィーン……コツコツコツ
「ただいま戻りました………ハァーッ、また物を散乱とさせて、貴重な本や資料までも床に置いて……前にも言いましたが、私は綺麗好きなんですよ?片付けは小まめにして下さいとあれほど…」
「そう……どうでもいいわ。片付けをすると私は承諾した覚えもないし、私が物を何処にあるか把握できていれば何の問題もない…」
そういって気だるげそうに答える女性。
「私が問題なのですよ!ここは私の研究所でもあるんですよ!言わば私の所有地なわけでっ………いえ、貴女にこんなことを言ったところで無駄な話でしたね…」
「ええ、それが懸命ね…」
「ハァーッ…」
ロネス博士が呆れた顔でやり取りしている者は、白髪ストレートのサラサラな艶のある髪に、タレ目気味でその奥に有るものは宝石のように綺麗な真紅の瞳、顔がとても整っており可愛いらしい顔立ち、細身で見た目年齢は15~18代ぐらいに見える女性が、白い椅子に座り、白い机の前で何かの書き物をしていた。
「嗚呼そうだ、貴女にお土産を持ってきましたよ」
「そのわりに、手には何も持っていないようだけど?」
白髪の女性はロネス博士の手元へ目線を送り、何も持っていない所を確認すると書き物に再び集中した。
「お話という名のお土産ですよ」
「そう……それじゃ、私は私の研究に戻るわ」
「まあまあ、少しは話を聞いてくださいよ」
「年寄りの話は無駄に長くて嫌いよ。せめてアンセル市にあるチョコ専門店ドディヴァのチョコレート一つ持って帰って来てから話しなさい」
「また高い店の名前を出して……ほら、研究所の近くに駄菓子屋さんがあるでしょう?彼処で我慢してください。それに私は1500歳です、まだまだ若いですよ」
「十分に年寄りだから、もう老人超えて化け物よ。彼処の駄菓子屋のお菓子はもう全制覇したから充分よ。」
「全制覇!?いやいや、待って下さい!ええと…そうですね、あれですよ、そういう全部食べたからこそ、また2週目の良さってものが出てくるんですよ、噛めば噛むほど味が染み込んでくるものなんですよ。ということで、もう一回制覇してきなさい。また違った世界が見えて来ますから。あと化け物なんて失礼な、私はドラゴン族ですからね、ドラゴンの世界で言うと1500歳はまだまだ若いですよ?」
「ドラゴンの時点でもう十分に化け物よ。ふざけないで、もう安いお菓子には飽き飽きだわ。ちょっと後で出掛けるけど、ついでに何か買ってくるものある?オススメはチョコドラだけど…」
「後で駄菓子屋2週目に突入する気満々じゃないですか。何だかんだノリノリで行くんじゃないですか……ではそのチョコドラをお願いします。あと化け物ではありません。歴史の深い高潔な一族です」
「……そうね、無駄に長い歴史を紡いで来たのでしょうね。ふぅ…疲れたわ。もう沢山話したし、土産話はいらないわ」
「ありがとうございます。それでは、話しますね」
「…話、聞いてた?耳がイカれてしまったの?医者に連れて行きましょうか?」
「まあまあ、貴女も聞き始めたら興味を持ちますよ、きっと」
「………はぁ……手短にね…」
「ええ、勿論ですよ……長くなりますがね」
「ねえ…」
「まあまあ聞いてくださいよ、今日は面白い人達に会いましてね……」
コツコツコツ…ウィーンッ
「あっちょっと待って下さい!?駄菓子を買いに行かないで!待って下さいって……
“フィーリア”さん!」
とある研究所の夜が、更けてゆく……




