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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
23/48

お茶って美味しいよね!《22》



「ズズッ……うーんお茶が美味しいね~」



  いや~、平和だね~。フィース君達が屋敷に来て、かれこれ8ヵ月……もうすぐで一年経つね~早いもんだわ~


  えっ?なんでこんなに呑気にやってるのかって?


  暫くは新しく入ってきた眷属ちゃん達の能力向上の為の訓練に費やすため、みんな戦争や実験に駆り出されること無くひたすら訓練の日々。  無能は戦争にも実験にも参加することのないただの記録係なので、わりと、暇していた…。


  いやっ別に!他にも仕事してますからね!掃除に洗濯にフィース君と遊んだりガイエル先輩とヒルダ先輩に遊んでもらったりバイカ少年と戯れたり………あれ?私、遊んでばっかじゃない?つーか私奴隷だよね?奴隷のはずだよね?なんか、此処ってわりと緩いよね、色々と。私達がキャイのキャイのと遊んでいても全然注意されないし…。


  結構、自由な時間がある…。なんて言うか、ゼディアス様ってこちらにあんまり干渉してこないというか、興味がないのは分かるのだけど、こう……本当に何を考えているのかよく分からない方なんだよね…。


  まぁ前はもっと厳しかったんだけど、バルト先輩が厳しい人だったから、少しでも休憩や騒ごうものなら睨み付けられるし、怒られていた。私は顔面パンチを常に食らっていた。私は騒いですらいなかったのに!仕事終わって、ただぽけー(゜ρ゜)と突っ立っていたら顔面パンチを食らっていた。何故に?理不尽だ!



  まっ、まぁ、過ぎた話は置いておいて、そうだ!この地下での奴隷生活の中で唯一癒しのオアシス!フィース君の話をしよう!そうしよう!


  フィース君と言えば、あれから順調に能力を伸ばしていき、そろそろ高位吸血鬼に進化するのではないか?と仲間内で噂されている。



  うーん、それにしても不思議な子だな~彼。優しすぎるぐらい優しくて、笑うと眩しいくらい素敵で、フィース君が喋りだすとみんな雰囲気が柔らかくなって、パッと明るくなるような、彼の周りはみんな笑顔で溢れてる。彼が悲しむと此方も悲しくなって周りが心配しだす、彼が笑っていると此方も笑顔になる。私も最初、フィースをこの屋敷に連れてくる最中、フィース君が泣いているところを見て、普段はあまり泣かないというか、泣かないように心がけていたのに、彼が泣くと、何故か私も心揺さぶられて気が付けば、わんわんと一緒になって泣いていた。


  バイカ少年も前の戦闘訓練でフィース君にボロ負けして、唖々やって悔しがっていたけど、普通にフィース君との仲は良好だ。


  彼、あれだけの才能を持っているけど、不思議と嫉妬の対象とかにならないみたいだった。なんだろうか?これも彼の血の能力の一つなのだろうか?


  羨望の眼差しはあるはあるけど、それから嫉妬や悪意に変わることはない。うーん、彼の人柄もあるのかもしれないけど、誰にでも懐くし、優しいし可愛いし、差別をしない。彼のおおらかな心が、周りを緩和させる。実際、彼が来てから私を苛めてくる人達が減った。一定数はまだまだ居るが、それでも少なくなった方だ。バルト先輩が居なくなった影響もあるだろうが、彼が先導して私を苛めに来ていたからね。


  最近、何だかみんな笑うことが多くなった気がする。やっぱり、これもフィース君の影響なんだろうか?彼は何者なのだろう?吸血鬼になって急激に開花し始めた天才君とか?もしや本当に神の申し子?


  うーん……と、私は首を捻りながら、またお茶を啜る。


ズズッ

「ふぅー……まぁこんなことを考えていても、無能たる私、答えなど辿り着けることもなく……まっ、いつもの如く、なるようになるさ精神で生きてこ~」

 


  ところでヴァンパイアってお茶の味分かるの?栄養になってるの?って疑問に思っているそこのあなた!良い質問ですね!えっ?別に疑問に思ってない?急にテンション上げてどうした?まあ細かいことは気にせず聞いてください!それはですね!人間を騙し抜く為に人間と同じ味覚と嗅覚を手に入れて、自分は人間ですよ~って偽装する為に吸血鬼のご先祖様達が編み出した能力があるらしく!それが【味覚】と【嗅覚】と【吸収】と【魔力返還】というスキルらしいです!人間の作り出した食べ物や飲み物を魔力に変換して、まあ変換出来ても微々たる量しか入らないらしいけど、基本的に人間の血が主食だしね、栄養はそっちの方がある。それでもこのスキルは本当に凄い発明だし、これを産み出してくれた吸血鬼のご先祖様の方々!ほんっとうにありがとうございます!


  私はこの【味覚】【嗅覚】【吸収】【魔力変換】を獲得するのに10年は掛かりましたよ!


  えっ?今までより覚える期間早くなってないか?って?ハハッ、いやはや鋭い!いや~やっぱり、例え吸血鬼になったとしても、食べ物への執着って凄まじいものよね……そんなスキルがあるって先輩方に聞いた瞬間に他にも覚えなければいけないスキルが沢山あったけど、そのスキルを全力で優先させたよね!流石にヒルダ先輩とガイエル先輩も少し呆れていらっしゃいました!バルト先輩からはいつも通り顔面パンチを食らいました!こればかりは食らっても仕方ないと私も思いました!




「おい、なにやってんだ?」



  そんなことを考えていると……突然、背後から声がした。この声は……



「おや、バカの坊やじゃないか?」


「誰がバカの坊やだよ!ぶっ殺すぞ!」


「なにって、お茶を飲んでるよ?君も飲むかい?お茶?」


「飲まねえよ!」


「あらそうかい…」


「つーかなんでババア口調なんだよ」


「いや~だってババアだからね~」


「……オメー本当に100歳か?見た目ガキのまんまじゃねえか」


「吸血鬼は上位に進化しなきゃ成長出来ないですよ~」


「そうなのか!?」


「そうですよ~えーと、先輩方なんて言ってたっけな?あ、上位に上がれば本来の歳にも成長出来るし、子供にも戻れるらしいですよ」


「マジか!そうか、そんなんだ………それじゃあ、俺も上位の吸血鬼になればっ…」



  あ~、もしかして……成長したらこの童顔も無くなるんじゃ…?とか思ってるのかな?どうだろう?何となくだけど、この子、成長しても指して変わらない気がする…。


「………」


「お、おい、なに遠い目してんだよ!なんか文句あんのか!」


「いやいや!何でもないですよ~ハッハー!」


「嘘つけ!馬鹿にしてんだろ!?俺はな、筋肉ムッキムキの髭を生やしたダンディーな大人になるんだ!」


「ぇえっ……正気、ですか?」


「なに引いてんだよ!」


  その可愛らしいお顔に筋肉ムキムキ!?髭を生やす!?ダンディーな大人……それは、ちょっと想像しにくいな…。


「ええと……もう少し現実を見た方が良いと思いますよ…?」


「なんで無能に諭されなきゃいけないねえんだよ!俺はなる!なるったらなるんだ!」


  まぁ確かに、人の夢っていうか、なりたい目標みたいなものにケチつけるのは違うか。



「あ~えと、それじゃ、ガンバ☆」


「なんだその雑な応援!あと生暖かい目ヤメロ!」


「オウエンシテルヨ☆」


「いらんわ!あと片言やめろ!ハァッハァッ…コイツと話すとドッと疲れる……つーかまた何で俺はこの無能に絡んでるんだ…?」


「そうだね~君も大概変人だよね~私にわざわざ話し掛けてる時点で☆」


「お前に言われたくねえわ!此処で一番の変人に!別にお前に話し掛けたくて話し掛けてんじゃねえから!」


「えっ、じゃあ何しに来たんですか?」


「それはっ……ハッ、そうだ!ゼディアス様にお前を呼んでこいって言われていたんだ!」


「えっ、そうなの?ん………ゼディアス様が!?ちょっ、早く言って下さいよ!?」


「わっわりぃ!いや殆どお前のせいだろ!」


「それはそう!とりあえず行って来ます!伝言ありがとうバカ君!」タタッ


「だからその呼び方やめろ!」




  それにしても、ゼディアス様が私を呼ぶとはまた珍しい……一体何の用だろう?


  うん?でもどうして……ゼディアス様ほどのお方なら自分の部屋からでも地下の方に念話を送れるのでは?どうしてわざわざバイカ少年に頼んで伝言を?


  そういえば、最近ゼディアス様をあまり見かけないな……ヒルダ先輩やガイエル先輩から聞いた話だと、ここ暫くはゼディアス様が部屋にいる時間が増えたと聞いた。どうしたんだろう?


  うーん、考えてもサッパリ分からん!とりあえずゼディアス様の部屋に向かうしかない!





「ゼエゼエッ…ハアッハァッ…」


  地下からゼディアス様の部屋に全力疾走で来たから、息がっ……ちょっと整えてから入ろう…。



「スーッハーッ……よし!」


コンコンッ


「失礼致します、ゼディアス様。お呼ばれしました、リンゼルです。少々到着に遅れてしまい、大変申し訳ありません」


「………」


  シーン…と、静まり返った空気。返事が返ってこない……えーと、誰も居ないのかな?もしかして遅れたから怒ってらっしゃる!?どっ、どうしよう!なにか弁明をっ……駄目だ!このポンコツ脳ではなんも思い付かん!遅れた事は本当だし!くっ、どうすればっ!!



  すると、ゼディアス様の部屋から微かに声が漏れて聞こえてきた。



「ゼディアス君、ノックが聞こえたよ」


「………あぁ、そうか…」


「いや、あぁ、そうか。じゃなくて、入室の許可を出しましょう」


「………入れ」



  ん?なんか知らない人の声が聞こえたような…?気のせいか?いやっ今はそんなことを考えてる暇はない!とっ、とりあえず!今思いついたことだけど、やるっきゃない!!



ガチャ

「はい、失礼します!」



ズザザザァアッ



「………」


「……えっ?」



  何とも言えないような顔をした無言のゼディアスと、知らない声の持ち主の困惑した声がする視線の先は、扉を開けて早々にズザザザァアッと大きな音をたて、スライディング土下座を決めるリンゼルの姿がそこにあった。



「遅れてしまいぃいいっ……誠にっ、ひじょーうに誠に申し訳ありませんでしたぁああああっ!!」






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