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無能な吸血鬼少女  作者: 愚かな黒ウサギ
19/48

遠い、遠い過去の夢《18》



  ルンルンルン♪みんなでピクニック~♪



  そんな訳もなく、残ったみんなで新しく眷属(奴隷)を探しに人里を襲おうぜ!の旅です!



  いや~毎度ながらこのお仕事は気が滅入る……だって無理やり連れ去って吸血鬼(奴隷)にするんだから、流石に心痛む。まぁ私は何もしないんだけど、逃げ出す輩がいるからその見張り役としてたまに私も出動している。




「みんな~この辺で休憩だよ~」


「「「はーい」」」


「疲れたー」

「足クタクタだよ~」

「そろそろ朝日が昇るからな、テント作るぞ~力残ってる奴はみんな集まれ~」

「はーい」

「人里中々見つからないね~」

「まぁこの周辺の人里は殆ど狩り尽くしたからね~仕方ないんだよ」

「ハァーッ明日も頑張るか~…」

「おいっ無能!足止めてんじゃねえ!歩け!」

「ゼエゼエっ…もう…足が、動かない……パタリッ」チーン…

「おーい無能がまた倒れたぞ~ヒルダ先輩呼べ~!」



  フッ……若い子達はまだまだ動けそうだね……無能な吸血鬼お婆ちゃんこと、リンゼル100歳はちょっと休ませて…もらい…ますわ……チーン……







☆回想




『ピーリフ、その、学園の入学おめでとう!すごいね!あそこの学園って倍率?っていうのが凄いんでしょう?特別な魔力を持った人しか入れないって……ピーリフは2才ぐらいの頃から魔法を使えて、その上使うのが上手だったもんね!この子は天才だー!って父さんと母さんが喜んでいたのを思い出したよ!』


『………ねえ』


『?……なに?』


『なんでそうやってヘラヘラ笑っていられるの?気持ち悪い…』


『えっ……アハハ、ごめん……ほら、ピーリフにおめでたい出来事があったから、お姉ちゃんも嬉しくなっちゃって…嬉し笑い?みたいな?』


『……本当に気持ち悪い…』


『アハハ……ごめん……でも、せめておめでとうって伝えたくて…』


『……ねえ、さっきの話、聞いていたんでしょう?』


『……さっきのって…?』


『姉さん置いていかれるんだって……邪魔だし使えないし無能すぎてこの田舎に置いていくって!父さんと母さんがさっき話していたこと!姉さん聞いていたよねっ!?』


『………うん……聞いていたよ…』


『なんでそんな風に笑えるの?姉さん捨てられるんだよ?』


『………仕方ないよ』


『仕方ない?』


『………いずれ、こうなるんだろうなって思っていたから…』


『姉さんは、それでいいの?』


『………』


  私は無言なまま、曖昧に笑った。


『っ~……あなたのそういうところっ、ほんっとうに嫌になる!』


『……ごめん…』


『謝らないで!ヘラヘラするのもっ…腹が立つ!姉さんプライドないの!?』


『……プライドか~…うーん、あるかな~?姉さん?』


『私に聞かないでよ!私が姉さんに聞いているの!』


『うーん……じゃあ……無い、かな?たぶん』


『多分って……腹が立たないの?やり返そうとか…』


『そんな力ないよ~』


『だから何が何でも力を手に入れようとか!』


『………考えもしなかった…』


『…バカなの?姉さん、見捨てられたんだよ?ゴミみたいに、ポイって…』


『上手いこと言うな~ピーリフは~』


『茶化さないで!姉さんはっ……』


『ありがとう…ピーリフ、心配してくれてるんだね…』


『そんなんじゃないっ!!私は貴女なんかっ、貴女なんか大っ嫌いなんだからっ!!』タタタッ


  そう言って、走る去るピーリフを見ながら…



『うん……知ってる……知ってるよ……』



  お姉ちゃんはね、私は……ピーリフのこと、大好きだよ……嘘みたいに思えるでしょ?うん、姉さんも嘘みたい。でも、貴女は私を無視したりたまにキツく当たる事もあるけど、母さんからご飯を抜きにされた時、ピーリフはパンをコッソリ持ってきて扉の前に置いてくれたこと、父さんに躾だって言われて冬真っ只中、外に追い出されて家の中に暫く入れてくれなかった時、魔法で私の周辺の温度を上げて温かくしてくれたこと、いやこれには姉さんも本当に驚いたよ?何この魔法!?うちの妹天才では?って、姉さん父さんが家に入れてくれなかったショックより妹の魔法の事で頭の中いっぱいだったよ!


  ピーリフはきっと根はとっても優しい子なんだな~って姉さん思ったよ……姉さんが勝手に都合の良いように解釈しているかもしれないけど、それでも良いや、ほら、前にピーリフも言ってたじゃない?「姉さんの頭の中はお花畑なの?」って、そうなんだよ、きっと、姉さんの頭の中はお花畑なのかもしれない。



「………」


  ごめんね、ピーリフ………もう少し、お姉ちゃんが普通だったら、ピーリフも辛い目に遭わなかったね……無能なお姉ちゃんって、正直身内に持った家族は大変だったと思う。父さんも母さんも、最初はね、何とかしようと頑張っていたんだよ、だけどね、疲れたんだろうね……周りが私を冷たく見るように、父さんも母さんもその内冷えていっちゃった……


  私のせいで父さんと母さんは毎日喧嘩をするようになった……




☆回想



『お前がちゃんと見ていないからこうなったんじゃないか!!』

『何よ!全部私のせいだって言うのっ!?そもそも貴方だってもう少し家の事をしてくれても良いんじゃなくてっ!?貴方の愛情が足りないからこの子はこうなったのよ!!』

『なんだとっ!俺はお前達の為に外で働いているんだぞ!!そもそもそんな無能っ、本当に俺の子かっ?』

『どういうこと?私が浮気したとでも言うのっ!?』

『ああっそうだ!こんな出来損ない俺の子であるわけがない!お前が何処かの下半身の軽い野郎でも連れ込んで作ったんじゃないか!?』

『なんですって!!』



ギャアギャアッ



  私は、耳を塞いで、蹲っていた…


『っ……』ポロポロッ



  ただただ二人の怒鳴り声が止むのを、涙を流しながら声を殺して待っていた……




  ごめんなさいごめんなさい……








  ごめんね……ピーリフ………お姉ちゃんが不甲斐なくて、本当にごめんね……



  でもね、ピーリフが産まれてから、父さんと母さんは変わった。笑顔が増えた。ピーリフは才能溢れる子だったから、父さんと母さんは歓喜した、私達のせいじゃない、これが正しい、これが本来あるべき姿だ、あれは失敗だ、あれは間違いだ、そうだ、あれは無かったことにしよう、父さんと母さんはそう思った、それからのことは……なるべく思い出したくない…。


  でもピーリフのおかげで父さんと母さんが笑うようになった……それだけでも良かった………そう、良かったんだ………



  だから、私は、居なかったんだ……最初から………最初から………



「………」



『おねえちゃん!』


  あぁ、ピーリフが3歳ぐらいの頃かな?その頃はまだ私によく懐いてくれたな……嘘みたいな、本当の話。あの時が一番幸せだったかもしれない…。





☆回想



『おねえちゃんは、どうして父さんと母さんにムシされてるの?』


『……それはね、失敗したからだよ』


『しっぱい…?』


『そう、失敗したんだ…』


『しっぱいするとムシされるの?みんなおねえちゃんを殴るの?なんで?』


『人間はね……時々間違って産まれてくる事があるんだって、そういうのをね、欠陥って言うんだって、お姉ちゃんはね、欠陥を抱えたまま産まれて来ちゃったんだ……でもね、誰も悪くないんだよ…』


『誰もわるくないならどうしてお姉ちゃんは殴られるの?』


『それはね、この世の中が欠陥品を求めていないからだよ、みんな同じことをして、みんなが出来て当たり前の事が、たった一人でも出来てないって思うと、人は気持ち悪くなって、反乱異分子をやっつけようって思うんだ』


『はんらん、ぶんしってなあに?』


『無能……何にも出来ない、足を引っ張る人間のことだよ、この世界に何の実も残さない、ただのゴミ、この世界はそんな人間いらないんだよ…そういう風に出来ているんだ…』


『うーんうーん…やっぱりよくわからない…』


『そうだね、まだピーリフには分からないか…。良いよ、今はそれで良いんだ……その内、ピーリフにも分かるよ……その時は……もうお姉ちゃんのこと…ピーリフは人間として見ていないだろうね…』


『…そうなの?』


『うん、そうなんだよ』


『どうして?』


『どうしてって、だからその内大人になっていったら…』


『どうして?おねえちゃんは優しいよ?ピーリフといっぱい遊んでくれる……ピーリフが近所のあの大嫌いなユー君たちにイジメられてる時、いつも守ってくれるよ?怪我して血いっぱい付いてて、ちょっぴり怖かったけど、でも、そのあと泣いてるピーリフをいっぱい抱きしめてくれるよ?撫でてくれるよ?いつもおねえちゃんはピーリフを守ってくれるよ?ピーリフ、そんなおねえちゃんが大好きだよ?』


『っ……』


『ピーリフ、おねえちゃんのこと嫌いにならないよ!殴らないしムシしないよ!ほんとだよ!』


『ピー、リフ…』


『むのう?とかけっかんひん?とか、よく分からないけど、ピーリフにとっておねえちゃんは優しくてかっこいいおねえちゃんだよ!』


『………』ポロポロッ


『どうして泣いてるの?おねえちゃん?どこか痛いの?』


『っ……うん…うんっ………いっぱい、胸が痛いや……』ポロポロッ


『どうして?痛いの?ピーリフおねえちゃんムシしてないよ?殴ってないよ?どうして痛いの?』


『どう、して、だろうね……どうして……あぁ…ごめんね…ピーリフ…お姉ちゃん…弱くて……ごめんっ…』ポタポタッ


『?……うーんとうーんと、痛いの痛いのとんでけーとんでけー』


『グズッ…アハハッ………うん……最高の魔法だ……ピーリフ、ありがとう……痛いのとんでった!』


『ほんとう?えへへ~』


『うん!ピーリフは最高の魔法使いだね!これからピーリフはもっともっと上に行くよ!』


『うーんと、うえ?にいくってなんだか分からないけど、ピーリフはおねえちゃんと一緒にいく!』


『っ……ふふ、お姉ちゃんと一緒に上にいく?』


『うん!お天とさままで!』


『お天とさままでっ!?それは大きく出たな~お姉ちゃん付いて行けるかな~?』


『だいじょうぶだよ!ピーリフが引っ張っていってあげる!』


『お~それはありがたい!それじゃあお姉ちゃんピーリフの後ろに必死にしがみついて行くしかないね~!』


『ちがうよ!となりで一緒にいくんだよ!』


『!……そっか…そうだね!隣で一緒に歩いていこう!』


『うん!』








ユサユサッ


「リ…ちゃ……リンゼルちゃん!」


「ハッ………ヒルダ、先輩…?」


  あ……そっか……夢、か……


「リンゼルちゃん…どうしたの?」


「えっ…?どうしたって…」ポタッ


「泣いてるわ…」


「………」ポタポタッ…


  ヒルダ先輩が言ったように、私は泣いていた……あーもう、やだなぁ……



「魘されていたし、怖い夢でもみた?」


「ぁ……はい、とっても怖い、夢でした…」


「…そっか………それじゃ、どうする?まだ出発までは時間があるし、もう少し休んでる?」


「………いいえ、大丈夫です…直ぐに顔洗って支度してきます!」


「そう?無理しないでね?」


「はい!ご心配無用です!ただの夢ですから!」



  そう、ただの夢……あまりにも懐かし過ぎる、遠い遠い、過去の夢……






ザッザッ


「みんな~起きた~?」


「あらガイエル、おはよう」


「おはよう、ヒルダ」


「おはようございます!ガイエル先輩!」


「おはようリンゼル……起きて直ぐに声がよく出るね~うんうん、その辺はリンゼルの長所だね」


「ありがとうございます!支度行ってきます!」


「うん、行ってらっしゃい……寝癖、頑張ってね…」


「えっ……今日そんなに酷いですか!?」


「うん……かなりヤバイ」


「………と、とりあえずいってきます!」タタタッ


「うん、いってらっしゃい」


「起きて早々あんなに動ける所も長所ね~」


「……そうだね」


「どうしたの?ガイエル?」


「……リンゼル…目が腫れていたけど、何かあった?」


「…気付いていたのね……悪い夢でも見たみたい…」


「そっか……最近色々と大変なことが続いているからね……少し疲れが出ちゃったかな…」


「そうね…」






タタタッ



「うわお!マジでひっでえ寝癖っ!?ど、どうすれば良いんだろ、これ……濡らせば何とかなるかな…?なるか?これ……」








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