眷属補充《17》
「眷属補充……ですか?」
「うん、そうだよ」
「先の戦いで多くの眷属達が亡くなったわ、ゼディアス様から眷属を補充してこいと命を下されたの」
「あ~、確かに、だいぶ減りましたからね…」
奴隷をまた増やすってことですね…
「うん、それで補充。ちなみにその補充にはゼディアス様も付いてくるらしい」
「あら、そうでしたの?」
「えっ、ゼディアス様も!?わぁ~それは緊張するな~なるべく失敗するところを見付からないようにしよう」
「失敗しないように気を付けようじゃなくて、失敗すること前提なのね…」
「はい!」
「良い返事だわ……リンゼルちゃんらしいっちゃらしいけど…」
「リンゼルはいつも通り僕らの後ろでちゃーんと見張りをするんだよ?」
「イエッサ!」
はい!見張りという名のお荷物ですね!分かります!後ろで大人しく付いてこいって事ですね!何もするなと!分かってます!私が何かしたら仕事が増えるだけですからね!理解していますとも!
「それにしても、子供ばかりが残ったな…」
「そうねぇ、新人が最近入ったばかりで、殆どがまだ力の制御もできてない赤子も同然の子供達ばかりだわ…」
100年生きてる大人ですけど今のところ全く力を制御できていない私はずっと赤子同然ですけどね!!胸をはって言う事でもないですけどね!!
「リンゼルちゃん、ここではもう貴女もだいぶ古参の吸血鬼なんだから、また新しく入った吸血鬼の子達の面倒をよく見てあげてね?」
「はい!もちろんですよ!」
任せられました!この無能たる私!出きることは全力でやらせて頂きます!例え後々私が無能と分かって苛めてくると分かっていても!私は先輩ですからね!耐え抜いて見せましょう!こちとら100年間後輩の吸血鬼諸君に舐められ続けとるんじゃい!年期が違うよ!年期がね!!これも胸はって言うことじゃないけどね!!
ドシッドシッ
「おい……出るぞ…」
おぉ……重低音のひっくいお声が耳に響く~、唐突のゼディアス様のご登場にリンゼルとってもビックリしましたよ!それにしても相変わらずそこにいるだけで緊張感走るなぁ…
ゼディアス様ってあの巨体でよくあんな俊敏に闘えていたな、どういうカラクリ?本当にバルト先輩とゼディアス様の闘いほぼ何にも見えなかったからなぁ……アレもしかして夢だったかな?って未だに思うときある…。
「……ゼルちゃ、ん……リンゼルちゃん!」
「ハッ!」
「どうしたの?置いて行くわよ?」
「すっすみません!考え事をしていました!今行きます!」タタタッ
とりあえず今は眷属補充に集中しなきゃ!私は何にもしなくて良い!寧ろしたら迷惑が掛かる!ガイエル先輩とヒルダ先輩の後ろで大人しくしておこう!
それにしてもお外久々に出るな~、私は補充係として駆り出されたの、ただの一度きりだけだからなぁ…。まあいつもの如く失敗して次からは呼んで貰えなくなったって言うオチなんだけどね……
「………」
あの時のことを……私は百年経った今でも覚えている……
☆回想
『うがぁああああっ!!!』
ビギビキビキッ
男の身体全体に亀裂が走り……
バンッッ
と、爆発した
ビチャッ
『っ……』
爆発した男の血が私の顔に体に飛び散った。
『……爆発、した…?』
『こんなケース見たことない…』
ヒルダとガイエルが驚いたようにその場の出来事を凝視していた。
『………血が適合しなかったか…』
ゼディアスがそうポツリと呟くと、それを聞いたガイエルがゼディアスに話しかけた。
『失礼、ゼディアス様、質問なのですが、血が適合しなかっただけで爆発するなんてケース今の今まで見たことがありません、普通は適合しなかったらそのまま静かに死んで行くだけだと…ですがリンゼルのこれは…一体……』
『……そうか、お前達はこれをまだ見たことがなかったか……血を注ぐのが下手なやつはこうなるのだ……お前達はいつもどういう風に血を注ぎ込む?』
『えっ……心臓に脳に身体に馴染むようにゆっくりと注いでいきます、そして主の、ゼディアス様の刻印を心臓に入れます』
『あの無能は初めての事で焦ったのであろうな、血を速く注ぎすぎた、刻印を心臓に入れるのも失敗したように見える……そうなるとああやって急激に注ぎ込まれた血に身体が拒絶反応を起こし爆発するのだ……どういう理屈かは私も分からんがな……』
『そんな、ことが…』
『知らなかった…』
『リンゼルにもう少し丁寧にしっかりとやり方を説明してやればっ…』
『あんなの…リンゼルちゃん相当堪えるんじゃ…』
『っ!』タタタッ
ガイエルは突然走り出した。
『ガイエル!?あっ…』タタタッ
ヒルダも何かに気付き、ガイエルに続き走り出す。
『……ハァッハァッ…』
私は、私は、私は、私は……
何をやった?
私は男の人に血を注ぎ込んで、眷属に、しなきゃ、で……それで、仲間を増やして、それで、それでそれで……
わ、たしは………
『ハッ…ハッ…』
呼吸が、荒い……酸素、足りて、ない、のかな?頭が……重い………
『…ハッ…ハッ…ヒュッ』
呼吸って、どうやるんだっけ?
タタタッ
『リンゼル!』
ガシッ
『ヒューッ…ヒューッ…』
ガイ、エル、せん…ぱい…?
あぁ、頭が…ボーッと、する……
タタッ
『リンゼルちゃん!しっかり!』
ヒルダせんぱいの、声もきこえる…
『落ち着いて!ゆっくり呼吸をしようか!』
背中が温かい……ガイエルせんぱいが、背中を擦ってくれてるのかな?
『リンゼルちゃん!』
ヒルダせんぱいが心配そうなかおでワタシをみている………どうしたんだろう……?
わたしは、きょう、なにを、して、いたんだろう?
わたしは、なにを、なにを、、、
なにを、して、しまった、の?
★
温かい……何かに、包まれてるような……
『大丈夫、大丈夫だから…』
『リンゼルちゃん…大丈夫よ、側に居るから…怖くないわ』
『怖かったね、少し驚いてしまったね?もう大丈夫だから、そのまま目を瞑ったままで居ようね?』
ガイエル先輩とヒルダ先輩が、二人して私を抱きしめて居るんだ……
温かい………このまま目を瞑ったままで、いいの、だろうか……ほんとうに…?
あぁ…でも……とても……ねむ、たい…な………
『すぅ…』
『眠った、か?』
『ええ…そのようね……良かった…睡眠のハーブが効いたみたい…』
『あのままだとリンゼルちゃんの身が危なかったからね…とりあえず暫くは眠っておいて貰おう…』
『やっぱり、耐えられなかったみたいね……きっと今回の件は、トラウマになったでしょうね…』
『あぁ、無理もない…彼女は此処に来てまだ日が浅い、それにまだ子供だ……子供にこの惨たらしい惨状は、キツいだろう…』
『………ねえ…ガイエル、この子は……これから先、生きていけるのかしら?』
『……無理だろうね…』
『この子、この先戦争に出されたら終わるわよ?多分秒で死ぬと思うわ』
『………』
『ねえ、ガイエル……もう……』
『………リンゼルは、戦争には出させない』
『えっ……でもゼディアスがそんなこと許さないんじゃ…』
『ゼディアスは僕が何とか説得してみせる…』
『ねえ……ガイエル……どうしてそこまでこの子に肩入れするの?確かにリンゼルちゃんは良い子よ?まぁ失敗は多いけど、優しくてよく気が回る子よ?でも……貴方がそこまで面倒を見る必要がある?今までの子達にそこまでしていた?』
『………』
『……確かに、私もリンゼルちゃんはフィーリアと少し重なる瞬間はあるわ……でもだからってあの子一人を特別扱いする訳にも…』
『特別扱いなんてしていないさ……あの子にはあの子の出来ることをさせたいと思っているだけだ。それに戦争だけが僕達の仕事じゃないだろ?』
『そうだけど……でも……』
『それに、リンゼルならもしかしたら……ゼディアスを倒せるかもしれない…』
『えっ………ハァアアッ!?何を言ってるのっガイエル!?リンゼルちゃんがゼディアスを倒せる!?ちょっ、貴方頭でも打ったっ!?』
『そうかもね…』
『いやそうかもねって!』
『何故、ゼディアスはリンゼルを拾ったんだろうね?』
『えっ…』
『弱くて、何をやらせても殆ど失敗に終わる……皆から無能と呼ばれる少女を……いつでも殺せる少女を……どうしてゼディアス様は生かしている?』
『………ただの、気まぐれじゃないの?弱い子をいたぶって遊んでいるだけじゃない?』
『そうだね、その可能性もある。でも、どうしてかな?ゼディアスはリンゼルが失敗してもお仕置きで殴る事はあるけど、それこそゼディアスなら一撃で殺せるだろう、だけど死なない程度にボコボコにするだけ、多分ヒルダが回復することを込みで。』
『だから遊んでいるだけじゃ…』
『リンゼルは、苦しそうにしてた?悲しんで泣いた?痛がっていた?僕達に助けを求めたかい?』
『…いいえ、あの子は…ずっと、無表情で痛がることも泣くこともなく……ただ、耐えていたわ…』
『何の表情も出さない怖がらない泣かない叫ばない、心も壊れる様子もない。いや、ある意味壊れているのかもしれないが……そんな子をいたぶって愉しいと思うかい?』
『………でも…』
『それにね、ゼディアスがよくリンゼルを目で追っている姿を見かけるんだ…』
『……それって、アイツがロリコンの変態なだけじゃないの?』
『此処にはリンゼル以外にも小さな女の子の子供が何人か居るけど、ゼディアスは一度もそういう目で見ていなかったよ、どちらかと言うと興味無さそうだった』
『でも……じゃあどうしてゼディアスは……まさかっ、リンゼルちゃんみたいな子供が好みとか!?』
『うーん、そういう惚れた腫れたみたいな感じでもないと思う……あれはどちらかと言うと……興味、かな?』
『興味?』
『ほら、あの人は僕らには全く興味無さそうだけど、たまに、本当にごく稀にリンゼルの方を見ているんだ……もしかしたら、これはゼディアスを出し抜く良いヒントになるんじゃないかと思ってね…』
『えっ……』
『リンゼルは使えるよ……生かす価値がある…』
『ガイエル……貴方……』
☆
あの時の人間狩り、もとい仲間集めに参加した私は、それはもう散々な失敗をしてトラウマを抱えた。あの後情緒が不安定な日々が続き、ガイエル先輩やヒルダ先輩にとても迷惑をかけた……暫く食欲もなく先輩達が用意してくれた食事も一切手をつけられなかった。だけど、ずっと塞ぎ込んでるいる訳にもいかないと、私は戦争に出る訳じゃないんだ、他のみんなは殺したくもない元同族達を殺めなければならない、その命の重みは計り知れない……たった一人の命を奪ったぐらいで、私がメソメソしていては駄目だ!戦ってるみんなの重みに比べれば、私の重みはまだまだだ!そうだ、私は今出来る自分の仕事をこなさなきゃ!例え失敗しても、何もやらないよりマシだ!
私は奮い立ち、仕事を再開させます!…と、先輩方に伝えると、「もう少し休んでて良いんだよ?」と優しく声をかけてくれる、涙が出そうになる、でも二人の優しさに甘えてちゃ駄目だ!私は初めて行った眷属補充の旅から帰って3日後、少しお休みを頂いて貰ってから直ぐに自分の任せられている仕事に復帰した。
そうだ、私は何故だか戦争に参加させられる事はないらしく?本当に何故に?と言う気持ちなんだか、どうやらガイエル先輩がゼディアス様を説得してくれたらしい…。あのゼディアス様を一体どういう風に説得したんだろう?
それにしても、ガイエル先輩は優しいな~……ヒルダ先輩もそうだけど、あの二人は何で私にこんなに良くしてくれるんだろう?
うーん、何故だか分からないけど私はあの二人に気に入れられている。私がここまで100年間も生きてこれたのはあの二人が守ってきてくれたから、この命はお二人のおかげでここにある……。
でも、妹さんに少し?似ているからって普通ここまでするだろうか?本当に謎だな~……
うーん、あの二人が考えてること……100年経ってもサッパリ分からん!




