バルト《15》
ドンッガンッボギッ
あれから何分?経っただろう?体感5時間ぐらい経った気持ちだけど、多分まだ一時間も立ってない気がする…。
「おらぁああ!!」バンッ
「………」
うーん、それにしても何も見えんわ~。何が起こってるかサッパリ分からない。この闘い、いつまで続くんだろう~?分かるのは闘いが激しくなっていく一方ってことぐらい。
はぁーっそれにしてもガイエル先輩とヒルダ先輩の背中を見ていると落ち着くな~、こう…守られてる!って感じがする!安心する!
いや、今絶賛殺し合いの最中だから安心も糞もないんだけど……。
ポタポタポタッ
「ハァッハァッ…」
バルト先輩すんごい血と汗だな~、対してゼディアス様は汗一つかいてない。傷も多少は負ってるけど、見た感じ余裕そうだ。
バルト先輩は片目が潰れて、左腕も折られたのか、ユラユラと揺れている。回復が間に合ってないのかな?片腕だけで何とか渡り合ってる、弱っているけど、一応何とかゼディアス様と闘えている。でも………
バシュッ
「ガッハッ……ガハッゴホッ」
ゼディアス様が血の能力で出現させた魔剣がバルト先輩の腹に深々と刺さっていた。
決着は、もう見えていた。
ボタボタッ
「チッ…クショウッ……畜生畜生畜生っ……俺、はっ…ハァッハァッ…お前をっ……仲間達のっ、仇をっ…」
ドバドバとバルト先輩の腹から血が流れる。
「ハァッ…ハァッ……オレ、は……絶対にっ……お前を……お前をっ……ぶっ殺してやる!」
「………」
ゼディアス様は何も答えない。あの人はずっと黙ったまま闘っている。奴隷風情の言葉など耳にも入らないのか、それとも、目の前の死に逝くハエには興味もないようにも見える……
初めて出会った時から、あの人は虫ケラでも見るように此方を見る、それは誰に対してもだ。でも彼がそのように私達を見る理由が今なら何となく分かる。
あぁ、敵わない。このお方には一生敵わないんだと、“無理”だ、と…心が体が叫んでいる。あの人には敵わない、勝てるわけがない。
余りにも強く、余りにも強大で、余りにも壁が大きい……この壁を越えられるものなら越えてみろと、彼の堂々たる姿が物語っている。
そりゃガイエル先輩達がバルト先輩の誘いを断る訳だ。無能な私でも分かる、この人に手を出してはいけないと、肌で血で心で感じる。
「ゼェッ…ハァッ……」ボタッボチャッ
それでもバルト先輩の目はまだ、死んでいなかった…。どれだけ血を流そうと、片目が見えなくなっても、腕が折られても、腹に穴を開けられていても、彼は進んだ。
「バルト…」
「…バカ……バカよ……あなたは……」
ガイエル先輩とヒルダ先輩は目を伏せ、握りしめた拳からは血が流れていた。二人はかつて共に笑いあった幼馴染みへの想いを馳せているのだろう。
二人が苦しそうに溢した言葉を、二人の背中から私はただ虚しく聞き流すだけだった。
「うぐっ…がぁあああああっっっ!!」ダダダッ
バルト先輩は走り出した、血と涙と汗でグシャグシャになった体で、全身全霊をかけて走り出した。ゼディアスに少しでも報いるために。
「………終わりだ」
ここでゼディアスが初めて口を開いた。
バシュッ
バルトの首が宙を舞った。
「っーーーフィー、リア……」
彼の愛した女性の名を最期に呼んで、彼、バルト・ライゼットは、事切れた。
決着は、ついた。
闘いが、終わった。




