血の味《13》
あ、れ……?血の味がする……冷たくて、でも温かい………この味を、私は知っている……
~♪~♪~♪
あぁ……耳心地が良い……
これは、私の好きな曲だ……そう言えば、この曲のタイトル…知らないな……
パチ
「ん……」
こ、こは…?地下じゃ、ない…?ここは…屋敷?屋敷の中だ……
「……」
辺りを見回すと、横にご主人様が座っていた…
「っ!ゼッ、ゼディアス様っ!?」
「………」
「あ……ええと……」
「………」
何故黙ったままっ!?此方を見向きもしないし!どっ、どうすれば!?というか何故わたしはここにっ!?
えーとえーと、思い出せ!私は何故ここに居て、何故このような状況になったのか!えーと、最後の記憶は……
☆
パタリ……
『リンゼルちゃん!』
『リンゼル!』タタッ
『!…この血の乱れは……渇き……血が足りてないんだ…』
『!…待っててっ直ぐに鹿でも兎でも狩って来て持ってくるわ!』
『駄目だ……ここまで渇いているのなら、動物の血じゃ足りない……そもそも動物の血は応急措置に過ぎない……本来僕らの吸血鬼の力の源は人間の血だ、そちらの方が栄養がある、僕らにとっては。だけどリンゼルは…』
『人間の血を飲まない…』
『正確には、彼女の能力的に人間を狩れない…動物を狩るので精一杯だ…』
『私達が血を分けてあげようか?と言っても、首を降って「それは先輩方が苦労して手に入れた血です、何もしていない私が頂いて良い品ではありません……私は私の出来る限りで狩れる生き物で何とかします」って言って聞かなかったのよね…』
『彼女、変なところ頑固だよね…もっと周りに頼っていいのに…』
『ええ…本当に…』
『でも、今はそんなことを言っている場合じゃないね。今は緊急事態だ、僕が人間を捕獲をっ……いや、待て、それじゃ間に合わないか…ここまでの渇き、今から人里まで行って帰ってきたとして…果たして間に合うかどうか…』
『そうね……ギリギリだと思う…』
『くっ、一体どうすればっ…』
『………ハッ、そうだわ!私達の血は!?』
『!…そうか、その手があったね!二人でリンゼルに血を注ごう!』
『ええ!』
そう言って、二人がリンゼルの元へ駆け寄ると…
ゾックッ
『『ッッ!』』
『(この、気配はっ…)』
『(チッ…面倒な人がきたな…)』
ザッザッ
『何をしている?』
重低音の声が、その部屋に響き渡る…
『ゼディ…アス…様…』
『……我らが偉大なる主ゼディアス様、一体どういったご用件でしょうか?今は少し、我々も忙しくしておりまして…何か急用ですか?』
ガイエルは何処か焦る気持ちを抑えながら床に膝をつき、ゼディアスに対応した。
『何をしている?と、聞いている』
ゾッ
『っ……申し訳、ありません……リンゼルが、倒れてしまい、恐らく渇きが原因かと…その為私達の血を注ごうと…』
『………襲わなかったのか?』
『……襲いませんでした…』
『…渇きに、耐えたのか……』
『………彼女は、無能ではあります……ですが、とても堅い意志があります……彼女は…リンゼルは、強いですよ…』
『……』
『急ぎ、彼女に血を与えたく思います。宜しいでしょうか?』
『………』
ゼディアスは少し考えるように一瞬リンゼルの方を一瞥した後……
『……いや、私が預かる…』
『………えっ…?』
『血は私が与えよう…』
『………一体…どういう風の吹き回しで?』
『…お前達に話す必要があるか?』
『ぐっ…』
『っ……ガイエルッ…(ここは流石に引きましょう!)』
『っ………リンゼルを、死なせませんか?』
『………さあな…』
ザッザッ
『ッ…』
『リンゼルちゃん…』
☆
あー、うーん、全然思い出せん!ガイエル先輩に抱き締められて、ガイエル先輩の血の匂いでお腹空いて襲い掛かりそうになったけど、まぁそもそも襲い掛かった所で返り討ちに遭うだろうし、とりあえず滅茶苦茶我慢に我慢した結果が気絶したと……恥しか晒しとらんな…わたし……
そしていつまでゼディアス様は黙っていらっしゃるんだろう?こちらから話し掛けた方が良いんだろうか?怖いからなるべくこちらから話し掛けたくないんだけど…
「……」
「……」
きっっまず!えーと、なんか話すことあったっけ?うーん、そういや渇きで私倒れたんだよね?たぶん……。それじゃ、その渇きから私を救ってくれたのが……
えっ……ご主人様?ゼディアス様が私を…?どうして……
「あの…」
意を決して話し掛けてみる。
ザッザッ
「……」
ゼディアス様は立ち去る……
「ぁ……」
え……えぇ……?
話し掛けた瞬間立ち去ったんですけど!?え……私とのお話はお望みではない!?いやまぁ、無能と話すことはないでしょうけど……でも、どうして私を助けてくれたんだろう?多分助けてくれたのは、ご主人様だよね?
「うーんと…えーと……」
とりあえず、寝床の地下に戻ることにした。←(考えることを放棄した)
☆
「リンゼルちゃん!」タタッ
「リンゼル!」タタッ
「ヒルダ先輩!ガイエル先輩!」
「無事だったのね!」
「…良かった……本当に…」
「あぁ、えーと、ご心配おかけして、すみません…」
地下に戻ると、ヒルダ先輩とガイエル先輩が早々に迎え入れてくれた。二人とも余程心配だったのだろう、ギュウギュウと私を抱き締めくる………くっ、苦しいっ…アッ、アバラがっ、おっ折れるっ…
「ハッ、リンゼルちゃん!?白目剥いてるわ!」
「ハッ、つい力が入ってしまった!」
「ゴホッ……だっ、だいじょーぶ、です…」
戻ってきて早々死にかけた……
二人から「大丈夫だった?」「何もされなかった?」「痛いところない?」と散々質問責めされたあと、その日は二人に挟まれて就寝した……
いやはや、二人は結構過保護だなぁ……なんと言うか、複雑なような、嬉しいような……何ともむず痒い気分だなぁ……
「………」
目を瞑る、血が巡る……
多分、あの方が注ぎ込んでくれた血であろう……最初に私を吸血鬼にした時よりも、多くの血が入ったのであろう……ゼディアス様の血が私の体の隅々まで行き渡るのを感じる……
ドクンッ…ドクンッ…
目を覚ました辺りから、焼けるような熱さを感じていた…
渇きとは違う、痛みと熱さだ………
あぁ、やはり私では、ゼディアス様の膨大な力が宿っている血を受け止め切れない、か……
ドクンッ…ドクンッ…
死ぬのかな……今日……私は………
明日、私は………
目を覚ますだろうか?




