渇き《12》
『僕はもう持ち場に戻るよ、まだ外の見回りが済んでない所がある…』
『おい待てっ!まだ話は終わって…』
『終わったよ』
コツコツ……ガチャ…「!……」パタン……
部屋から出てきたガイエル先輩と目が合う私……
「ぁ……」
やっべ、逃げ遅れた!
『私も失礼するわ』
コツコツ……ガチャ…「!…リンゼルちゃん…!」パタン……
続いてヒルダ先輩にも見付かった…
「あ~……え~と、コンニチワ~……あっ違った!コンバンワ~…」
とりあえず挨拶をします!大事よね!挨拶!よし!誰かこの冷や汗止めてくれないかな!?
「誰か居ると思っていたけど……リンゼルちゃんだったのね…(この子、弱すぎて逆に気配読めないのよね…本当にしっかりと集中しないとリンゼルちゃんの気配って分からない…)」
「……聞いていたの?リンゼル?」
「すっ、すみません!聞くつもりはなかったのですが……」
いや扉に耳を当ててた時点で興味津々で聞いて居たな…
「その……いっ、今の話は聞かなかった事にしますので!でっ、ですからどうか!見逃して下さい!!」
「見逃すも何も……リンゼルちゃんが誰かに漏らすような子じゃない事は私もガイエルも分かっているわ…」
「ホッ……あっ、ありがとうございます!ヒルダ先輩っガイエル先輩!」
うわぁ~嬉しい言葉だな~!私に少しでも信頼?を寄せてくれているってことかな?だったら嬉しいな~。
「………」
何故だかガイエル先輩が私を無言で見つめている……え?なんぞや?顔に鼻クソでもついてます?
「?……ガイエル先輩?」
「ガイエル…?」
コツ
「………」
「ガイ、エル…先輩?」
あれ?ガイエル先輩が私の目の前に…
ギュウッ…
「っ!」
すると突然、ガイエル先輩が私を抱き締めた…
「「「………」」」
え……何この状況…?
「………ごめん…」
それは、一体誰に対しての謝罪なのだろうか?この突然のハグについてだろうか?それは誰に向けて言っている言葉なのか、私に言っているような、また違う誰かに言っているような……私には分からなかったが……とりあえず……
「はい…大丈夫です、大丈夫ですよ……ガイエル先輩……許します、許しますから……だから……
泣かないで……」
背中をポンポンと優しく叩きながら、私は許しますと言葉をかけた……
私には何も分からない……だけど、ガイエル先輩がいま、とても…とても深く傷付いていることは、何となく、分かる……
ポロポロ
「ごめん……ごめん……」
誰への懺悔なのか、誰への謝罪なのか、誰への涙なのか……私には、分からない……
分からなくて、いい。
余計なことは考えない……というか考えたって無能たる私、一体何が出来ると言うか、きっと何も出来ない……なら、無駄なのことは考えない、感じない……ただ、その場を受け入れ、時間が経つのを待つしかない……
嗚呼、でも、本当に……私としたことが……無能たる私としたことが……
「(…あ~……喉……乾いたなぁ……)」
こんな時に限って、血の渇きが私を襲う……
全く…こんなシリアスな場面で空気が読めない辺り、流石は私と言った所か、あぁ、しんどい……
多分極度の緊張とストレスで血を欲してしまってるらしい……普段最低限その日1日、体が動ける程度の血の量しか飲んでいない……
だからかな?この飢えたような渇きを感じるのは……
ボロボロッ
「ごめん…ごめんなさいっ…」
嗚呼……ありったけの血を、飲み干したい……
「(あぁ……嫌だな……)」
自分の中の化け物が、牙を立てる……
無能に、この本能、いらない
いらないよ……
「……大丈夫、ですよ…」
大丈夫じゃない……
嗚呼、いま目の前にいるこの男の血を……牙を突き立てて……貪り尽くしたい……
「リンゼル、ちゃん…?」
あぁ……ヒルダ先輩……そんな目で見ないで下さいよ……大丈夫です………吸いません……吸いませんよ……貴女の大事にしている人を、傷付ける、ようなことは………
パタリ…
「リンゼルちゃんっ!?」
「!っ……リンゼル!?」
あぁ……目の前が、真っ黒だ……貧血かなぁ…?
はは、ほんと……
なにやってんだろう……わたし……




