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第十五話 支離滅裂

興奮がおさまらない晶。


すると突然、晶は叫んだ。


「お前、父さんに電話してやるからな!」


あまりに予想外の言葉に、智久は思わず声を漏らす。


「え?」


そして半ば挑発するように返した。


「おお、電話すればいいじゃん。パパのところに」


晶はすぐに黒田春夫へ電話をかけた。


「あ、父さん?仕事中ごめんね」


先程までの怒号とは別人のような声だった。


「今さ、安倍に絡まれて、“表出ろ”って言われて、外にいるんだけど……」


おいおい、今度は呼び捨てか。


智久は思わず声を荒げた。


「お前なぁ、嘘つくんじゃねーよ!」


すると晶は、待っていたかのようにスマホをスピーカーへ切り替えた。


「聞いた?父さん。あんな風に怒鳴るんだよ」


なんて姑息な男だ。


智久は寒気を覚えた。


「もういい。俺が電話代わるわ」


しかし晶は、再び形相を変える。


「ああ?お前に俺のスマホ触られたくねーんだよ!」


「ああ、わかった、わかった。じゃあ自分でかけるから、電話切れや」


智久は自分のスマホから黒田へ連絡を入れた。


「お仕事中すいません。ご無沙汰してます。急に申し訳ありません」


すると横から晶が叫ぶ。


「ああ?てめぇ、何良い子ちゃんぶってんだよ!」


無視して、智久は話を続けた。


黒田は困惑した様子だった。


「一体、何があったの?話が見えないけど」


「いえ、わかりません。晶が急に絡んできたもので……」


「今どこですか?こちら来れますか?」


しかし黒田は、仕事で遠方にいるらしかった。


「わかりました。じゃあ、こちらで何とかします。失礼します」


電話を切る。


晶は一方的に騒ぎ続ける。


何か言い返せば、途中で発狂する。


智久は、どうしたものかと頭を抱えていた。


すると突然、晶が独り言のようにつぶやいた。


「ふん……俺に勝てると思ってんのかよ。笑える……」


突拍子もない発言に、智久は聞き間違いかと思った。


だが次の瞬間――


「拳サポ持ってこいや!素手でもいいぞ!やってやらぁ!」


と叫び始めた。


何だ、急に……。


智久は、どう対応するべきか迷った。


後に宮林から聞かされた話では、この流れは“宮林事件”と全く同じだったらしい。


普段は、「空手家が暴力を振るう」と散々揚げ足を取っていた晶。


だが、“拳サポ”という単語を出した時点で、それが自分の発想であることを、自ら認めたようなものだった。


さらに晶は叫ぶ。


「お前、不破道場だよな!?」「お前んとこの選手連れてこいや!俺んち道場と勝負だ!」


「あ?何言ってんだ」


智久もさすがに呆れた。


「そんな事できるわけねーだろ」「あの子達は不破先生の弟子だ。巻き込むんじゃねーよ」


あまりに無茶苦茶な発言に、智久も次第に冷静さを失っていく。


ふと時計を見る。


――まずい。


咲良達の試合が始まってしまう。


「おい、もう言いたい事はそれだけか?」


すると晶は、また怒りを露わにした。


まるで、智久を不利にできそうな話を、頭の中から必死に探しているようだった。


「そういや、お前、他の道場の父兄に、“空手界にいさせなくする”って言ったらしいな」


智久は、しばらく沈黙した後、呆れたように答えた。


「……お前だけだぞ。まだそんな事言ってんの」「何にも知らねーんだな」


その言葉に、さらに激昂する晶。


智久は面倒臭そうに言った。


「ああ、もうわかった」「それじゃあ、殴れよ」


そう言って頬を向ける。


すると晶は鼻で笑った。


「はいはい、出た出た……」


そして吐き捨てるように言った。


「お前が殴ったら、殴ってやらぁ!」


智久は冷めた表情で晶を見つめた。


――コイツ、一体どうしたら納得するんだ?


色々考えたが、答えは見つからない。


そして、この最悪な話し合いは、最後まで最悪の空気のまま幕を閉じることとなった。


この作品には、作者自身の経験をもとにした描写が含まれています。


ただし、登場人物名・団体名・設定・時系列などは、作品として再構成したフィクションです。

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