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マナ枯渇によるマヌケな気絶と、ハズレ武器の邪悪な使い道

 ――シュパッ!


 白銀の刃が空気を切り裂き、リュウナの耳の数センチ横を通り過ぎた。

 青年は短い悲鳴を上げ、身をかがめながら死の森の茂みを必死に駆け抜ける。


「そこに直れ、このド変態! その右手、切り落としてくれるわ!」

 殺意に満ちた目をギラギラと燃やし、エルフの女騎士が背後から迫ってくる。


「技術的なエラーだって言っただろ! 俺じゃなくてシステムが誤爆したんだよ!」

 息を切らしながらリュウナが叫び返す。


 しかし、彼の右手は反射的に『白いレースの布』をしっかりと握りしめたままであり、それがエルフの怒りにさらに油を注いでいた。


 敏捷(AGI)が40に上がったとはいえ、高位のエルフ騎士の生来のスピードには遠く及ばない。距離はどんどん縮まっていく。首の後ろに冷たい刃の気配を感じた。


(ヤバいヤバいヤバい! このままじゃマジで犬死にだ!)

 リュウナはパニックに陥った。


 武器はない。攻撃魔法もない。

 唯一の解決策は【GIVIN】ガチャの奇跡だけだ。だが、条件は200 MP。対して、今の彼の残量は120 MPしかない。


「クソッ、どうにでもなれ! 首を刎ねられるくらいなら気絶した方がマシだ!」

 リュウナは自分自身に向かって叫んだ。

「システム! 今すぐ【GIVIN】を起動しろ!」


 走り続ける彼の顔の前に、青いスクリーンが唐突にポップアップした。


【システム警告!】

 MPが不足しています(120/200)。

 強制使用は【マナ枯渇デプレッション】を引き起こします。リスク:即時の昏倒。

 続行しますか? [YES] / [NO]


「YESだ! さっさと引けェ!」

 リュウナはヤケクソで叫んだ。


 ――チリン! チリン! チリン!


 脳内に耳障りなルーレットの回転音が響き渡る。

 体内に残っていたわずかなマナが、命そのものを吸い取られるかのように一滴残らず搾り取られた。システム画面が猛烈な勢いで回転する。


 だが、空からギフトボックスが降ってくるよりも先に、リュウナの視界は急激にブラックアウトした。

 世界がぐるぐると回る。足がゼリーのように崩れ落ちた。


「うぐっ……」

 リュウナは小さく呻き、白目を剥いて前のめりに倒れ込んだ。枯れ葉の山に顔から突っ込み、即座に意識を失う。


 リュウナの背中を切り裂こうと剣を振り上げていたエルフの騎士は、急ブレーキをかけた。

 獲物が突然意識を失って倒れたことに驚愕する。


「はぁ……?」

 彼女は剣を下ろし、困惑した目で青年を見下ろした。ブーツの先でリュウナの体を軽くつつく。

「ちょっと。死んだふりはやめなさい。起きなさいよ、このクズ!」


 反応はない。リュウナの顔は死体のように青白く、呼吸も虫の息だった。


 エルフの美しい顔に、徐々にパニックが広がっていく。

「ま、待って……本当に死にかけてるの!? は、走っただけで!? わ、私が殺したわけじゃないわよね!?」


 彼女は、気を失った青年の手にまだ固く握られている自分の白い下着と、リュウナの安らかな寝顔を交互に見比べた。

 そして、下唇を強く噛む。


 下着の件がいかに下劣な事故であろうと、この奇妙な青年が、賞金稼ぎたちの手から自分を救ってくれた恩人であることは事実なのだ。


「クソッ。なんで私がこんな目に……」

 彼女は顔を真っ赤にして文句を言った。

 しゃがみ込み、リュウナの手から自分の下着を素早くひったくると、重い青年の腕を引っ張り、苦労しながら彼を引きずっていった。


 ハーブと薪が燃える心地よい香りが、リュウナの鼻腔をくすぐった。


 青年は顔をしかめ、ひどく重い瞼をゆっくりと開けた。

 最初に目に入ったのは、深緑色のキャンバス地の天井だった。彼は分厚く暖かい毛布の上に寝かされていた。


「やっと目が覚めたの、性犯罪者さん?」


 冷たく、皮肉めいた声が彼を出迎えた。

 リュウナが横を向くと、エルフの騎士が小さな焚き火のそばであぐらをかき、見下すような視線を向けていた。


 豊満な胸の下で腕を組んでいるため、銀のクロップドアーマーが少し持ち上がっている。


 リュウナはズキズキと痛む頭を押さえながら、無理やり体を起こした。

「うぐっ……ここは? 俺はどれくらい気絶してたんだ?」


「私の野営テントよ。あなたは極度のマナ枯渇の症状で、二十時間近く気絶してたわ。私がマナポーションを口移し……ゲホンッ、飲ませてあげなかったら、そのまま眠るように死んでたでしょうね」

 エルフは素っ気なく答えた。


 彼女は短くため息をつき、視線をそらした。頬に薄っすらと赤みがさす。

「私の名前はエリシア・ナーヴェル。まだ……感謝の言葉を言ってなかったわね。ミノタウロスを倒して、あの賞金稼ぎたちを凍らせてくれて……その、これで貸し借りはなしよ」


 リュウナはエリシアを少しの間見つめ……そして、先ほどの恥ずかしい事件よりもはるかに重要なことを思い出した。

 ガチャだ!


(システム! 【GIVIN】の履歴ログを開け!)と心の中で叫ぶ。


 目の前に透明なスクリーンが現れた。

 リュウナは心臓をバクバクさせながら、気絶する直前に引いたガチャの結果を読んだ。

 またSSRが出たのか? それとも新しいチートクラスか?


【GIVIN 履歴】

 ガチャ完了。

 結果:絶対的悪運(外れ / ピックアップすり抜け 50%)。

[獲得アイテム]:炎エンチャントの鉄剣(ランクB)。

 説明:低レベルの火属性魔法が付与された量産型の武器。

 システム備考:実に見事なゴミ引きです。マナを貯めて、またの機会に挑戦してくださいね(笑)。


 リュウナの目がピクピクと痙攣した。

 見事に外れた(爆死した)。


 スティールという能力に全く合わない、中流以下の武器。空が割れたり、隕石ボックスが降ってこなかったのも当然だ。ガチャは大ハズレだったのだ。


 システムは即座に、その剣をリュウナの膝の上に実体化させた。

 焼却炉から取り出したばかりのように、刃から微かな熱を放つ、ごく普通の鉄の剣だ。


「えっ? どこからその炎の剣を出したの?」エリシアが驚いて尋ねる。


 だが、ガチャで爆死して落ち込むどころか、リュウナの口角はゆっくりと吊り上がっていった。

 ランクBの剣から手のひらに伝わる熱が、彼の脳内にある『天才的なアイデア』を閃かせたのだ。


 けだるげだった瞳が鋭く光る。悪役アンタゴニスト特有の斜に構えた笑みが再び顔に張り付いた。

 彼は炎の剣を見つめながら、森の中でアホ面を開けたまま凍りついていた四人の賞金稼ぎの姿を脳裏に鮮明に思い描いた。


(ほう、炎属性、ねえ?)

 リュウナは内心でクックッと笑った。


 システムにとってはゴミ(ハズレ)かもしれないが、復讐に飢えた彼の中二病の魂にとっては、最高の『拷問器具おもちゃ』だった。


「エリシア」

 リュウナは、再び闇の王子のオーラを纏いながら、わざと低く作ったハスキーな声で呼んだ。

「さっきのクズども四人の氷像は、まだあそこにあるか?」


 エリシアは眉をひそめた。

「え、ええ。当然よ。あなたの氷魔法は強力すぎたから、そう簡単には溶けないわ。それがどうしたの?」


 リュウナの邪悪な笑みが、白い歯を見せるほどに深まった。

 その目はイタズラを思いついた悪魔のようにギラギラと輝いている。


「素晴らしい。奴らに会いに行こう。少しばかり……『解凍』の実験を試してみたいんでね」

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!


 ついにガチャの「ハズレ(50%)」を引いてしまったリュウナですが、ただでは転ばないのが我らが闇の王子(中二病)ですね(笑)。

「キスの真相が気になる!」「拷問……もとい、解凍実験が楽しみ!」

 と思っていただけましたら、ぜひ下のボタンから【ブックマーク】


 ……ところで皆さま、中盤のエリシアのセリフにお気づきになりましたか?

「口移し……ゲホンッ」って……えっ?

 それってつまり、リュウナが気絶している間に、彼のファーストキスはすでにエルフ騎士さんに奪われてしまったということでしょうか……!?


 真相はエリシアのみぞ知る、ですね(笑)。

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