白銀の剣舞と、予期せぬ絶対零度
――ガキンッ!
ニヴルヘイムの暗い空気に火花が散る。
白銀の剣が、強烈な勢いで巨大な斧と激しくぶつかり合った。
人間離れした身のこなしで、一つの影が木の枝へと飛び退いた。
月明かりが木漏れ日となって差し込み、その姿をはっきりと浮かび上がらせる。
エルフの女騎士だ。
絹のような銀髪が風に舞う。長く尖った耳が、周囲のあらゆる音を拾おうと微かに動く。
彼女は、引き締まった平らな腹部を大胆に露出したクロップド丈の銀のプレートアーマーに、戦闘用のスカート、そして軽量な銀のブーツを身につけていた。
控えめに言ってもDからEカップはあるであろう、バランスを崩しかねないほど豊満な胸部を持ちながらも、そのエルフの動きは致命的で予測不可能だった。
「逃がすな! 生け捕りにすれば莫大な賞金が出るぞ!」
屈強な体格の賞金稼ぎの一人が叫んだ。
彼女を追うために雇われた傭兵は全部で六人。
まさか標的である誇り高きエルフの騎士が、自ら死の森の奥深くまで逃げ込むとは彼らも予想していなかった。
「ここで死ぬのはお前たちだ、薄汚い犬どもが!」
エルフの女騎士は目を鋭く細めた。
彼女は白銀の稲妻のように枝から飛び降りた。
一人が魔法の矢を放つが、エルフは空中でわずかに体をひねり、顔の数ミリ横を通り抜けさせる。
そして地面に足がついた瞬間、彼女は弾丸のように前へと滑り出た。
――シュパッ!
水平に振り抜かれた白銀の刃が、一人目の傭兵の首を易々と掻き切る。
血が吹き出すが、エルフはすでにそこにはいなかった。
彼女は倒れゆく傭兵の背中を足場にして跳躍し、槍を持つ二人目の傭兵へと回転しながら襲いかかった。
――ズブッ!
精密な突きが二人目の胸当ての隙間を抜け、心臓を直接貫いた。
ほんの数秒で二人が死体と化す。
「クソッ! 舐めるな! 今すぐ罠を起動しろ!」
パニックに陥りかけたリーダーが命令を下す。
エルフの女騎士が剣を引き抜き、三人目へと突進しようとしたその時。
腐った落ち葉の下に隠されていた、魔法のルーンを踏み抜いてしまった。
――バサッ!
粘着性のある魔法の糸で作られた巨大な網が地面から飛び出し、エルフの体を一瞬にして包み込んだ。
「くっ!」
彼女はもがいたが、動けば動くほど魔法の糸はきつく締まり、肌や鎧に張り付いて手足の自由を完全に奪っていく。
白銀の剣が手から滑り落ちた。
強靭な騎士は、ついに無防備な姿で地面へと崩れ落ちた。
残った四人の傭兵たちが下劣に笑う。
彼らはゆっくりと歩み寄り、殺意に満ちた目で睨みつけてくるエルフを包囲した。
「ようやく捕まえたぜ、高慢ちきな騎士サマよ」
リーダーがエルフのそばにしゃがみ込み、その汚れた手で彼女の滑らかな頬に触れた。
「依頼主は生け捕りを要求しているが……俺たちが少しばかり『楽しむ』ことまでは禁じちゃいねぇよな?」
他の傭兵たちの目にも、網にきつく縛り上げられたエルフの美しい肢体を見て、抑えきれない欲望の光が宿った。
エルフの少女は強く歯を食いしばった。顔が怒り、屈辱、そして絶望で染まる。
誇り高き騎士である自分が、このような薄汚い悪党たちの手で穢されるなど、死よりも残酷な運命だった。
「私に触れるな、下衆が!!」
彼女は残された力を振り絞って網を引きちぎろうとしたが、無駄だった。
リーダーの男は下品な笑い声を上げ、部下たちに命令を下そうと口を開いた。
しかし。
彼らのうちの誰一人が、ズボンのチャックを下ろす暇すら与えられなかった。
突如として、周囲の気温が常軌を逸したレベルで急降下したのだ。
先ほどまで湿気を帯びていた風が、骨まで凍りつくような極寒の渦へと変わる。
四人の傭兵たちは、その異常な冷波がどこからやってきたのか、後ろを振り返る時間さえなかった。
――ズゴォォォォォッ!!
青白い氷の嵐の波が北の方角から押し寄せ、四人の傭兵の背中を容赦なく打ち据えた。
地面に倒れていたエルフは、襲い来る痛みに備えて反射的に固く目を閉じた。
しかし、その痛みはいつまで経っても訪れなかった。
エルフが恐る恐る目を開けると、そこには全く理解不能な光景が広がっていた。
四人の傭兵たちは……透明な氷の彫刻へと変わっていたのだ。
しかも、極めて滑稽な姿勢で。
先ほどまで彼女のそばにしゃがみ込んでいたリーダーは、手を伸ばし、大口を開けたまま凍りついている。まるで叫ぼうとして、永遠に声を出せなくなったかのように。
激しい戦闘の音が響いていた森は、今や絶対的な静けさの中で凍りついていた。
エルフの女騎士は何度か瞬きをした。
怒りは消え去り、代わりに途方もない混乱と驚愕が押し寄せてくる。
彼女は北の方角――この死を運ぶ氷の波の中心地――を見つめた。
彼女を縛っていた魔法の網でさえ、極端な低温によって徐々に硬化し、脆くなっている。
その絶対的な静寂の中。
分厚い氷の霧の向こうから……『足音』が聞こえてきた。
――ザクッ……ザクッ……ザクッ……
凍りついた落ち葉を踏みしめる靴音が、ゆっくりと響いてくる。
誰かが――あるいは『何か』が――吹雪の爆発の中心地から、悠然と歩いて近づいてくる。
エルフの心臓が早鐘のように鳴った。
彼女は息を潜め、分厚い霧から目を離すことができなかった。
これほどまでに絶大な力を持つ、恐るべき存在の正体を待ち受けながら。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
霧の中から現れる足音の正体……次回、いよいよ二人が対面します。
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